プレーヤープレイヤー

もずく

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心配

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「あの能無し、耳が聴こえなくなって二人組のパーティーを解散したらしいぜ。ウケる」
「へー、ツイてない奴ってとことんツイてないんすね」
「テメーの仲間が死んだ原因を人のせいにしようとした奴っすか。はっ、バチが当たったんすね」

 朝、公園広場に集合したら、ザッツバーグ達がそんな会話をしているのが聞こえてきた。
 彼らが言う能無しとは、ソルトのことだってことは、もう分かってる。
 流石にもう我慢の限界だ。

「ザッツバーグ、私はもう、このパーティーから抜けるわ。ギルドに申請しておくから後で承認しておいて」

 元々、このパーティーに入ったのは、ソルトがこいつらに手を出さないようにする為だった。
 あの時のソルトは、ペッパーが死ぬ原因になったこいつらを殺してしまいかねなかった。
 マヨが探索者を辞めると言いだしてしまって、私だけではソルトを抑えられないと思った。だから、パーティーを一旦解散してソルトを落ち着かせたいと思った。
 その間に、私はザッツバーグのパーティーにスパイとして入って、こいつらの非道をギルドに報告する予定だったのだけど、私が入ってからは「仲間殺し」をする気配がない。
 実は、これはギルドからの提案だった。
 このザッツバーグのパーティーは、今までにメンバーが四人も死んでしまっている。
 死んだのは全員、後から入ってきた者達だ。ギルドも流石に不審には思っていたようだった。
 だから、私も命を狙われる覚悟で、それを生き延びてギルドに報告する為にやったことだったのだけど。

「はあ? 何言ってんだよミント。お前がいなかったら水持ってかなきゃなんねーだろーが。それに、そんな勝手に出入りできると思うなよ?」
「水? 前までと同じように自分達で持って行きなさいよ。言っとくけど、パーティーの出入りは自由にできるはずよ。あんたにできるのはパーティーの解散、メンバー加入の承認、メンバーの強制排除と、メンバー脱退の承認だけでしょ」

 ザッツバーグの声も大きいけど、私は更に大きい声で言い返してやった。
 朝の公園広場には待ち合わせをしてる探索者パーティーが多い。彼らに聞こえる声で宣言してやったわけだ。

「なんなんだよいったい。この三ヶ月ちょっと、俺らはうまいことやって来ただろ? なんで探索前にいきなりこんな話になってんだよ」
「あんたらがソルトを馬鹿にするからよ。彼は私の元仲間よ? 仲間をバカにされて頭に来るのはおかしなことかしら」
「はあ?」
「何よ」
「おい、俺ら、ソルトなんて奴の話してたか?」
「いや、してないっすね」
「してないっす」

 呆れた。
 バカにしたようにニヤニヤヘラヘラ笑いやがって。

「してたじゃない!」
「はあ? あーーーー、あれか! 能無しの話しか!?」
「そうよ」
「なーるほどなるほどだせ。やあっと意味が分かったわ。能無しってのは、お前の中でイコールソルトってことなんだな? 俺らは他の奴の話をしてただけなんだけどな」
「なるほどー」
「なるほどー、ミントさん、そりゃ悪かったっす。能無しってのは別に、ミントさんが切り捨てて解散した元ミントさんのお仲間のソルト様のことじゃないんですよお」
「なっ……じゃあ、どこの誰の話をしてたのよっ」

 私は相変わらずお馬鹿だ。
 確かに、ソルトのことだってはっきりとは言ってなかったけど……まあ、もうどうでもいいわ。

「とにかくっ、私はこんな人を馬鹿にしたようなパーティーからは抜けるわ。理由が何であれ、脱退するっていう本人からの申請はギルドは受理してくれるんだからっ」

 私はそう言って広場から出ていこうとした。
 ここで斬り掛かってくるようならそれでもいい。こいつらが「力ずくで」言うことを聞かせようとした証拠になるから。
 でも、ずる賢いこいつらから、そんな行動を引き出す事もできなかった。

「ミントっ、お前の身勝手な脱退についてはギルドに報告するし、探索者仲間にも触れ回っておくからな! 《水魔法》が使えるからってどっかのパーティーが拾ってくれるなんて思わねーことだな!」
「あー、元お仲間のソルト様は耳も駄目になっちまって、探索者を続けられるか分かんない状態みたいっちゅよー」
「おいおい、探索者を続けられたとしても、裏切り者のミントさんとまたパーティーを組むわけがないだろー?」
「あっ、そりゃそっかー」
「とにかくだ。もうお前と一緒に組もうなんて奴はいねえってこった。まあ、お前が帰ってきたいって土下座するなら、優しい俺らはまた迎え入れてやるかもな。ぎゃーはっはっはっ」
「「いーひっひっひっ」」

 私は本当にお馬鹿だ。
 悔しいっ。
 結局、私はなんの証拠も見つけられず、あいつらの水係をやっただけだった。
 手に入ったのは、少しのお金と、レベルが二個上がっただけ。
 でも、これでもう、嫌な奴らに話を合わせて探索する必要もなくなったんだ。
 それに、ソルトなら話せば分かってくれるはず。
 本当なら、あいつらの仲間殺しの証拠をギルドに提出して、あいつらがギルドを利用できないようにしてから、パーティー再結成の話をソルトにするつもりだったんだけど、こうなったら仕方ない。
 スパイの話を持ち掛けてきたギルドの職員さんからも説明してもらえば、ソルトだって許してくれるはず。

 そう思ってたんだけど。
 この後、私はやっぱり馬鹿なんだと思い知らされるのだった。
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