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実は魔法使い
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翌日。
ハワードさんご夫婦と朝食の時間を過ごしたあと、僕は大樹の根のダンジョンに向かった。
新装備であるミスリルスタッフは長くて先がモコッと大きい為、なんだか目立ってるような気がして人目を気にしてしまう。
実際、昨夜はさっそくソードマンのエナさん(?)に指摘されてしまったし。
そう言えば、彼女は熊野君達とは別れて、別の人とパーティーを組んでいると言っていたけど、あそこにいたということは、やはり魔鉱窟のダンジョンに入っているのだろうか。
山口さんは怪我をして休んでいると言っていたし、山口さんと熊野君は二人で支え合う関係になっているようだ。
山口さんは元々魔物に対して腰が引けてたし、このまま熊野君と結婚とかして戦わないで生活できるようになるといいかも知れない。
そんなことを考えながら、僕はさほど綺麗でもない街道を西に歩き続けた。
獣道に入ってしばらくすると、大樹の方から人の声と剣戟の音が聞こえてきた。今日は人がいるようだ。
見つからないように、念の為、獣道から静かに草むらに入る。そしてクレアボヤンスを大樹まで飛ばした。
どこかで見たような顔の三人組がコボルトと格闘していた。どこで見たんだっけか。
「プニル、ちゃんと引き付けておけよ!」
「無理! 二匹も相手できないからっ!」
「ビッキー射線に入ってる! ちゃんと考えて動いてよ!」
「馬っ鹿危ねーなっ! ちゃんと見て撃てよ!」
ああ、思い出した。ウサギ狩りをしてたらどっか行けと言ってきた子達だ。そうか、彼らもウサギ狩りを卒業してこっちに来るようになったんだな。
なんだか苦戦してるようだけど、横取りするなと怒鳴られる未来しか見えないので、面倒だけど草むらの中を移動して、樹の反対側から彼らに見つからないようにダンジョンに入った。
その内、彼らもこのダンジョンに入ってくるんだろうか。
それとも、魔鉱窟ダンジョンに入る為のお金が溜まったらそっちに行くのかな。
実はこの大樹の根のダンジョン、別名が「大根」なんだそうだ。頑張って掘っても出てくるのは大根(そんなに価値のない物)だけというところから付けられた蔑称らしい。
そして、大根を掘る人を大根堀りと呼ぶそうだ。
だから僕は大根堀りだね。
僕はいいんだ。大根は好きだし。
でも、さっきの子達は大根堀りと呼ばれるのは嫌いそうだから、きっとこのダンジョンには入らないだろう。
そういう意味では、大根堀りという呼び名も、それほど悪いものじゃないかなと思う。
僕はまずボスエリアに向かった。
普通サイズ(でも魔物なので五、六十センチはある)のネズミはロックバレットで倒してみた。
ミスリルの杖の効果なのか、連発しても全然疲れないし、石の大きさと射出速度が上がっている気がする。
そして超巨大ネズミとは打撃武器としてミスリルスタッフを使ってみた。
短剣に比べると、少しどころではない重さだけど、両手なら問題なく使うことができる。片手だとまだちょっと厳しいかも知れないけど、レベルが上がれば行けそうな気がした。
ドゴン、ドカンと超巨大ネズミをタコ殴りにして、出てきた宝箱を開く時間に突入だ。
金貨一枚と少し大きめの魔石
金貨一枚でも、身分証があれば宿屋で一週間は暮らせるわけだから、悪くはない収入のはずだ。
うん。
僕はボス敵が出てきたこの大きな空洞でしばらく練習をすることにした。
具体的には腰に横向きに差した短剣を抜く練習だ。
咄嗟の動きとして、左の腰にぶら下げていた短剣を抜く動作が体に染み付いてしまっているので、それを腰の後ろ側に、右側から飛び出している柄を掴んで抜くという動きに変えないといけない。
まあ、いざとなったらアポートで手元に呼び出せばいいんだけと、今更だけど、一応、超能力のことは大っぴらにしたくないし。
三十分くらいの練習をすると、スムーズに短剣を抜けるようになった。
それから、ネルさんが持たせてくれたお弁当をありがたく頂いた。
そこでハタと気が付いた。
ボスがリポップしない。
そう言えば、地下二階に行った帰りも超巨大ネズミは復活していなかった。
ボスキャラはどのタイミングで復活するんだろうか。今度、検証が必要かもしれないな。
僕は地下二階に移動し、地下一階よりも少し強いコボルト連中とスタッフで戦った。魔物の数が多いと、スタッフが重いせいで少し苦戦するけど、そこはロックバレットも使いながらで戦うことにした。
そして、その組み合わせはかなり楽なことが分かった。
サイコキネシスとアポートの組み合わせとほぼ遜色ない。
もちろん、サイコキネシスは飛ばした石やナイフの軌道を簡単に変えられるし、なんなら空中で停止させてから急発進させることもできる優れものだ。どっちが上かと聞かれたら、間違いなくサイコキネシスに軍配が上がる。
でも、魔法もなかなか使い勝手がいいのだ。
これは……僕はソードマンじゃなくて、実は魔法使いだったってことにするのはどうだろうか。
魔法使いなら、たまにサイコキネシスを使っても全然ごまかせるんじゃないか?
