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巨大魔人像が消え去った後、魔法陣から噴き上がった討伐報酬は、ミニ魔人像を一体でも倒せた者で分ける事になった。もちろん、巨大魔人像の宝石を割った者への報酬は多く割り振られたんだけど。
実際に配当対象になったのは三十七人だけだった。中には何も貰えなかったパーティーもいるようだ。
ちなみに、ラングル達は一体も倒せていないようだ。でも僕が報酬を貰えてるから、パーティーとしては貰えてる事になるのかな。
いや、僕が報酬を分けると言ったとしても受け取らないか。だって、今回の戦闘はまったくの別行動だったから。
この後、三階層に行く予定の面子の報酬は、サブマスの持っている魔法の収納カバンで保管される事になった。金貨や銀貨はかなり重くなるから、これは非常に助かる話だった。
地上に戻る者、ここで休んでいく者達の中にも、サブマスに預けておいて、後でギルドバンクに入れておいてくれ、と言う者が何人もいた。サブマスが街に帰れないかも知れない、と思う者は誰一人としていないようだった。
そして、僕は今、壁際で一人で座っている。サブマスと上位探索者パーティーの話し合いが終わるのを待っているんだ。
僕の手には、今回の討伐報酬として貰った「魔人の心臓」がある。やることもないので、これをどうしたものかな、と考えていた。
当たり前かも知れないけど、《武具鑑定》や《鉱石鑑定》ではこれの名前すら見ることができない。
名前については、カインが「これは心臓を潰したキミの物だ」と言って投げて寄越した時に、「ああ~、わたしの魔人の心臓ちゃんが~」と言ってる人がいたので、そのまま「魔人の心臓」と呼んでいる。確かに、前に図鑑で見た事がある人間の心臓のようなグロテスクな形をしてるんだよね。
どんな効果があるのかは、ギルドでお金払って教えてもらうしかないかなぁ。
「おいキミ。こっちへ来たまえ」
僕はカインに呼ばれて、サブマスと上位探索者パーティーがいる所に移動した。
「残念な事に今回は二名の死亡者がでた。が、重戦者隊の活躍もあって比較的被害が少なかったと言えるだろう」
空洞内にいた全員に対し、これからレイドモンスターを解放する話は事前に行われていた。だから、大怪我をした人や亡くなった人を含めて、全員、自分の意志で戦闘に参加したことになるわけだ。
今回は「空洞内にいる敵対者と同じ数の魔物が現れる」というレイドモンスター・巨大魔人像が出てきた為、大量の魔物が出てきてしまった。その為、遠距離攻撃だけして「おこぼれ」を貰おうと思っていた者達に被害が多く出ているのだった。
また、戦闘から逃げ出した者に対して罰則がないのと同じように、戦闘で怪我を負ったり死亡した場合にも、ギルドからの補償などは特に行われ無い。
「まったく、人が多い時にあんな奴が出るなんてね。でもまあ、そのおかげであんたの力量も見る事ができたから、結果的に良かったのかもね」
「我々は巨大魔人像との戦いしか見れてないがな。それでもあの突撃力は「あり」と言えるだろう」
「ま、そうなるだろうね。ありかなしで言ったら「あり」と言わざるを得ない」
「なら決まりだな。ソルト、体力が回復したら彼らと共に三階層の攻略に行ってもらいたい」
どうやら、僕は上位探索者パーティーの各リーダー達と、サブマスから認められたらしい。
つい数ヶ月前までは能無しだった僕が、まさか最前線の戦闘への参加要請を受けるとは。
迷宮の深層を目指している僕にとって、これは目標に近づく為にプラスになる話だ。
とは言っても。
「これはギルドからの依頼ですか?」
僕も探索者の端くれだ。慈善事業で命を懸けてる訳じゃない。確認すべき事は確認しておかないとね。
「はっ、頼もしいものだな」
ザイアンからは、褒めてるのか馬鹿にしてるのか判断しかねる一言があったけど、僕の言葉に対して攻撃はなかった。
とりあえず、この三階層の件に関しては、迷宮の探索が進まない原因になっていることと、三階層からの撤退による帰路の安全を確保する為にレイドモンスターが沸かないようにしていること。その為に二階層の魔物の湧き率が悪くなってしまい、素材回収的にも、探索者のレベルアップ的にも良くない状況になってしまっていること、と言う理由から、「今回の討伐はギルドからの依頼である」との事を教えてもらった。
まあ、ギルドに顔を出す探索者なら噂程度で知っている話なんだけど、サブマスから改めて説明を受けると、ゾクゾクするものがあった。
だって、そんな重要な戦いに参戦できるなんてね。
