プレーヤープレイヤー

もずく

文字の大きさ
18 / 118

レイドモンスター

しおりを挟む
 僕にしては珍しく、朝早くから迷宮の門をくぐった。
 今日の僕の目的が、北西エリアでの魔物狩りと、水切れを起こしたパーティーがいたら、《水魔法》を売り込むことだからだ。

 西部地区から二時間ほど北に行った所に、北西エリアと呼ばれる場所がある。そこは西部地区程ではないものの、巨大な空洞がある。
 その北西エリアには、極稀たまにではあるものの、一階層では最強の魔物である迷宮巨大赤虎タイガーボルや、迷宮火吹きワニツインフレイムが現れる事がある。
 この特殊な名前が付けられた二体の魔物は、八人以下の小さなパーティー単体で勝つのは難しいことが分かっている為、現れたポップした場合には、その場にいる探索者全員で戦う事が認められている。
 その為、この二体の魔物はレイドモンスターと呼ばれている。ちなみに、レイドと言うのは、複数のパーティーが協力して戦うという意味だ。
 なので、僕のように一人ソロで来て待機してる人もいるし、西部地区の石人形ストーンゴーレム狩り場が混みすぎている時や、休憩がてらにやってくるパーティーもいる。
 レイドモンスターは、現れる率が低いので、通常は安全地帯として利用されてもいるわけだ。
 それに、もしもタイミングよく湧いてくれれば、他のパーティーと合同で戦う事ができて、勝てば戦功に応じて素材の分配もある。
 もちろん、いい事ばかりじゃない。大怪我をする可能性もあるし、過去には多数の死者が出ているから、初心者が来るような所ではない。

 僕は北西エリアに到着すると、壁際の空いてる所に座った。
 この空洞はかなり広いので、休む所を探すのは簡単だった。
 僕は、ここに来るまでに、大体八時間くらいかかってしまった。
 ここに来るまでにかかる時間は五時間くらいだと計算していた。西部地区まで三時間。そこから北西エリアまで二時間。
 でも、それはパーティーで進む場合の時間だったわけだ。

 途中で出会う魔物との戦いにかかる時間を考えたら、一人だとこのくらいはかかると予想できたはずなのに、僕は結構自意識過剰だったようだ。
《再生機》を手に入れた事で、自分がかなり強くなったと勘違いしていたらしい。
 自分の力を過大評価しすぎれば、その先に待っているのは死だ。
 僕は疲れた体を休めながら、自分がまだ一八レベルでしかない事を再認識していた。
 いくつかのスキルの真似事をできるようにはなったけど、それらのスキルにしたって、まだまだ初級レベルの技ばかりだ。
 より上級のスキルを手に入れて、それらを使いこなせるようにならないと。

 その為にも、ここでトラかワニが湧くのを待たないと。
 最初は水売りをしながら、どこかの中級クラスのパーティーに入れないかと考えてたんだけど、来る途中の検証でその考えが変わっていた。
 どうやら、僕の《再生機》は、「一緒に戦った人のスキルしか再生できない」らしい事が分かったんだ。
 探索者が西部地区に向かう道のりで、何組かのパーティーが魔物と戦っている場面に出会ったんだけど、その時の戦闘シーンを《再生機》で観ても、彼らに視点を合わせる事同化する事ができなきなくて、その結果、彼らのスキルを手に入れることもできなかったんだよね。
 そこで僕は、スキルを手に入れる為には、その対象と一緒に戦う、つまり、共闘しなければ駄目なんじゃないか、という風に考えてみた。
 ただ、通常、迷宮内では、他のパーティーの戦闘に勝手に手を出すのはご法度だ。それが相手を助ける為だったとしても、先に戦い始めた者達からの要請や許可なしに戦闘に手を出してはいけない。
 特に、僕みたいに「能無し」として知られてるようなヤツが手を出したら、それが本当に助ける為にやった事だとしても、「経験値を奪ったどろぼう」として叩かれる事だろう。たぶん、口撃だけでなく、物理的に。
 そこで考えたのがレイドモンスターだ。
 ここなら、戦闘に参加しても何か言われる事はないし、それ目的で一人で来ている探索者も僕だけじゃないからね。悪目立ちする事もないはずだ。
 それに、レイドなら大勢の探索者と「共闘」する事になるわけで、その中には中級以上の探索者が必ずいるはずだ。

 という事で、トラかワニが湧くまで、ここを拠点にして、近くの空洞や通路で魔物を狩りながら待つことにしよう。
 持ってきた携帯食は、節約すれば五日は保たせられるはずだ。
 今回が駄目なら、次はもっと食料を持ってきてキャンプだな。

 そんな風に計画を立てながら、とりあえずは体力を回復させる事にした。
 のだが。

「あれ? ソルトじゃないか……俺には西側に行くなって言っといて、自分は来てるんだな」

 キーンの声が、僕を精神を休ませてくれないようだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...