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クラン風の剣
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聖王国から一年ぶりに迷宮に戻ったカザミネは、ミザーリが死んだことを知った。
メールスフィアの迷宮の五階層の開放時に、魔竜王とやらが現れたそうだ。その討伐の際にパーティーの全滅を回避する為に、ミザーリはその命をかけたのだと聞いた。
ミザーリをここに縛り付けてしまったのは自分だ。
聖刻のせいで、迷宮踏破の妨げになる魔物の討伐に行かざるを得なかったのだろう。
元は自分の受けた呪いだ。あの気持ちの悪い、自分の意志を強制的に捻じ曲げるような感覚はまだ覚えている。
カザミネは、迷宮に戻ったら、ミザーリから聖刻を自分に分配するつもりでいた。それが叶わなくなった今、カザミネにできる事は、彼に移してしまった呪いの続きを引き継ぐことくらいだった。
だが、ミザーリがパーティーを組んでいた者達は、その殆どが迷宮の一階層にできた安全地帯か、外街で生活していることが分かった。
カザミネにとって、それは許せないことだった。
ミザーリに守ってもらった命を、探索者を辞めることで永らえさせるなど……英雄の名声も功績も公開されることは無かった為、迷宮の危機を救ったミザーリの名前を知る者はほとんどいない。
そんなのは可哀想だ。
ミザーリがあまりにも可哀想だ。
探索者ギルドを立ち上げて、ギルドハウスから出てこない臆病なアージェス。
大量の魔晶石を自分の国に持ち帰ったまま戻らないクソ侍ヤヨイ。
迷宮内に自宅を構え、引き籠もって研究を続けているという精霊弓術士のミスト。
外街の長となり、安全な高い塔の上から人を見下ろしているダルダロイ。
迷宮の安全な階層でレイドモンスターの素材狙いばかりしている大盾使いのサナム。
カザミネは、ミザーリから魔竜王討伐の名声を与えられたにも関わらず、迷宮探索から逃げ出した人間を調べ上げた。
いつか、こいつらを……
カザミネはクランを立ち上げた。
《暗殺者》や《盗賊》など、響きの良くないスキルのせいで、うまく他人とパーティーを組めない者達に声をかけ、仲間に引き入れていった。
クランの目的は、いつか新たな階層に到達し、迷宮に魔竜王を再臨させることだ。
自分自身は体験していないから分からないのだが、魔竜王が現れた時には、安全地帯と呼ばれる空洞にも魔物が湧き、魔物の湧く数が多くなり、そして魔物が強化されたのだという。
再びそんな現象が起これば、迷宮はまた大騒ぎになるだろう。そうなれば、前回、一時的にでも英雄と呼ばれた者達の名が語られるはずだ。
そうすればミザーリの名も出てくることになるだろう。誰も語らなければ、自分が声を上げてやろう。
安穏と生きている、ミザーリのかつての仲間(の振りをしていた卑怯者)達を引きずり出して、最前線で戦わせてやる。
日常生活を奪われ、魔物がいるこんな変な世界に呼び出され、迷宮で生きることを強いられた自分。
苛立ちに任せ暴れていた自分を見捨てずにいてくれたミザーリ。
彼の存在が、彼の功績が、まるで何もなかったかのように存在し続ける迷宮、街、世界。
そんな事は許せない。
「くくくくくっ……まったく、バカばっかりだな、この世界の奴らは本当に」
そして自分もバカだ。
最早自分もこの馬鹿げた世界の一部だってことなんだろう。それはそうだ。元の世界で生きていた時間より、この世界で生きた時間の方が既に長くなってるのだから。
そして、その約二十年を掛けても、迷宮の深層に辿り着くことができないどころか、新たな階層を開くのさえ他人の尻馬に乗っただけという体たらく。
さらに言えば、開いた階層から現れた魔獣王を倒したのも自分達ではなかったのだから、これはもう、笑うことしかできなかった。
