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カザミネ
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「くくくくくっ。ぷっ、プププププッ……あ~~~~ハッハッハッ」
自分のホテルの最上階の部屋で、我慢できずに腹を抱えて笑い狂ってるのはカザミネと言う男だ。
セイジ・カザミネはクラン風の剣のマスターであり、このホテルカザミネのオーナーでもある。
日本という国にいた頃の彼の名は、正しくは風峰誠二と言う。
ある日、聖王国の行った勇者召喚の儀式によって、突然、否応なしに、この異世界に召喚された不遇の男だ。
彼が召喚された際に獲得した力は《分配機》と《暗殺者》だった。
何ができるかさっぱり分からない《分配機》と、およそ勇者に似つかわしくない《暗殺者》と言うスキルだった為、当時の国王であったノミナル・メイルーンは、彼に聖刻を打ち、メールスフィアの迷宮の踏破を命じたのだった。
そうして、カザミネと同時に召喚されたもう一人、水在と共に迷宮での生活が始まった。
聖刻とは、魔法の力を持った契約の刻印だ。
カザミネには少々気難しい所があった。
そして、彼はこの世界に召喚された事に怒り、よく分からないスキルを与えられた事に怒り、自分の所有物に命令をするかの様に話す国王に怒った。
その結果、カザミネに「強制的」に言うことを聞かせる為に「聖刻」が使われたのだった。
右足の膝には、聖王国の領土を出たら二度と聖王国には戻らないことを強制する聖刻。
右手の甲には、メールスフィアの迷宮を最深部まで踏破することを強制する聖刻。
《聖人》である聖王国国王の「聖」の文字は、この世界でどのような意味を持つのだろうか。
このことについて、カザミネは何度か考えた事があったが、この問題の答えは「なんの意味も持たない」と言う結論に辿り着くのだ。
それが、この世界の在り方や真理として正解かどうかは分からないが、カザミネにとっては唯一無二の結論になっていた。
この世界で生まれてきていないカザミネにとって、この世界はなんの意味もない、クソみたいな存在が創ったであろう、デッサンの狂った奇妙な箱庭みたいな物にしか見えなかった。
元いた世界が恋しい訳でもない。あの世界も、自分には優しくない世界だったから。
だから、カザミネは、迷宮に自分の居場所を見つけたのだった。
迷宮内にあるルールはシンプルだった。
強ければ生き続けられるし、弱ければ死ぬ。
そう。弱肉強食だ。
魔物はすべてが敵だ。
見つけたら倒す。
それだけだ。
時には人間さえも敵になる。
こちらの持ち物を狙って来た盗賊じみた者もいたし、自分を隷従させる為に襲ってきた者もいた。
そういう奴らを相手にしている内に、カザミネの中で、魔物と人間の違いはどんどんなくなっていった。
戦い続けていく内に、カザミネは《分配機》が何なのかを理解していった。
分けて配る物。
カザミネの中では、分配という言葉のイメージは「自分の持ち物を分けて配る」という物だった。自分自身の人生さえも聖王国に奪われてしまったカザミネにとって、自分の持ち物を誰かに分け与えるなど、そんなおぞましい事は絶対にしたくなかった。
だが、ある時、自分を殺そうと襲いかかってきた剣士にとどめを刺した時に、命乞いをしてきたソイツに対し、《分配機》が発動したのだった。
相手の同意の元に、《分配機》はお互いの物を分けて配る事ができたのだ。
そう、単なる「分配」ではなく、「再分配」とも呼べるような機能を有していたのだった。
分配の対象は「なんでも」だった。
分配元と分配先と言う概念もなかった。
つまり、総取りも可能な力だったのだ。
命乞いをしてきた相手に説明もなしに《分配機》を受け入れされせる。
そして、相手の持つ能力をすべて「自分に分配」する。
その代わりに、相手の命までは取らなかった。
まあ、迷宮の中で、致命傷を負った挙げ句、スキルを失った人間が生き残れるはずもないのだが。
ある時、自分の体に打ち込まれた聖刻を分配できるようになった。
一緒に迷宮に来てからずっと、カザミネが避けていた相手に相談を持ちかけた。
これまでまったくの別行動を取っていた水在だったが、同郷のカザミネを助けることができるなら、と、カザミネを迷宮に縛り付ける聖刻を両方共引き取ってくれたのだった。
ミザーリも、聖王国に思う所があったのだという。だが、自分の性格的に「聖王国国王に何かする」ことはできないし、ならば聖王国に戻らずに迷宮でリアルなバーチャルゲームを楽しんだ方がいいと、そう考えていたのだと言うのだ。
ミザーリもまた、ある意味で壊れていて、ある意味で狂人だったのだ。
カザミネは、自分の持っていたスキルで余っていた物を全部ミザーリに分配し、そして、二つの聖刻も彼に移した。
この時、カザミネとミザーリは盟友となったのでる。
その後、カザミネは見事に聖王国国王ノミナル・メイルーンの「討伐」に成功する。
だが、多勢に無勢だった。
無傷というわけには行かず、突然の国王崩御にバタつく城を、これまでに集めたスキルを駆使してなんとか逃げ出せたものの、とある畑の中を這いずっている途中に、血を失い過ぎて意識を失ったのだった。
そして、スキルを何一つ持たないものの、真面目に働く優しい男の看病を受けて生き延びる事ができた。
