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美味しい物
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今日は武具屋プリペアには行かない。
何故なら、昨日、勇者マサキがプリペアに行くと言っていたからだ。親方は複数の客を同時に相手にする事はしたがらないだろうし、マサキもパーティーメンバー以外には話したくない注文があるかも知れない。
迷宮内では良くしてもらったけど、それを勘違いして馴れ馴れしくするのは違うだろうしね。
と言うわけで、今日は迷宮街を出て、ダルダロイの街にやって来た。
相変わらず、朝は一般客向けの店しかやってない。でも、だからこそ食べ物系の屋台は一般向けで安くて美味しい所が多い。いくつかのお店を回ってお腹をいっぱいにしつつ、焼き鳥や茹で麺、出汁などを仕入れたりしてのんびり過ごした。
午後になってから今日の宿を探し始めた。ホテル・カザミネは凄く良かったんだけど、暗殺者だらけのホテルと分かってて泊まるのはちょっと。と言うか、カザミネやクラン風の剣のやろうとしてる事をざっくりと聞いてしまった今、彼らの施設と分かって使うのはアウトな気がするんだよね。
ただ、それなりの造りの宿には、僕の見た目でお断りされてるような気になってしまって、結局、中心部からは少し離れた東側のエリアにある、一階が酒場になっている安宿に泊まることにした。
宿票だけ貰ってもう一度外に出る。
夕飯は少し贅沢目の飯屋に入りたい。これは単に僕が美味しい物を食べたいというのもあるし、いつかマルメルとタイミングが合った時の為の下調べも兼ねて、だね。
さあ、いい店に当たりますように。
プリペアにて。
「ほお、青銀の鱗皮の全身鎧にそんな力まであったとはな。いやな、狙って付与した力はそれじゃないんだがよ。流石はハイレア素材ってことだな」
「え、筋力強化によるダメージアップとスピードアップの他にも何かあるんですか?」
「あいつから聞いてねえんならわしからは教えんぞ?」
「ああ、それはそうですよね」
「しかしそうか。動きやすいとは言ってたが、そんな追加効果があったとはな」
そう言って「うんうん」と頷く親方を見て、一応、聞いてみることにした。
「青銀の鱗皮を持ってきたら僕にも同じ物を造ってもらえますか?」
「青銀の魔眼石も必要だぞ。それがないと装備が大変な代物なんだ、あれは」
「ちなみに似たような皮素材でもできますか」
「どうだかな。素材が手元に無いとなんとも言えんが……魔眼石も同じ種類の物でないと難しいかもしれんな」
「そうですか……分かりました。その内手に入れたらその時はお願いします」
「おおよ。その時はわしに任せろ。とは言ってもな。お前さんの聖鎧以上の物が造れるかどうかは」
「ストップですよ親方。それは僕が持ってくる素材次第、でしょう?」
やっぱり、ソルトのあの力は親方の造った鎧のおかげだったようだ。僕も超高防御力の聖鎧と、スピード重視の鎧を使い分けられたらもっと強くなれるかもしれない。
その為に、まずは素材集めないと……青銀の鱗皮の全身鎧なら迷宮火吹きワニの特殊討伐か。前に一撃で倒した事があったけど、あの時にハイレアドロップってあったのかな。
ちょっとギルドに行って、そこら辺の情報を買っておこうかな。
とある服屋にて。
「マルメル、こちらの服はどうかしら」
「クリーム、ボクにはそんなひらひらした物は無用だ」
「そんなことありませんわ。ソルト君とのデートに備えて買っておいた方がいいわ」
「ク、クリームまでヨルグのようなことを」
「もう、みんなにバレバレですわよ」
「それはそうだろう。助けた貸しを食事で返してもらう約束をした時、全員が聞いていたのだから」
「違いますわ。バレバレなのは貴女の気持ちなのですわ」
「……なんの事だか分からないね」
「うふふ。《隠蔽》できてませんわよ」
「~~!」
ファットキャットバイトにて。
「こんちわらっしゃっせい……って幻舞剣のヨルグと大断刀のトーヤぁ!?」
「お、その反応いいね~!」
「(こくり)」
「どどど、どうしてこんな店に!?」
「いや~、ソルトにどっかいい店ないか聞いたらここを教えてくれてな。なんかオススメ頼むわ」
「(こくり)」
グーメシュは、突然の大物の来店に頭を混乱させながらも「オススメ、オススメ、オススメ」と呪文のように唱えながら、いつものように目玉焼きとトーストを作り、更にポテトサラダ&マカロニサラダ、そしてピラフやらミートボールやらを載せていく。
「オススメとかないんで、いつもソルトや皆さんに出してるモーニングなんですけど」
「おっ、これこれっ。こー言うのがいいんだよな。モーニングって量じゃないけど全然いけるぜ。いただきま~す」
ヨルグが喜びの声を上げ、トーヤはペコリとお辞儀をしてからワンプレートにこれでもかと載せられた食材を頬張り始めた。
グーメシュはそれを夢の出来事のように見ながらオレンジジュースを提供して、それからコーヒーの準備を始めた。
店内にいた常連も有名な勇者のパーティーメンバーの食事を見つめる。
いつもボサボサの髪の毛のままで食べに来ている近所の女は、慌てて髪を櫛で整え、声を掛ける準備を始めた。
これが、ファットキャットバイトのモーニングが有名になった最初の出来事だった。