幸いな事に、クランのメンバーに死亡者は出なかった。
彼らは探索者ギルドに所属してるような連中とは違う、大事な仲間だ。
クランにダメージがなかった訳ではないが、彼らさえ生きているのなら立て直す事ができる。
しかし……アージェス達にも被害が出てないのが残念だ。
ただ、奴らが何も成さぬままに、ソルトと言う探索者が一人で魔獣王を片付けたという結末には笑った。
いや、表向きには勇者パーティーがやった事になってるんだったか。
「くくくっ」
セイムス達からは、セイムス達と勇者パーティー以外には、六階層に入ったのはソルトと言う青年一人だけだったと言う報告を受けている。
セイムス達は最終的に勇者パーティーと別行動になったらしい。
セイムス達三人だけでは六階層の魔物は厳しく、五階層のレイド部屋で戦い続けて、なんとか生き延びたのだという。後からやってきたゴードンの力も必要だった為、女侍を勝手に解放したことは不問にして受け入れたのだそうだ。
それから二日後、唐突に魔物が湧かなくなったことで、魔獣王が討伐された事を知ったのだと言う。
さらに二日後、六階層から上がってきた勇者パーティーと合流し、そして四階層から降りてきたアージェス達に捕まった、と。
その場にはソルトはおらず、魔獣王は勇者パーティーが倒したのだと報告があったそうだ。
セイムス達は保釈金で解放した。
安くはなかったが、金で済んだのは簡単で良かった。
サウススフィアの街の受けたダメージがあまりにも大きかった為、街もギルドも金が必要だったんだろう。
ギルドからは魔物の大量発生が終わったことと、勇者マサキが率いるブレイカーズがその為に活躍したのだと言う発表があった。
だが、それを表するようなイベントも特に催されないままに、勇者パーティーは賢者だけを街に残して、街の復興作業も手伝わずに聖王国へと帰って行った。
それから暫くして、一階層の北側に巨大な安全地帯ができたのだが、そこの一等地に真っ先に建ったクランハウスのオーナーがソルトだった。
誰がどう見ても、真の功労者が誰なのかは分かる話だった。
メールスフィアの迷宮の五階層の開放時に、魔竜王とやらが現れたそうだ。その討伐の際にパーティーの全滅を回避する為に、ミザーリはその命をかけたのだと聞いた。
ミザーリをここに縛り付けてしまったのは自分だ。
聖刻のせいで、迷宮踏破の妨げになる魔物の討伐に行かざるを得なかったのだろう。
元は自分の受けた呪いだ。あの気持ちの悪い、自分の意志を強制的に捻じ曲げるような感覚はまだ覚えている。
カザミネは、迷宮に戻ったら、ミザーリから聖刻を自分に分配するつもりでいた。それが叶わなくなった今、カザミネにできる事は、彼に移してしまった呪いの続きを引き継ぐことくらいだった。
だが、ミザーリがパーティーを組んでいた者達は、その殆どが迷宮の一階層にできた安全地帯か、外街で生活していることが分かった。
カザミネにとって、それは許せないことだった。
ミザーリに守ってもらった命を、探索者を辞めることで永らえさせるなど……英雄の名声も功績も公開されることは無かった為、迷宮の危機を救ったミザーリの名前を知る者はほとんどいない。
そんなのは可哀想だ。
ミザーリがあまりにも可哀想だ。
探索者ギルドを立ち上げて、ギルドハウスから出てこない臆病なアージェス。
大量の魔晶石を自分の国に持ち帰ったまま戻らないクソ侍ヤヨイ。
迷宮内に自宅を構え、引き籠もって研究を続けているという精霊弓術士のミスト。
外街の長となり、安全な高い塔の上から人を見下ろしているダルダロイ。
迷宮の安全な階層でレイドモンスターの素材狙いばかりしている大盾使いのサナム。
カザミネは、ミザーリから魔竜王討伐の名声を与えられたにも関わらず、迷宮探索から逃げ出した人間を調べ上げた。
いつか、こいつらを……
カザミネはクランを立ち上げた。
