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では
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約束はお昼までだったはずだ。
でも、僕が昼飯の話題を出しても、そろそろ解散の時間ではと直接的な言葉で言ってみても誰にも取り合ってもらえなかった。
現時点で既に六羽のウサギと二頭のカピバラを狩ることができている。
内訳は坂上さんが二羽、熊野君が一羽で僕が三羽だ。
カピバラは山口さんの魔法の練習台になってもらった。多少の経験値にはなっているだろう。たぶん。
あの後、「一人でもウサギ狩れるってホントだったんだ。んじゃ、わたしにも教えて?」と坂上さんに請われたのだけど、僕は別に剣の扱いに詳しいわけではないのでうまく説明ができないでいた。
その代わりに、次に現れたウサギを僕一人で狩って見せた。見て覚えてください。
「フトーさんさ、なんかできそうでできない動きしてんだよね~」
「俺にも参考になったっす。出来そうに見えるのは、きっとフトウさんが簡単そうにやってるからっすよ。でも本当は難しいことしてるから真似できないんす」
「真司すごっ。それそれ、わたしが言いたかったのそれだよ。じゃフトーさん、もー一回やって見せて」
「あ、俺も見たいっす」
「それじゃ皆さんの戦闘訓練にならないんじゃ……」
「見るも修行の内、ってなんかの漫画で言ってたから大丈夫」
「っす」
「ん~、じゃあもう一匹だけ……」
この間に、やることのない山口さんはカピバラを魔法で攻撃して倒していた。ウインドアローという魔法二発で倒せるようだ。
先程の震えはもう治まっているらしい。
野生動物に攻撃されてダメージを受けたんだ。本当ならもっと怖がっててもいいくらいなのに強い人だ。
ちなみに、ウインドアローを二発連続で撃つと結構疲労するらしい。僕が《自由自在》で重い物(自分)を浮かせた時のように、スキルで無理をすると疲れてしまうのはこの世界の共通の仕様のようだ。
まあ、休み休みやってもらえたらいいと思う。
で、僕が三羽目のウサギを倒したあとは、また元のフォーメーションになってウサギが出現する度に戦う、を繰り返していた。
「あの、そろそろ本当に終わりにしませんか? 流石にお腹が空きました」
「元々約束破ったのフトーさんなんだからさ、チャラにするためにも~少し付き合ってよ」
「いや、皆さんが受けたクエストももうクリアできてますし、もう充分じゃないですか?」
「いえ、フトウさんが一人で倒してくれた分はフトウさんの分ですから。でも、昨日の約束も午前中だけお試しでという話でしたしそろそろ終わりにしましょう」
「「え~」」
やっとコツが掴めてきたのに、と坂上さんと熊野君が残念がっていたけど、確かに二人の動きはかなり良くなってきたと思う。あとは三人でもなんとかできるんじゃないかな。
さて。正確な時間は分からないけど、たぶんもう昼の三時を過ぎたくらいだろう。
三人が自分のバッグから弁当を取り出して食べ始めた。
僕はエネルギーバーのような携帯食を取り出して食べる。ボソボソしててあまり美味しくないが今は栄養補給ができればそれでいい。
「それどこで買ったんすか?」
僕は水筒の水を少し飲んでボソボソを流し込む。
「ギルド案内でリーさんに教えてもらった店で買いました。でもあまり美味しくないですね」
「ははっ。でも予備食とか保存食ってそういうもんっすよね。俺も後で買っておくっす」
「ねーねー、フトーさんはこれからギルドとかどうすんの?」
「とりあえずは様子見します」
「冒険者ギルド入っちゃいえばいいじゃん」
「まあ、色々見てからにしますよ」
僕はもうエネルギーバーを食べ終わっていたのだけど、一応、三人が弁当を食べ終えるまで待っていた。
同じエリアでウサギ狩りをしていた他のパーティーの内、二組は既にいなくなっている。帰ってしまったのか他の狩り場に移動したのか。
正直、ここは本当の意味で初心者用の狩場だと思う。動物の出現率が低いし、現れても単体ばかりだ。ウサギは、魔術師の山口さんが攻撃を受けても大怪我には至らないくらいの攻撃力しか持ってないし。
ここで時間をかけてレベルを上げるのが一番安全だろう。
ここでの狩りを勧めている冒険者ギルドは正しいと思う。
「ではそろそろ街に戻りますか」
「……そうですね」
昨日は街への戻るのが遅かった為に門番さんに怒られてしまったからなあ。今日は一人じゃないから大丈夫だと思うけど、夕陽が出るくらいまでには戻りたい。
サイコキネシスとかクレアボヤンスの検証をしたいし、ダンジョンに関する情報も集めてみたいし。
街に戻り、僕は門番に銀貨五枚を支払う。
そこでまた山口さんから小言をもらったのだけど、僕の財布から出してるのだからあまりとやかく言われたくはない。
ともあれ、今日の仮パーティーでの冒険はこれで終わった。
「では、今日はお疲れ様でした」
そう言って、街に入った所でお暇させてもらおうと思ったのだが。
「ちょっと待ってください。まだ今日の反省会が終わってません」
