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魔法の本は
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翌日。
朝食を食べ終えた僕はさっそくダンジョン攻略ギルドに行ってみた。
なんだかギルド内が少し慌しいようだけど、僕はカウンターに行って魔石を十個を渡し、その代わりに大銀貨二枚を貰う。
そしてギフに質問をしてみた。
「魔法に関してまてめてある本とかないですかね」
ギフは一瞬「ん?」と言う顔を見せたあと、「ようやっと本当のスキルを言う気になったか」と言った。
「いやいや。魔法がある世界に来たんだから、どんな魔法があるか知っておきたくて」
「魔術師用の杖を買ったって話を聞いたぞ」
僕の適当な言い訳は、食い気味に返されてしまった。
相変わらずギルドに情報が流れるのが早い。今もまだ見張られてるんじゃないかと少し心配になる。
「別につけてた訳じゃねえぞ? ナーグマンの店の前で杖を持ったお前さんが女の子とイチャイチャしてたのを見た奴がいんだよ」
「イチャイチャはしてないと思いますが……」
「あんま若え子を泣かすなよ? ガハハハハハハッ」
「はぁ……まあいいです。それで魔法関連の本とかってありますか?」
「あるぜ?」
「おお」
「でも、それはギルドメンバーにしか見せられねえんだわ。悪いな」
「あー、確かにそういうものかも知れないですね」
この世界でスキルや魔法が使えるのは、基本的に闘士だけなのだと聞いている。
この世界の人達も、かなりの努力の末にスキルを手に入れられることもあるらしいけど、多くの人はスキルなんて無縁のものらしい。
この世界にもダンジョンに入る人はいるし、冒険も戦争もする。それは僕らの元の世界でのことと同じだ。
例えば空手やボクシング、プロレスラーになって戦ってる人達だって、スキルなんかなくても努力の末に一般人とは比べ物にならないくらいに強くなっていた。
つまり、スキルなどなくても強くも賢くもなれるのだ。
ただ、スキルや魔法は強力だ。
訓練して強くなったレベルの人でも、スキルを持つ初心者に敵わないこともあるらしい。
それはこの世界の人にとって理不尽な話だろう。
でも、この世界に強制的に呼び出されてしまい、闘士などと呼ばれる僕らは僕らで、理不尽を感じているのだ。ということで、そこはおあいこというか、なんというか、色々と理解して納得してほしい。
あれ、なんの話だったっけか。
「大丈夫か? まあうちに入れば見れるんだ。簡単な話だろ?」
あ、そうだ。魔法関連の本は僕は読めないという話だったか。
「ですね。ではその時に見させてもらうことにします。じゃあ今日はこれで……」
そう言って、立ち上がった時だった。
ギルドのドアがバタンと大きな音を立てて開け放たれた。
「み、見つかったぞ! 西の街道にいたっ!」
「見つかったか! よくやった。それであいつらは大丈夫なのか!?」
「ああ、プニルが目と肩をやられてるがビッキーと高山は大丈夫そうだ」
「プニルは結構やられちまったみてえだな、おい」
「まだ生きてるから大丈夫」
「そうか……まあ、生きてて何よりだな」
ビッキーとプニルという単語は昨日聞いたな。西の街道ってことはやっぱり大樹のとこでコボルトと戦ってた子達か。
僕は昨日の夜は、斜めの獣道の方を低空飛行で飛んで帰ったから、休んでいる彼らに出会わなかったのかも知れない。
最近、自分の体重(+装備)くらいなら長時間サイコキネシスで飛ぶことができるようになったので、月明かりの少ない夜は、訓練を兼ねて目立たないように空中を飛ぶようにしているのだ。
ダンジョンの中から自分の部屋に置いてある水筒をアポートで取り寄せることも疲れずにできるようになったし、超能力は使えば使うほどに便利になってきてる。
あ、違う。また考えが脱線してしまった。
