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アルラウネ
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「かはっ」
これは、横から脇腹への突然の衝撃で、腹にあった空気が強制的に外に押し出された音。
ガガンッ!
「ぶっ!」
これは、真っ正面から壁に突っ込んでぶつかった音と、僕の口から出た情けない音。
そして次に、僕は背中から地面に落ちて、後頭部を打って目から火花を飛ばしたのだった。
「ヨルグッ!」
「はいよっ!」
地面に落ちた僕を狙って再び地面から飛び出してきた枝を、ヨルグが素早く斬り落としていってくれた。
遠くでマサキが《聖光結界》を使った声が聞こえた。
近くで「あんなに慌ててるマルメルを見んのは久しぶりだな、っとぉ!」と言うヨルグの呑気な声が聞こえた。
まだ戦闘は終わってないんだ。早く立たないと。
「すみません!」
「謝る必要なんかねーって。それどころか俺の方からお礼を言いたいくらいだぜ」
ヨルグは、よっ、ほっ、はっ、と口にしつつ、リズミカルにステップを踏んで攻撃を躱しつつ、短剣で的確に枝を切り落としていく。
「よくぞ二人を守ってくれたぜっ、てなっ!」
「いえ、当たり前のことですよ!」
立ち上がって呼吸を取り戻した僕は、状況を確認しつつ地面のいたる所から伸びてきだした枝に斬りつけた。
剣を振り、枝を斬り裂く度に体力が回復し、腹部の痛みがなくなっていくのがよく分かる。連続で剣を振り続けてるのに疲れるどころか力が湧いてくるようだ。
指輪から白竜の白金の短剣も取り出して二刀流で枝を斬っていった。今や空洞内の地面全部が魔物になってしまったような状態だ。
マサキは《聖光結界》を維持し続けてるから動けない。その代わりにすぐ傍にいる聖女様とマルメルも含めて強力な防御結界でダメージを受けていない。
トーヤは何本もの枝が刺さってしまってるけど、大剣の一振りで、自分に刺さってる枝を含めて、何十本もの枝を一掃している。傷は《超治癒力》のおかげで高速で自然回復しているようだ。
ヨルグは僕と同じで、空洞内を駆け回りながら枝の攻撃を避けつつ、短剣で枝を斬っている。その姿はまるでダンスでも踊ってるかのようだ。
「こいつは大樹妖霊。木属性で火と冷気に弱い、か。そして地中にある人型の根が本体、ってそれでは倒しようがないではないか。いや、僕ならばできるはずだ。考えろ考えるんだ」
「マルメル、早く何か案を」
「マサキ様、慌ててはなりませんわ」
《聖光結界》を張り続けている勇者マサキは、仲間が戦っているのに自分が安全な場所に居るのが許せないようだ。焦った声で参謀を急かしている。
そうこうしている内に二、三分が経ち、ヨルグとトーヤの動きが少し悪くなってきたようだ。
ただ、地面から出てくる枝の数も減ってきていいるから、枝を斬り続ける事に意味はあったようだ。よかった。
地面は至る所が紫色の魔物の血の色に変わっている。
「ヨルグさんこれをっ」
僕は白竜の白金の短剣をヨルグに投げて渡した。彼は踊りの振り付けのように、華麗、かつ器用にそれ受け取ると「例の剣か、ありがてえ!」と言って、自分の使っていた短剣を腰にある鞘に戻し、僕の渡した短剣で枝を斬りつけ始めた。ヨルグの動きが短剣の一振り毎に良くなっていく。
僕がトーヤにできることは高級回復薬を渡す事くらいだけど、やらないよりはマシだろう。
「トーヤさん、失礼します」
僕はトーヤの背中に高級回復薬を振り掛けた。背中だけでなく、傷の治りが遅くなってきてるのか所々から血が流れていたんだけど、薬が効いたのか血が止まったようだ。
