プレーヤープレイヤー

もずく

文字の大きさ
57 / 118

合否

しおりを挟む
 巨大魔人像デモンスタチューが消え去った後、魔法陣から噴き上がった討伐報酬は、ミニ魔人像を一体でも倒せた者で分ける事になった。もちろん、巨大魔人像の宝石を割った者への報酬は多く割り振られたんだけど。

 実際に配当対象になったのは三十七人だけだった。中には何も貰えなかったパーティーもいるようだ。
 ちなみに、ラングル達は一体も倒せていないようだ。でも僕が報酬を貰えてるから、パーティーとしては貰えてる事になるのかな。
 いや、僕が報酬を分けると言ったとしても受け取らないか。だって、今回の戦闘はまったくの別行動だったから。

 この後、三階層に行く予定の面子の報酬は、サブマスの持っている魔法の収納カバンで保管される事になった。金貨や銀貨はかなり重くなるから、これは非常に助かる話だった。
 地上に戻る者、ここで休んでいく者達の中にも、サブマスに預けておいて、後でギルドバンクに入れておいてくれ、と言う者が何人もいた。サブマスがギルドに帰れないかも知れない、と思う者は誰一人としていないようだった。

 そして、僕は今、壁際で一人で座っている。サブマスと上位探索者パーティーの話し合いが終わるのを待っているんだ。
 僕の手には、今回の討伐報酬として貰った「魔人の心臓」がある。やることもないので、これをどうしたものかな、と考えていた。
 当たり前かも知れないけど、《武具鑑定》や《鉱石鑑定》ではこれの名前すら見ることができない。
 名前については、カインが「これは心臓を潰したキミの物だ」と言って投げて寄越した時に、「ああ~、わたしの魔人の心臓ちゃんが~」と言ってる人がいたので、そのまま「魔人の心臓」と呼んでいる。確かに、前に図鑑で見た事がある人間の心臓のようなグロテスクな形をしてるんだよね。
 どんな効果があるのかは、ギルドでお金払って教えてもらうしかないかなぁ。

「おいキミ。こっちへ来たまえ」

 僕はカインに呼ばれて、サブマスと上位探索者パーティーがいる所に移動した。

「残念な事に今回は二名の死亡者がでた。が、重戦者隊の活躍もあって比較的被害が少なかったと言えるだろう」

 空洞内にいた全員に対し、これからレイドモンスターを解放する話は事前に行われていた。だから、大怪我をした人や亡くなった人を含めて、全員、自分の意志で戦闘に参加したことになるわけだ。
 今回は「空洞内にいる敵対者と同じ数の魔物が現れる」というレイドモンスター・巨大魔人像デモンスタチューが出てきた為、大量の魔物が出てきてしまった。その為、遠距離攻撃だけして「おこぼれ」を貰おうと思っていた者達に被害が多く出ているのだった。
 また、戦闘から逃げ出した者に対して罰則がないのと同じように、戦闘で怪我を負ったり死亡した場合にも、ギルドからの補償などは特に行われ無い。

「まったく、人が多い時にあんな奴が出るなんてね。でもまあ、そのおかげであんたの力量も見る事ができたから、結果的に良かったのかもね」
「我々は巨大魔人像との戦いしか見れてないがな。それでもあの突撃力は「あり」と言えるだろう」
「ま、そうなるだろうね。ありかなしで言ったら「あり」と言わざるを得ない」
「なら決まりだな。ソルト、体力が回復したら彼らと共に三階層の攻略に行ってもらいたい」

 どうやら、僕は上位探索者パーティーの各リーダー達と、サブマスから認められたらしい。
 つい数ヶ月前までは能無しスキルなしだった僕が、まさか最前線の戦闘への参加要請を受けるとは。
 迷宮の深層を目指している僕にとって、これは目標に近づく為にプラスになる話だ。
 とは言っても。
「これはギルドからの依頼ですか?」
 僕も探索者の端くれだ。慈善事業で命を懸けてる訳じゃない。確認すべき事は確認しておかないとね。

「はっ、頼もしいものだな」
 ザイアンからは、褒めてるのか馬鹿にしてるのか判断しかねる一言があったけど、僕の言葉に対して攻撃はなかった。
 とりあえず、この三階層の件に関しては、迷宮の探索が進まない原因になっていることと、三階層からの撤退による帰路の安全を確保する為にレイドモンスターが沸かないようにしていること。その為に二階層の魔物の湧き率が悪くなってしまい、素材回収的にも、探索者のレベルアップ的にも良くない状況になってしまっていること、と言う理由から、「今回の討伐はギルドからの依頼である」との事を教えてもらった。
 まあ、ギルドに顔を出す探索者なら噂程度で知っている話なんだけど、サブマスから改めて説明を受けると、ゾクゾクするものがあった。
 だって、そんな重要な戦いに参戦できるなんてね。

 その後、討伐完了時のギルドからの報酬についてと、討伐対象に関して分かっている情報を提供してもらい、僕らは改めてしっかりと休憩することになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...