このあと、このモーニングを気に入ったヨルグが勇者マサキを連れてくることで、勇者パーティー・ブレイカーズが来る店として更に有名になるのだった。
何故なら、昨日、勇者マサキがプリペアに行くと言っていたからだ。親方は複数の客を同時に相手にする事はしたがらないだろうし、マサキもパーティーメンバー以外には話したくない注文があるかも知れない。
迷宮内では良くしてもらったけど、それを勘違いして馴れ馴れしくするのは違うだろうしね。
と言うわけで、今日は迷宮街を出て、ダルダロイの街にやって来た。
相変わらず、朝は一般客向けの店しかやってない。でも、だからこそ食べ物系の屋台は一般向けで安くて美味しい所が多い。いくつかのお店を回ってお腹をいっぱいにしつつ、焼き鳥や茹で麺、出汁などを仕入れたりしてのんびり過ごした。
午後になってから今日の宿を探し始めた。ホテル・カザミネは凄く良かったんだけど、暗殺者だらけのホテルと分かってて泊まるのはちょっと。と言うか、カザミネやクラン風の剣のやろうとしてる事をざっくりと聞いてしまった今、彼らの施設と分かって使うのはアウトな気がするんだよね。
ただ、それなりの造りの宿には、僕の見た目でお断りされてるような気になってしまって、結局、中心部からは少し離れた東側のエリアにある、一階が酒場になっている安宿に泊まることにした。
宿票だけ貰ってもう一度外に出る。
夕飯は少し贅沢目の飯屋に入りたい。これは単に僕が美味しい物を食べたいというのもあるし、いつかマルメルとタイミングが合った時の為の下調べも兼ねて、だね。
さあ、いい店に当たりますように。
プリペアにて。
「ほお、青銀の鱗皮の全身鎧にそんな力まであったとはな。いやな、狙って付与した力はそれじゃないんだがよ。流石はハイレア素材ってことだな」
「え、筋力強化によるダメージアップとスピードアップの他にも何かあるんですか?」
「あいつから聞いてねえんならわしからは教えんぞ?」
「ああ、それはそうですよね」
「しかしそうか。動きやすいとは言ってたが、そんな追加効果があったとはな」
そう言って「うんうん」と頷く親方を見て、一応、聞いてみることにした。
「青銀の鱗皮を持ってきたら僕にも同じ物を造ってもらえますか?」
「青銀の魔眼石も必要だぞ。それがないと装備が大変な代物なんだ、あれは」
「ちなみに似たような皮素材でもできますか」
「どうだかな。素材が手元に無いとなんとも言えんが……魔眼石も同じ種類の物でないと難しいかもしれんな」
「そうですか……分かりました。その内手に入れたらその時はお願いします」
「おおよ。その時はわしに任せろ。とは言ってもな。お前さんの聖鎧以上の物が造れるかどうかは」
「ストップですよ親方。それは僕が持ってくる素材次第、でしょう?」
やっぱり、ソルトのあの力は親方の造った鎧のおかげだったようだ。僕も超高防御力の聖鎧と、スピード重視の鎧を使い分けられたらもっと強くなれるかもしれない。
その為に、まずは素材集めないと……青銀の鱗皮の全身鎧なら迷宮火吹きワニの特殊討伐か。前に一撃で倒した事があったけど、あの時にハイレアドロップってあったのかな。
ちょっとギルドに行って、そこら辺の情報を買っておこうかな。
とある服屋にて。
「マルメル、こちらの服はどうかしら」
「クリーム、ボクにはそんなひらひらした物は無用だ」
「そんなことありませんわ。ソルト君とのデートに備えて買っておいた方がいいわ」
「ク、クリームまでヨルグのようなことを」
「もう、みんなにバレバレですわよ」
「それはそうだろう。助けた貸しを食事で返してもらう約束をした時、全員が聞いていたのだから」
「違いますわ。バレバレなのは貴女の気持ちなのですわ」
「……なんの事だか分からないね」
「うふふ。《隠蔽》できてませんわよ」
「~~!」
ファットキャットバイトにて。
「こんちわらっしゃっせい……って幻舞剣のヨルグと大断刀のトーヤぁ!?」
「お、その反応いいね~!」
「(こくり)」
「どどど、どうしてこんな店に!?」
「いや~、ソルトにどっかいい店ないか聞いたらここを教えてくれてな。なんかオススメ頼むわ」
「(こくり)」
グーメシュは、突然の大物の来店に頭を混乱させながらも「オススメ、オススメ、オススメ」と呪文のように唱えながら、いつものように目玉焼きとトーストを作り、更にポテトサラダ&マカロニサラダ、そしてピラフやらミートボールやらを載せていく。
「オススメとかないんで、いつもソルトや皆さんに出してるモーニングなんですけど」
「おっ、これこれっ。こー言うのがいいんだよな。モーニングって量じゃないけど全然いけるぜ。いただきま~す」
ヨルグが喜びの声を上げ、トーヤはペコリとお辞儀をしてからワンプレートにこれでもかと載せられた食材を頬張り始めた。
グーメシュはそれを夢の出来事のように見ながらオレンジジュースを提供して、それからコーヒーの準備を始めた。
店内にいた常連も有名な勇者のパーティーメンバーの食事を見つめる。
いつもボサボサの髪の毛のままで食べに来ている近所の女は、慌てて髪を櫛で整え、声を掛ける準備を始めた。
これが、ファットキャットバイトのモーニングが有名になった最初の出来事だった。
このあと、このモーニングを気に入ったヨルグが勇者マサキを連れてくることで、勇者パーティー・ブレイカーズが来る店として更に有名になるのだった。
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