その後、討伐完了時のギルドからの報酬についてと、討伐対象に関して分かっている情報を提供してもらい、僕らは改めてしっかりと休憩することになった。
実際に配当対象になったのは三十七人だけだった。中には何も貰えなかったパーティーもいるようだ。
ちなみに、ラングル達は一体も倒せていないようだ。でも僕が報酬を貰えてるから、パーティーとしては貰えてる事になるのかな。
いや、僕が報酬を分けると言ったとしても受け取らないか。だって、今回の戦闘はまったくの別行動だったから。
この後、三階層に行く予定の面子の報酬は、サブマスの持っている魔法の収納カバンで保管される事になった。金貨や銀貨はかなり重くなるから、これは非常に助かる話だった。
地上に戻る者、ここで休んでいく者達の中にも、サブマスに預けておいて、後でギルドバンクに入れておいてくれ、と言う者が何人もいた。サブマスが街に帰れないかも知れない、と思う者は誰一人としていないようだった。
そして、僕は今、壁際で一人で座っている。サブマスと上位探索者パーティーの話し合いが終わるのを待っているんだ。
僕の手には、今回の討伐報酬として貰った「魔人の心臓」がある。やることもないので、これをどうしたものかな、と考えていた。
当たり前かも知れないけど、《武具鑑定》や《鉱石鑑定》ではこれの名前すら見ることができない。
名前については、カインが「これは心臓を潰したキミの物だ」と言って投げて寄越した時に、「ああ~、わたしの魔人の心臓ちゃんが~」と言ってる人がいたので、そのまま「魔人の心臓」と呼んでいる。確かに、前に図鑑で見た事がある人間の心臓のようなグロテスクな形をしてるんだよね。
どんな効果があるのかは、ギルドでお金払って教えてもらうしかないかなぁ。
「おいキミ。こっちへ来たまえ」
僕はカインに呼ばれて、サブマスと上位探索者パーティーがいる所に移動した。
「残念な事に今回は二名の死亡者がでた。が、重戦者隊の活躍もあって比較的被害が少なかったと言えるだろう」
空洞内にいた全員に対し、これからレイドモンスターを解放する話は事前に行われていた。だから、大怪我をした人や亡くなった人を含めて、全員、自分の意志で戦闘に参加したことになるわけだ。
今回は「空洞内にいる敵対者と同じ数の魔物が現れる」というレイドモンスター・巨大魔人像が出てきた為、大量の魔物が出てきてしまった。その為、遠距離攻撃だけして「おこぼれ」を貰おうと思っていた者達に被害が多く出ているのだった。
また、戦闘から逃げ出した者に対して罰則がないのと同じように、戦闘で怪我を負ったり死亡した場合にも、ギルドからの補償などは特に行われ無い。
「まったく、人が多い時にあんな奴が出るなんてね。でもまあ、そのおかげであんたの力量も見る事ができたから、結果的に良かったのかもね」
「我々は巨大魔人像との戦いしか見れてないがな。それでもあの突撃力は「あり」と言えるだろう」
「ま、そうなるだろうね。ありかなしで言ったら「あり」と言わざるを得ない」
「なら決まりだな。ソルト、体力が回復したら彼らと共に三階層の攻略に行ってもらいたい」
どうやら、僕は上位探索者パーティーの各リーダー達と、サブマスから認められたらしい。
つい数ヶ月前までは能無しだった僕が、まさか最前線の戦闘への参加要請を受けるとは。
迷宮の深層を目指している僕にとって、これは目標に近づく為にプラスになる話だ。
とは言っても。
「これはギルドからの依頼ですか?」
僕も探索者の端くれだ。慈善事業で命を懸けてる訳じゃない。確認すべき事は確認しておかないとね。
「はっ、頼もしいものだな」
ザイアンからは、褒めてるのか馬鹿にしてるのか判断しかねる一言があったけど、僕の言葉に対して攻撃はなかった。
とりあえず、この三階層の件に関しては、迷宮の探索が進まない原因になっていることと、三階層からの撤退による帰路の安全を確保する為にレイドモンスターが沸かないようにしていること。その為に二階層の魔物の湧き率が悪くなってしまい、素材回収的にも、探索者のレベルアップ的にも良くない状況になってしまっていること、と言う理由から、「今回の討伐はギルドからの依頼である」との事を教えてもらった。
まあ、ギルドに顔を出す探索者なら噂程度で知っている話なんだけど、サブマスから改めて説明を受けると、ゾクゾクするものがあった。
だって、そんな重要な戦いに参戦できるなんてね。
その後、討伐完了時のギルドからの報酬についてと、討伐対象に関して分かっている情報を提供してもらい、僕らは改めてしっかりと休憩することになった。
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