ノミナルから手に入れておいた《聖人》のスキルを、カザミネはその男に分配したのだった。
自分のホテルの最上階の部屋で、我慢できずに腹を抱えて笑い狂ってるのはカザミネと言う男だ。
セイジ・カザミネはクラン風の剣のマスターであり、このホテルカザミネのオーナーでもある。
日本という国にいた頃の彼の名は、正しくは風峰誠二と言う。
ある日、聖王国の行った勇者召喚の儀式によって、突然、否応なしに、この異世界に召喚された不遇の男だ。
彼が召喚された際に獲得した力は《分配機》と《暗殺者》だった。
何ができるかさっぱり分からない《分配機》と、およそ勇者に似つかわしくない《暗殺者》と言うスキルだった為、当時の国王であったノミナル・メイルーンは、彼に聖刻を打ち、メールスフィアの迷宮の踏破を命じたのだった。
そうして、カザミネと同時に召喚されたもう一人、水在と共に迷宮での生活が始まった。
聖刻とは、魔法の力を持った契約の刻印だ。
カザミネには少々気難しい所があった。
そして、彼はこの世界に召喚された事に怒り、よく分からないスキルを与えられた事に怒り、自分の所有物に命令をするかの様に話す国王に怒った。
その結果、カザミネに「強制的」に言うことを聞かせる為に「聖刻」が使われたのだった。
右足の膝には、聖王国の領土を出たら二度と聖王国には戻らないことを強制する聖刻。
右手の甲には、メールスフィアの迷宮を最深部まで踏破することを強制する聖刻。
《聖人》である聖王国国王の「聖」の文字は、この世界でどのような意味を持つのだろうか。
このことについて、カザミネは何度か考えた事があったが、この問題の答えは「なんの意味も持たない」と言う結論に辿り着くのだ。
それが、この世界の在り方や真理として正解かどうかは分からないが、カザミネにとっては唯一無二の結論になっていた。
この世界で生まれてきていないカザミネにとって、この世界はなんの意味もない、クソみたいな存在が創ったであろう、デッサンの狂った奇妙な箱庭みたいな物にしか見えなかった。
元いた世界が恋しい訳でもない。あの世界も、自分には優しくない世界だったから。
だから、カザミネは、迷宮に自分の居場所を見つけたのだった。
迷宮内にあるルールはシンプルだった。
強ければ生き続けられるし、弱ければ死ぬ。
そう。弱肉強食だ。
魔物はすべてが敵だ。
見つけたら倒す。
それだけだ。
時には人間さえも敵になる。
こちらの持ち物を狙って来た盗賊じみた者もいたし、自分を隷従させる為に襲ってきた者もいた。
そういう奴らを相手にしている内に、カザミネの中で、魔物と人間の違いはどんどんなくなっていった。
戦い続けていく内に、カザミネは《分配機》が何なのかを理解していった。
分けて配る物。
カザミネの中では、分配という言葉のイメージは「自分の持ち物を分けて配る」という物だった。自分自身の人生さえも聖王国に奪われてしまったカザミネにとって、自分の持ち物を誰かに分け与えるなど、そんなおぞましい事は絶対にしたくなかった。
だが、ある時、自分を殺そうと襲いかかってきた剣士にとどめを刺した時に、命乞いをしてきたソイツに対し、《分配機》が発動したのだった。
相手の同意の元に、《分配機》はお互いの物を分けて配る事ができたのだ。
そう、単なる「分配」ではなく、「再分配」とも呼べるような機能を有していたのだった。
分配の対象は「なんでも」だった。
分配元と分配先と言う概念もなかった。
つまり、総取りも可能な力だったのだ。
命乞いをしてきた相手に説明もなしに《分配機》を受け入れされせる。
そして、相手の持つ能力をすべて「自分に分配」する。
その代わりに、相手の命までは取らなかった。
まあ、迷宮の中で、致命傷を負った挙げ句、スキルを失った人間が生き残れるはずもないのだが。
ある時、自分の体に打ち込まれた聖刻を分配できるようになった。
一緒に迷宮に来てからずっと、カザミネが避けていた相手に相談を持ちかけた。
これまでまったくの別行動を取っていた水在だったが、同郷のカザミネを助けることができるなら、と、カザミネを迷宮に縛り付ける聖刻を両方共引き取ってくれたのだった。
ミザーリも、聖王国に思う所があったのだという。だが、自分の性格的に「聖王国国王に何かする」ことはできないし、ならば聖王国に戻らずに迷宮でリアルなバーチャルゲームを楽しんだ方がいいと、そう考えていたのだと言うのだ。
ミザーリもまた、ある意味で壊れていて、ある意味で狂人だったのだ。
カザミネは、自分の持っていたスキルで余っていた物を全部ミザーリに分配し、そして、二つの聖刻も彼に移した。
この時、カザミネとミザーリは盟友となったのでる。
その後、カザミネは見事に聖王国国王ノミナル・メイルーンの「討伐」に成功する。
だが、多勢に無勢だった。
無傷というわけには行かず、突然の国王崩御にバタつく城を、これまでに集めたスキルを駆使してなんとか逃げ出せたものの、とある畑の中を這いずっている途中に、血を失い過ぎて意識を失ったのだった。
そして、スキルを何一つ持たないものの、真面目に働く優しい男の看病を受けて生き延びる事ができた。
ノミナルから手に入れておいた《聖人》のスキルを、カザミネはその男に分配したのだった。
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