プレーヤープレイヤー

もずく

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「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ!」
 五連突きが魚人の背中に突き刺さる。最後の突きは更に一歩踏み込んで、反対側の胸から剣が生えたような状態になった。
 その剣先はソルトに向けられていて、もう半歩分前に来られていたらソルトに当たってしまったことだろう。
 ソルトが避けなければ、だが。

「はぁ?」
 残りの魚人とヘビは、新たな探索者ターゲットが現れたことでそちらに意識を向けてしまった。
 ソルトは集中力が切れたような声で問い掛けた。
「別に助けは求めてないんですが。僕の獲物なんでやめてもらえませんかね」
「へー、ちんたらやってるから助けに入らないと死んじまうかと思ったんだわ」
 背中から刺した剣を無理矢理横に振って魚人をどかしながら現れたのはキーンだった。
「……とにかく大丈夫なんで放っておいてもらえませんかね」
 そう言いながら、キーンに向かってしまった魚人とヘビに剣をタタタンと叩きつける。だが、キーンの攻撃力の高さを危険視しているのか、魔物達はソルトに振り返らない。
「はぁ」
「はっ、俺のが人気みたいだな」
 キーンは二連撃をヘビに入れて、ヘビの頭部と片目に突き刺した。
 もう、今の武器を使い続ける限り、この魔物達は僕の方は無視することだろう。泣き寝入りというわけではないけど、この場は彼に任せてしまうしかないかな。
 僕はもう一人がいる方に歩いていく。
「これで「魔物を擦り付けられた」とか言われたら流石に怒るよ」
「すみませんっ! そんな事は絶対言わないです。ホントすみませんでした!」
 ナディだったっけか。
 彼女は勢いよく頭を下げたあと、慌ててキーンが戦う場に向かって走っていった。

「逃げてんじゃねーよ!」

 キーンの声が聞こえたけど、僕はそれを無視して通路を進んでいった。
 まだレベルが低いキーンが既に二階層で戦えてるのは、きっとあの武器のおかげだろう。
 武器さえあれば、多少レベルが低くても魔物を倒すことはできる。でも、動きが速くなってる訳でもなければ、防御が上手くなってる訳でもない。攻撃力以外はレベル通りなんだよね。


キーン
 人間
 男性
 一八歳
 レベル一六
 メールスフィアの迷宮の探索者。探索者ギルド所属。クラン風の剣所属。犯罪歴はなし。
 《剣士》《連撃》《偽撃》《刺突剣》

ナディ
 人間
 女性
 一六歳
 レベル一六
 メールスフィアの迷宮の探索者。探索者ギルド所属。犯罪歴はなし。
 《土魔法》《土槍》《土壁》《石礫》
 《短剣》

エストック+3
 攻撃力二〇
 刺突時には攻撃力二四になる。魔力を消費することで精度の高い三連続突きができる。


 僕もレベル一五、六の頃に二階層に行った事があるけど、最初の会敵で逃げて戻ったんだよな。二階層に足を踏み入れた、ってだけで喜んでたあの頃が懐かしい。
 あの頃、もしも僕が能無しスキルなしのまま赤虎の爪剣を持ってたら、僕も二階層に突き進んでたんだろうか。いや、きっと臆病で面倒くさがりなペッパーあたりが「まだ早い」とか言って引き止めたんだろうな。マヨもミントも同じだ。みんな慎重だったから生き残れたんだし、着実にレベルを上げられてたんだ。
 それでも想定外の事は発生する。ザッツバーグのあの事件に、僕達は対応する事ができずにペッパーを失ってしまった。
 だから、本当なら慎重に慎重を重ねて進むべきなんだ。
 これはキーンや他の探索者だってそうだし、僕だって同じだ。

 でも。

 僕は今、早く強くならなくちゃならない。
 あのザッツバーグの件が、ザッツバーグの死刑で終わってなかったからだ。
 黒幕はギルド内にいたサブマス達じゃなかった。
 クラン風の剣。
 転移者カザミネ。
 いつか彼と相対した時に、怯まずに戦えるように準備して強くなっておかないと。

 また彼らに絡まれると面倒なので、僕は少し足を早めて……三階層の手前の空洞に移動することにした。
 そこを拠点にして活動して、レイドモンスターの出現を待つことにしよう。



「ぐあっ……痛ってえ」
「はい。応急処置終わり。あとは街に戻ってから自分でなんとかしてね」
「冷てえな」
「もう約束の十回目の戦闘が終わったから。あとはなるべく敵を回避して街に戻るだけ、でしょ。はいこれ」
 ナディは指輪を外し、キーンに渡した。
「これで今の私の魔法じゃ二階層の魔物にはあまり通用しなくなったから。その分、あなたは強くなったと思うけどね。じゃあ急いで帰りましょ」
「へーへー」
 キーンは負傷した脇腹を手で押さえつつ立ち上がる。魚人の三叉槍が彼の腹に穴を開けたのだ。
 超高級回復薬は持ってきてない為、普通の傷薬を塗ってテープを貼っただけの応急処置しかしていない。このままの状態では三匹以上の魔物が現れた場合は危険だ。
 二人は最短距離を歩き一階層を目指した。
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