回復薬では疲れは取れないけど、傷と体力は回復できる。《超治癒力》も傷と体力を回復するけど、効果を発揮すればするほど魔力が消費されて疲労度が上がってしまう。その《超治癒力》で傷が治らなくなってきてたってことは、トーヤの疲労度はかなり高い状態だったんだろう。《超治癒力》を使わないで体力が回復すれば、一息ついて疲労度も軽減できるはずだ。
「もうこちらには攻撃が来なくなりましたわ」
「そうだね。それにヨルグもトーヤも持ち直したみたいだ。まったく、ソルトは凄い奴だな」
「よし、燃やそう」
「え?」
「マルメル、何か思いついたのかい?」
「ああ。思いついたと言うよりも、魔法を創った。僕があの枝の根っこまで燃やし溶かす。もし地面から本体が出てきたらマサキ、頼んだよ」
「もちろんだ」
「クリームはトーヤ、ヨルグ、ソルトの順に診てあげてくれ」
「はい。マルメル、もう大丈夫そうですわね」
「な、何がだ」
「だって、あなたのさっきの焦りようと言ったら……うふふ。それで時間が掛かってしまったのでしょう?」
「な、な、なんの事だか分からないな。それよりマサキ、早く結界を解いてくれないか」
「うふふ。賢者様が「分からない」事なんておありなのね」
「~~!」
「結界を解くよ。また攻撃がこっちに来るかも知れないから二人共気を引き締めて」
「はい、マサキ様」
「分かっている!」
勇者マサキの《聖光結界》は、物理攻撃も魔法攻撃も通さない銀色に光り輝く透明な結界を張るものだ。普通の魔物の攻撃であれば、おそらく全ての攻撃を通さないくらいに強力な防護壁だろう。強いて弱点を上げるとすれば三つ。結界を張ったまま移動できない事、結界のサイズが狭い事、そして結界の内側からも攻撃ができない事だ。
あってありがたいスキルではあるけど、マサキの性格的には本来あまり使いたくないものなんだろうな。
だって、結界を解除して出てきた彼の顔は、やる気に満ちて爛々と輝いていたから。
これは、横から脇腹への突然の衝撃で、腹にあった空気が強制的に外に押し出された音。
ガガンッ!
「ぶっ!」
これは、真っ正面から壁に突っ込んでぶつかった音と、僕の口から出た情けない音。
そして次に、僕は背中から地面に落ちて、後頭部を打って目から火花を飛ばしたのだった。
「ヨルグッ!」
「はいよっ!」
地面に落ちた僕を狙って再び地面から飛び出してきた枝を、ヨルグが素早く斬り落としていってくれた。
遠くでマサキが《聖光結界》を使った声が聞こえた。
近くで「あんなに慌ててるマルメルを見んのは久しぶりだな、っとぉ!」と言うヨルグの呑気な声が聞こえた。
まだ戦闘は終わってないんだ。早く立たないと。
「すみません!」
「謝る必要なんかねーって。それどころか俺の方からお礼を言いたいくらいだぜ」
ヨルグは、よっ、ほっ、はっ、と口にしつつ、リズミカルにステップを踏んで攻撃を躱しつつ、短剣で的確に枝を切り落としていく。
「よくぞ二人を守ってくれたぜっ、てなっ!」
「いえ、当たり前のことですよ!」
立ち上がって呼吸を取り戻した僕は、状況を確認しつつ地面のいたる所から伸びてきだした枝に斬りつけた。
剣を振り、枝を斬り裂く度に体力が回復し、腹部の痛みがなくなっていくのがよく分かる。連続で剣を振り続けてるのに疲れるどころか力が湧いてくるようだ。
指輪から白竜の白金の短剣も取り出して二刀流で枝を斬っていった。今や空洞内の地面全部が魔物になってしまったような状態だ。
マサキは《聖光結界》を維持し続けてるから動けない。その代わりにすぐ傍にいる聖女様とマルメルも含めて強力な防御結界でダメージを受けていない。
トーヤは何本もの枝が刺さってしまってるけど、大剣の一振りで、自分に刺さってる枝を含めて、何十本もの枝を一掃している。傷は《超治癒力》のおかげで高速で自然回復しているようだ。
