プレーヤープレイヤー

もずく

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やっぱり

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 僕は、自分のどのスキルを公開するかで迷っていた。
 今使えるのは、《剣使い》《剣士》《盾使い》《弓使い》《斧使い》《水魔法》《土魔法》《索敵》《頑丈》《筋力強化》だ。
 これらの内、どれかをどれか一つを公開して、どこかのパーティーに入れてもらいたいのだけど……。

 残念だけど、職業系スキルは公開しない方がよさそうだ。僕自身が職業スキルを身につけたわけじゃないから、そのスキルで使えるようになる技や付加能力を覚えられない可能性が高いからだ。
 僕のスキルはあくまでも《再生機プレーヤー》だ。過去の出来事を脳内で再生する際に、視点を他の人と同化させることで、その人のその時の考えや感覚が少し分かったり、その人の発動していたスキルを覚える事ができる、と言うものだ。
 つまり、その再生した中でやってない事は覚えられない。
 例えば、キーンとの探索を再生して、その時にキーンが使った《剣士》ならではの動きや、《連撃》やソードブレイク、フェイントなどの技、それに微妙に反応速度が上がる感覚などは、何度も自分の体験として「観る」内に覚える事ができる。
 でも、《剣士》が成長することで、今後覚えるであろう《斬撃波》などは、たぶん僕がどれだけ《剣士》のスキルを使ったところで覚えられないはずだ。
 あ、ちなみに、キーンは《斬撃波》は覚えられないかもしれない。《剣士》とは言っても細剣使いの上位スキルみたいだから、斬るんじゃなくて、突く攻撃に特化してるから。
 まあ、こんな予想をしてるので、職業系スキルを手に入れた、とは言わない方がいいかな、と思ってるわけだ。

 そうなると、《水魔法》も《土魔法》も同じ事が言えるんだけど……僕は、《再生機》で覚えた以外の魔法の使い方を覚えられないだろう。
《水魔法》で使えるのは、今の所、水を創り出す事と、《水弾ウォーターバレット》だけだ。
 僕としてはこれでも十分なんだけど、一緒にやっていく側からしたら物足りないかも知れない。
 とは言え、ミントだって六レベルで《水魔法》を手に入れて以来、《水弾》以外の魔法は覚えてないんだから、魔法はなかなか増えないものなのかも知れない。だとすると公開するのは《水魔法》でもいいのかな。
 それに、僕はスキルはないけど、剣二本を持って戦うことができるから、単なる水筒役にはならないつもりだし。

 うん。やっぱり《水魔法》でいこう。
 二刀流はスキルじゃないから、どうせ評価外になるだろうけど、その場合でも《水魔法》を欲しがるパーティーはいるはずだ。
 でも、新人パーティーは避けたい。
 かと言って、ある程度の大手は《水魔法》持ちはそれなりにいるからな。
 小さいパーティーで、初期の仲間が《水魔法》を覚えてくれて、更に、ミントが大手パーティーに移らなかったのはかなり幸運な事だったんだよな、と今更ながらに思う。

 ミントか。
 僕が《水魔法》を使えるようになった今、それを売りにして行くなら、僕はミントとは組めない。
 彼女がザッツバーグ達の被害者だったことは分かったけど、それは、これから一緒にやり直す理由には繋がらないだろう。
《再生機》で、彼女が何をどう思っていたか、まで何となく分かってるだけに、ちょっと心苦しいところはあるんだけど……まぁ、それはそれ、と言うやつだ。

 僕はギルドに向かい、まずはパーティー募集の掲示板を確認する事にした。
 やはり、《水魔法》の使い手を求めるパーティーは多い、のだけど、どれもこれも若手のパーティーばかりだ。

 その中には、キーンとナディの連名の仮パーティーメンバー募集の紙もあった。僕が未熟で感情的になってしまった為、今後、彼らとパーティーを組むことはないだろうけど、二人にはほんの少しだけ感謝している。
 何故なら、キーンからは《剣士》を、ナディからは《土魔法》の《土壁》と《土槍》を(勝手にだけど)貰い受けたから。
 彼らには「能無しのくせに文句ばかりはいっちょ前の探索者」もいるからメンバー探しには気をつけろ、と言う勉強をさせてしまったが、それがスキルの代金になればいいなあと思う。

 ……我ながら屑だな。

 ……切り替えよう。
 掲示板には目ぼしいパーティーはいなかったので、とりあえず、一人で迷宮に入って、一階層の奥地で水売り屋さんでもやってみようかと思う。
 新人以外でも、北西エリアとかだと水切れを起こすパーティーもたまにいるらしいし。
 それに、《再生機》で試してみたいこともある。
 僕は、ギルドを出て、出発の準備を始めることにした。
 ギルドを出る際に、何人かの探索者達が、パーティー募集の掲示板を見て、何もせずに立ち去っていく僕のことを笑っているのが聞こえてきた。
 僕が能無しスキルなしであるという話は、この三ヶ月でかなり有名になってしまったようだ。
 スキルを手に入れた今となっては、不思議と悔しくはない。
 でも、僕を入れてくれるパーティーを探すのは難しそうだなと、ちょっと疲労感を覚えたのだった。
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