《暗殺者》や《盗賊》など、響きの良くないスキルのせいで、うまく他人とパーティーを組めない者達に声をかけ、仲間に引き入れていった。
クランの目的は、いつか新たな階層に到達し、迷宮に魔竜王を再臨させることだ。
自分自身は体験していないから分からないのだが、魔竜王が現れた時には、安全地帯と呼ばれる空洞にも魔物が湧き、魔物の湧く数が多くなり、そして魔物が強化されたのだという。
再びそんな現象が起これば、迷宮はまた大騒ぎになるだろう。そうなれば、前回、一時的にでも英雄と呼ばれた者達の名が語られるはずだ。
そうすればミザーリの名も出てくることになるだろう。誰も語らなければ、自分が声を上げてやろう。
安穏と生きている、ミザーリのかつての仲間(の振りをしていた卑怯者)達を引きずり出して、最前線で戦わせてやる。
日常生活を奪われ、魔物がいるこんな変な世界に呼び出され、迷宮で生きることを強いられた自分。
苛立ちに任せ暴れていた自分を見捨てずにいてくれたミザーリ。
彼の存在が、彼の功績が、まるで何もなかったかのように存在し続ける迷宮、街、世界。
そんな事は許せない。
「くくくくくっ……まったく、バカばっかりだな、この世界の奴らは本当に」
そして自分もバカだ。
最早自分もこの馬鹿げた世界の一部だってことなんだろう。それはそうだ。元の世界で生きていた時間より、この世界で生きた時間の方が既に長くなってるのだから。
そして、その約二十年を掛けても、迷宮の深層に辿り着くことができないどころか、新たな階層を開くのさえ他人の尻馬に乗っただけという体たらく。
さらに言えば、開いた階層から現れた魔獣王を倒したのも自分達ではなかったのだから、これはもう、笑うことしかできなかった。
幸いな事に、クランのメンバーに死亡者は出なかった。
彼らは探索者ギルドに所属してるような連中とは違う、大事な仲間だ。
クランにダメージがなかった訳ではないが、彼らさえ生きているのなら立て直す事ができる。
しかし……アージェス達にも被害が出てないのが残念だ。
ただ、奴らが何も成さぬままに、ソルトと言う探索者が一人で魔獣王を片付けたという結末には笑った。
いや、表向きには勇者パーティーがやった事になってるんだったか。
「くくくっ」
セイムス達からは、セイムス達と勇者パーティー以外には、六階層に入ったのはソルトと言う青年一人だけだったと言う報告を受けている。
セイムス達は最終的に勇者パーティーと別行動になったらしい。
セイムス達三人だけでは六階層の魔物は厳しく、五階層のレイド部屋で戦い続けて、なんとか生き延びたのだという。後からやってきたゴードンの力も必要だった為、女侍を勝手に解放したことは不問にして受け入れたのだそうだ。
それから二日後、唐突に魔物が湧かなくなったことで、魔獣王が討伐された事を知ったのだと言う。
さらに二日後、六階層から上がってきた勇者パーティーと合流し、そして四階層から降りてきたアージェス達に捕まった、と。
その場にはソルトはおらず、魔獣王は勇者パーティーが倒したのだと報告があったそうだ。
セイムス達は保釈金で解放した。
安くはなかったが、金で済んだのは簡単で良かった。
サウススフィアの街の受けたダメージがあまりにも大きかった為、街もギルドも金が必要だったんだろう。
ギルドからは魔物の大量発生が終わったことと、勇者マサキが率いるブレイカーズがその為に活躍したのだと言う発表があった。
だが、それを表するようなイベントも特に催されないままに、勇者パーティーは賢者だけを街に残して、街の復興作業も手伝わずに聖王国へと帰って行った。
それから暫くして、一階層の北側に巨大な安全地帯ができたのだが、そこの一等地に真っ先に建ったクランハウスのオーナーがソルトだった。
誰がどう見ても、真の功労者が誰なのかは分かる話だった。
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