ヨルグは僕と同じで、空洞内を駆け回りながら枝の攻撃を避けつつ、短剣で枝を斬っている。その姿はまるでダンスでも踊ってるかのようだ。
「こいつは大樹妖霊。木属性で火と冷気に弱い、か。そして地中にある人型の根が本体、ってそれでは倒しようがないではないか。いや、僕ならばできるはずだ。考えろ考えるんだ」
「マルメル、早く何か案を」
「マサキ様、慌ててはなりませんわ」
《聖光結界》を張り続けている勇者マサキは、仲間が戦っているのに自分が安全な場所に居るのが許せないようだ。焦った声で参謀を急かしている。
そうこうしている内に二、三分が経ち、ヨルグとトーヤの動きが少し悪くなってきたようだ。
ただ、地面から出てくる枝の数も減ってきていいるから、枝を斬り続ける事に意味はあったようだ。よかった。
地面は至る所が紫色の魔物の血の色に変わっている。
「ヨルグさんこれをっ」
僕は白竜の白金の短剣をヨルグに投げて渡した。彼は踊りの振り付けのように、華麗、かつ器用にそれ受け取ると「例の剣か、ありがてえ!」と言って、自分の使っていた短剣を腰にある鞘に戻し、僕の渡した短剣で枝を斬りつけ始めた。ヨルグの動きが短剣の一振り毎に良くなっていく。
僕がトーヤにできることは高級回復薬を渡す事くらいだけど、やらないよりはマシだろう。
「トーヤさん、失礼します」
僕はトーヤの背中に高級回復薬を振り掛けた。背中だけでなく、傷の治りが遅くなってきてるのか所々から血が流れていたんだけど、薬が効いたのか血が止まったようだ。
回復薬では疲れは取れないけど、傷と体力は回復できる。《超治癒力》も傷と体力を回復するけど、効果を発揮すればするほど魔力が消費されて疲労度が上がってしまう。その《超治癒力》で傷が治らなくなってきてたってことは、トーヤの疲労度はかなり高い状態だったんだろう。《超治癒力》を使わないで体力が回復すれば、一息ついて疲労度も軽減できるはずだ。
「もうこちらには攻撃が来なくなりましたわ」
「そうだね。それにヨルグもトーヤも持ち直したみたいだ。まったく、ソルトは凄い奴だな」
「よし、燃やそう」
「え?」
「マルメル、何か思いついたのかい?」
「ああ。思いついたと言うよりも、魔法を創った。僕があの枝の根っこまで燃やし溶かす。もし地面から本体が出てきたらマサキ、頼んだよ」
「もちろんだ」
「クリームはトーヤ、ヨルグ、ソルトの順に診てあげてくれ」
「はい。マルメル、もう大丈夫そうですわね」
「な、何がだ」
「だって、あなたのさっきの焦りようと言ったら……うふふ。それで時間が掛かってしまったのでしょう?」
「な、な、なんの事だか分からないな。それよりマサキ、早く結界を解いてくれないか」
「うふふ。賢者様が「分からない」事なんておありなのね」
「~~!」
「結界を解くよ。また攻撃がこっちに来るかも知れないから二人共気を引き締めて」
「はい、マサキ様」
「分かっている!」
勇者マサキの《聖光結界》は、物理攻撃も魔法攻撃も通さない銀色に光り輝く透明な結界を張るものだ。普通の魔物の攻撃であれば、おそらく全ての攻撃を通さないくらいに強力な防護壁だろう。強いて弱点を上げるとすれば三つ。結界を張ったまま移動できない事、結界のサイズが狭い事、そして結界の内側からも攻撃ができない事だ。
あってありがたいスキルではあるけど、マサキの性格的には本来あまり使いたくないものなんだろうな。
だって、結界を解除して出てきた彼の顔は、やる気に満ちて爛々と輝いていたから。
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