うん、そうだ。ソードマンということに拘るよりも、魔法使いだったと方向転換してしまおう。
ハワードさんご夫婦と朝食の時間を過ごしたあと、僕は大樹の根のダンジョンに向かった。
新装備であるミスリルスタッフは長くて先がモコッと大きい為、なんだか目立ってるような気がして人目を気にしてしまう。
実際、昨夜はさっそくソードマンのエナさん(?)に指摘されてしまったし。
そう言えば、彼女は熊野君達とは別れて、別の人とパーティーを組んでいると言っていたけど、あそこにいたということは、やはり魔鉱窟のダンジョンに入っているのだろうか。
山口さんは怪我をして休んでいると言っていたし、山口さんと熊野君は二人で支え合う関係になっているようだ。
山口さんは元々魔物に対して腰が引けてたし、このまま熊野君と結婚とかして戦わないで生活できるようになるといいかも知れない。
そんなことを考えながら、僕はさほど綺麗でもない街道を西に歩き続けた。
獣道に入ってしばらくすると、大樹の方から人の声と剣戟の音が聞こえてきた。今日は人がいるようだ。
見つからないように、念の為、獣道から静かに草むらに入る。そしてクレアボヤンスを大樹まで飛ばした。
どこかで見たような顔の三人組がコボルトと格闘していた。どこで見たんだっけか。
「プニル、ちゃんと引き付けておけよ!」
「無理! 二匹も相手できないからっ!」
「ビッキー射線に入ってる! ちゃんと考えて動いてよ!」
「馬っ鹿危ねーなっ! ちゃんと見て撃てよ!」
ああ、思い出した。ウサギ狩りをしてたらどっか行けと言ってきた子達だ。そうか、彼らもウサギ狩りを卒業してこっちに来るようになったんだな。
なんだか苦戦してるようだけど、横取りするなと怒鳴られる未来しか見えないので、面倒だけど草むらの中を移動して、樹の反対側から彼らに見つからないようにダンジョンに入った。
その内、彼らもこのダンジョンに入ってくるんだろうか。
それとも、魔鉱窟ダンジョンに入る為のお金が溜まったらそっちに行くのかな。
実はこの大樹の根のダンジョン、別名が「大根」なんだそうだ。頑張って掘っても出てくるのは大根(そんなに価値のない物)だけというところから付けられた蔑称らしい。
そして、大根を掘る人を大根堀りと呼ぶそうだ。
だから僕は大根堀りだね。
僕はいいんだ。大根は好きだし。
でも、さっきの子達は大根堀りと呼ばれるのは嫌いそうだから、きっとこのダンジョンには入らないだろう。
そういう意味では、大根堀りという呼び名も、それほど悪いものじゃないかなと思う。
僕はまずボスエリアに向かった。
普通サイズ(でも魔物なので五、六十センチはある)のネズミはロックバレットで倒してみた。
ミスリルの杖の効果なのか、連発しても全然疲れないし、石の大きさと射出速度が上がっている気がする。
そして超巨大ネズミとは打撃武器としてミスリルスタッフを使ってみた。
短剣に比べると、少しどころではない重さだけど、両手なら問題なく使うことができる。片手だとまだちょっと厳しいかも知れないけど、レベルが上がれば行けそうな気がした。
ドゴン、ドカンと超巨大ネズミをタコ殴りにして、出てきた宝箱を開く時間に突入だ。
金貨一枚と少し大きめの魔石
金貨一枚でも、身分証があれば宿屋で一週間は暮らせるわけだから、悪くはない収入のはずだ。
うん。
僕はボス敵が出てきたこの大きな空洞でしばらく練習をすることにした。
具体的には腰に横向きに差した短剣を抜く練習だ。
咄嗟の動きとして、左の腰にぶら下げていた短剣を抜く動作が体に染み付いてしまっているので、それを腰の後ろ側に、右側から飛び出している柄を掴んで抜くという動きに変えないといけない。
まあ、いざとなったらアポートで手元に呼び出せばいいんだけと、今更だけど、一応、超能力のことは大っぴらにしたくないし。
三十分くらいの練習をすると、スムーズに短剣を抜けるようになった。
それから、ネルさんが持たせてくれたお弁当をありがたく頂いた。
そこでハタと気が付いた。
ボスがリポップしない。
そう言えば、地下二階に行った帰りも超巨大ネズミは復活していなかった。
ボスキャラはどのタイミングで復活するんだろうか。今度、検証が必要かもしれないな。
僕は地下二階に移動し、地下一階よりも少し強いコボルト連中とスタッフで戦った。魔物の数が多いと、スタッフが重いせいで少し苦戦するけど、そこはロックバレットも使いながらで戦うことにした。
そして、その組み合わせはかなり楽なことが分かった。
サイコキネシスとアポートの組み合わせとほぼ遜色ない。
もちろん、サイコキネシスは飛ばした石やナイフの軌道を簡単に変えられるし、なんなら空中で停止させてから急発進させることもできる優れものだ。どっちが上かと聞かれたら、間違いなくサイコキネシスに軍配が上がる。
でも、魔法もなかなか使い勝手がいいのだ。
これは……僕はソードマンじゃなくて、実は魔法使いだったってことにするのはどうだろうか。
魔法使いなら、たまにサイコキネシスを使っても全然ごまかせるんじゃないか?
うん、そうだ。ソードマンということに拘るよりも、魔法使いだったと方向転換してしまおう。
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