プレーヤープレイヤー

もずく

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味方の攻撃

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「マルメルが火魔法を使う! 魔法陣が発生する場所に気をつけて欲しい! 魔物の本体が現れたら一気に叩く!」
「おうよ!」
「……(こくり)」
「はい!」

 マサキが声を張り上げ、僕を含めたアタッカーが応えた。
 そして十数箇所の宙空に五十センチほどの魔法陣が浮かび上がる。いずれもまだ数十センチほど飛び出している枝の真上だ。
「《溶岩流ラバフルー》」
 マルメルの言葉の直後、魔法陣から下に向かってオレンジ色に光る真っ赤な液体ドロドロと溢れ出した。溶岩だ。ボコボコと気泡を破裂させ超高温で沸騰する液体は、枝を即座に燃やし尽くす。
 溶岩を落としていない地点から新たな枝が何十本も飛び出して来たけど、それは僕らを攻撃する為のものじゃなくて、痛みにのたうち回るようにウネウネと動き回っている。ただ、それが体に当たればダメージを受けるくらいの勢いだから、無差別な分だけ躱すのが難しくもある。

「きゃあ!」
「クリーム!」
 狙いのない攻撃はマサキでも防御しづらかったらしく、鞭のようにしなる枝がクリームを叩いた。マサキが聖女様の前に立ち、大盾で左からの枝を防ぎ、右からくる枝は剣で叩き斬る。
「ぐっ!」
「マルメル!」
 背後からの枝の攻撃まではカバーすることができず、マルメルの足を枝が刈り取り、マルメルは地面に倒れた。
「僕のことはいいからっ! 本体アルラウネが出てくるかもしれないからそっちに集中を!」
 僕とヨルグはマルメル達の方のフォローに行こうかと動こうとしたけど、マルメルの言葉で踏み留まった。そして、地面の変化を見逃さないようにしながら《索敵》する。
 地面が盛り上がる、そのほんの一瞬前に《索敵》でその位置を知り、飛び出してくる位置に向かって《瞬歩》で移動する。
 そして両手持ちした白竜の長剣を《怪力》《筋力強化》《剣速上昇》《必中》を使って、頭が出てきたばかりの本体を右から左に斬り払った。そしてスパンと切り取った半球状の頭を蹴り飛ばす。
 そこにトーヤがジリジリと近付いてきていたので、僕は場所を開ける為にジャンプして離れた。頭部が無くなったまま、本体は熱から逃げるように地面からウネウネと伸び出てくる。
 そこに《超断魔剣》が真上から叩き付けられた。綺麗な半円を描いた大剣が、アルラウネの本体を真っ二つにした後、そのままに地面に当たってまるで爆発したかのような音を立てる。
 地面が弾けて破片が飛び散る。それはまるで《石礫》のように僕達を襲った。

「トーヤぁ、その技使う時は地面に当てないで止めろって言ったよなぁ」
    飛んできた破片で怪我をしたヨルグが、犯人であるトーヤに詰め寄ると、トーヤは大きな体を丸めてヘコヘコした。マスクをしてるから表情が見えないはずなのに、何故か情けない顔をしてるんだろうなと想像できてしまった。ちなみに、僕はトーヤの素顔を見たことはない。
「クリームはヨルグの怪我を治して。俺はソルトの怪我を診るから」
「はい。分かりましたわ」
 マサキは大盾でトーヤの放った石礫を防御できたようでどこにも怪我をしてないようだ。さすがだね。
 僕は最後の最後、剣で弾き返しきれなくて右肩に拳より大きな石の直撃を受けていた。けど、青銀のボディスーツが耐えられるくらいの威力だったらしくて、特に痛みは感じなかった。
「換装」して元のラフな軽装備に戻る。
「大丈夫かい?」
「はい。なんとか」
「それにしてもソルトの最後の一撃はもの凄い速さだったね」
「いや、それほどでも……」
 アルラウネは木の魔物だった。枝の硬度を考えたら、本体もそれほど硬い敵じゃないと予想できたはずだから、あんなにスキルを重ねる必要はなかったかも知れない。マサキの視線が「説明してくれるよね」と言ってるような気がして、ちょっと後ずさりしそうになってしまった。
    そこにタイミングよく(?)、トーヤがアルラウネにとどめを刺した場所に魔法陣が現れた。
 また新たな敵か、と身構えたんだけど、ブレイカーズのみんなは平然として動かない。
「やっぱまただったか~」
 あちゃ~、という感じでヨルグが自分の額をぴしゃりと叩く。
「ソルト、怪我はないか」
 緑の上質な質感のローブについた土汚れをパンパンと叩きはたきながら、マルメルがマサキの前に立った。そして僕の両肩を掴んで目を覗き込んでくる。
「え、あ、はい。大丈夫です。そ、それよりこれは?」
 彼女の顔があまりにも近すぎて、ちょっと焦ってどもってしまった。マルメルは美男子と言える顔付きだけど、それはつまり整った顔立ちをしてるってことで、見る角度を変えれば美人な女の子なわけだ。
 そう言えば、僕はミツキのことも最初は男だと思ってたんだっけ。自分でも知らなかったけど、僕はこういう子が好きなのかも知れ……いや、違う違う違う。僕が今好きなのはミツキだ。彼女を裏切る訳には「本当に大丈夫なのか? 少し変じゃないか?」僕より少し背の低いマルメルが、さらに少し近付いてきて下から僕の目を見つめてくる。それで僕はさらに頭の中で余計なことをぐるぐるぐるぐると考えてしまった。
「やっぱり少し変だぞ。座って待ってろ、クリームを呼んでくる」
 ぐっと僕の両肩を下に引き下ろした彼女は、たたたっと走ってトーヤの治療をしてる聖女様を呼びに行ったようだ。
 僕はなすがままに地面に座り込んで、ボーッとしたままマルメルの背中を見つつ、魔法陣から湧き出してきた金銀財宝の音と光を感じていたのだった。
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