山口さんが訳の分からないことを言い出したのだった。
でも、僕が昼飯の話題を出しても、そろそろ解散の時間ではと直接的な言葉で言ってみても誰にも取り合ってもらえなかった。
現時点で既に六羽のウサギと二頭のカピバラを狩ることができている。
内訳は坂上さんが二羽、熊野君が一羽で僕が三羽だ。
カピバラは山口さんの魔法の練習台になってもらった。多少の経験値にはなっているだろう。たぶん。
あの後、「一人でもウサギ狩れるってホントだったんだ。んじゃ、わたしにも教えて?」と坂上さんに請われたのだけど、僕は別に剣の扱いに詳しいわけではないのでうまく説明ができないでいた。
その代わりに、次に現れたウサギを僕一人で狩って見せた。見て覚えてください。
「フトーさんさ、なんかできそうでできない動きしてんだよね~」
「俺にも参考になったっす。出来そうに見えるのは、きっとフトウさんが簡単そうにやってるからっすよ。でも本当は難しいことしてるから真似できないんす」
「真司すごっ。それそれ、わたしが言いたかったのそれだよ。じゃフトーさん、もー一回やって見せて」
「あ、俺も見たいっす」
「それじゃ皆さんの戦闘訓練にならないんじゃ……」
「見るも修行の内、ってなんかの漫画で言ってたから大丈夫」
「っす」
「ん~、じゃあもう一匹だけ……」
この間に、やることのない山口さんはカピバラを魔法で攻撃して倒していた。ウインドアローという魔法二発で倒せるようだ。
先程の震えはもう治まっているらしい。
野生動物に攻撃されてダメージを受けたんだ。本当ならもっと怖がっててもいいくらいなのに強い人だ。
ちなみに、ウインドアローを二発連続で撃つと結構疲労するらしい。僕が《自由自在》で重い物(自分)を浮かせた時のように、スキルで無理をすると疲れてしまうのはこの世界の共通の仕様のようだ。
まあ、休み休みやってもらえたらいいと思う。
で、僕が三羽目のウサギを倒したあとは、また元のフォーメーションになってウサギが出現する度に戦う、を繰り返していた。
「あの、そろそろ本当に終わりにしませんか? 流石にお腹が空きました」
「元々約束破ったのフトーさんなんだからさ、チャラにするためにも~少し付き合ってよ」
「いや、皆さんが受けたクエストももうクリアできてますし、もう充分じゃないですか?」
「いえ、フトウさんが一人で倒してくれた分はフトウさんの分ですから。でも、昨日の約束も午前中だけお試しでという話でしたしそろそろ終わりにしましょう」
「「え~」」
やっとコツが掴めてきたのに、と坂上さんと熊野君が残念がっていたけど、確かに二人の動きはかなり良くなってきたと思う。あとは三人でもなんとかできるんじゃないかな。
さて。正確な時間は分からないけど、たぶんもう昼の三時を過ぎたくらいだろう。
三人が自分のバッグから弁当を取り出して食べ始めた。
僕はエネルギーバーのような携帯食を取り出して食べる。ボソボソしててあまり美味しくないが今は栄養補給ができればそれでいい。
「それどこで買ったんすか?」
僕は水筒の水を少し飲んでボソボソを流し込む。
「ギルド案内でリーさんに教えてもらった店で買いました。でもあまり美味しくないですね」
「ははっ。でも予備食とか保存食ってそういうもんっすよね。俺も後で買っておくっす」
「ねーねー、フトーさんはこれからギルドとかどうすんの?」
「とりあえずは様子見します」
「冒険者ギルド入っちゃいえばいいじゃん」
「まあ、色々見てからにしますよ」
僕はもうエネルギーバーを食べ終わっていたのだけど、一応、三人が弁当を食べ終えるまで待っていた。
同じエリアでウサギ狩りをしていた他のパーティーの内、二組は既にいなくなっている。帰ってしまったのか他の狩り場に移動したのか。
正直、ここは本当の意味で初心者用の狩場だと思う。動物の出現率が低いし、現れても単体ばかりだ。ウサギは、魔術師の山口さんが攻撃を受けても大怪我には至らないくらいの攻撃力しか持ってないし。
ここで時間をかけてレベルを上げるのが一番安全だろう。
ここでの狩りを勧めている冒険者ギルドは正しいと思う。
「ではそろそろ街に戻りますか」
「……そうですね」
昨日は街への戻るのが遅かった為に門番さんに怒られてしまったからなあ。今日は一人じゃないから大丈夫だと思うけど、夕陽が出るくらいまでには戻りたい。
サイコキネシスとかクレアボヤンスの検証をしたいし、ダンジョンに関する情報も集めてみたいし。
街に戻り、僕は門番に銀貨五枚を支払う。
そこでまた山口さんから小言をもらったのだけど、僕の財布から出してるのだからあまりとやかく言われたくはない。
ともあれ、今日の仮パーティーでの冒険はこれで終わった。
「では、今日はお疲れ様でした」
そう言って、街に入った所でお暇させてもらおうと思ったのだが。
「ちょっと待ってください。まだ今日の反省会が終わってません」
山口さんが訳の分からないことを言い出したのだった。
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