あの三人にはあまりいい印象がないけど、袖擦れ合ってしまったからなあ。貰い事故みたいな出会いだったけど。
「今はどこにいる?」
「プニルはこっちに運んでるところだ。ビッキーと高山はそれぞれの部屋に戻らせた」
「そうか。じゃあ今ダンジョンに入ってないヒーラーを……いや、阿鳥は上にいるか?」
「あたしはア・ト・リだって言ってんでしょ、ギフのおっちゃん」
カウンターの奥にある階段から誰か降りてきたようだ。声は女の子のようだ。
「おお、コトリ、怪我人が来るから準備しといてくれ」
「だ~から、アトリだっつーの。面倒くせえ」
ギルド内は相変わらず蝋燭の炎だけで薄暗いのでよく見えないが、随分と薄着の女の子……ん~、声は若いけど見た目は僕と同い年くらいかな。まあ、そんな女性のようだ。
話の流れからすると、この女性はヒーラー(回復職)なのかも知れない。自分の使うヒールと違いがないか気になるし、少しは関わった子の治療なので、このまま見届けさせてもらおう。
ギルド内のテーブルと椅子が壁に寄せられて(僕も手伝った)、室内が明るく照らされる。空いたスペースにベッドが準備されたところで再びドアが開いた。
朝食を食べ終えた僕はさっそくダンジョン攻略ギルドに行ってみた。
なんだかギルド内が少し慌しいようだけど、僕はカウンターに行って魔石を十個を渡し、その代わりに大銀貨二枚を貰う。
そしてギフに質問をしてみた。
「魔法に関してまてめてある本とかないですかね」
ギフは一瞬「ん?」と言う顔を見せたあと、「ようやっと本当のスキルを言う気になったか」と言った。
「いやいや。魔法がある世界に来たんだから、どんな魔法があるか知っておきたくて」
「魔術師用の杖を買ったって話を聞いたぞ」
僕の適当な言い訳は、食い気味に返されてしまった。
相変わらずギルドに情報が流れるのが早い。今もまだ見張られてるんじゃないかと少し心配になる。
「別につけてた訳じゃねえぞ? ナーグマンの店の前で杖を持ったお前さんが女の子とイチャイチャしてたのを見た奴がいんだよ」
「イチャイチャはしてないと思いますが……」
「あんま若え子を泣かすなよ? ガハハハハハハッ」
「はぁ……まあいいです。それで魔法関連の本とかってありますか?」
「あるぜ?」
「おお」
「でも、それはギルドメンバーにしか見せられねえんだわ。悪いな」
「あー、確かにそういうものかも知れないですね」
この世界でスキルや魔法が使えるのは、基本的に闘士だけなのだと聞いている。
この世界の人達も、かなりの努力の末にスキルを手に入れられることもあるらしいけど、多くの人はスキルなんて無縁のものらしい。
この世界にもダンジョンに入る人はいるし、冒険も戦争もする。それは僕らの元の世界でのことと同じだ。
例えば空手やボクシング、プロレスラーになって戦ってる人達だって、スキルなんかなくても努力の末に一般人とは比べ物にならないくらいに強くなっていた。
つまり、スキルなどなくても強くも賢くもなれるのだ。
ただ、スキルや魔法は強力だ。
訓練して強くなったレベルの人でも、スキルを持つ初心者に敵わないこともあるらしい。
それはこの世界の人にとって理不尽な話だろう。
でも、この世界に強制的に呼び出されてしまい、闘士などと呼ばれる僕らは僕らで、理不尽を感じているのだ。ということで、そこはおあいこというか、なんというか、色々と理解して納得してほしい。
あれ、なんの話だったっけか。
「大丈夫か? まあうちに入れば見れるんだ。簡単な話だろ?」
あ、そうだ。魔法関連の本は僕は読めないという話だったか。
「ですね。ではその時に見させてもらうことにします。じゃあ今日はこれで……」
そう言って、立ち上がった時だった。
ギルドのドアがバタンと大きな音を立てて開け放たれた。
「み、見つかったぞ! 西の街道にいたっ!」
「見つかったか! よくやった。それであいつらは大丈夫なのか!?」
「ああ、プニルが目と肩をやられてるがビッキーと高山は大丈夫そうだ」
「プニルは結構やられちまったみてえだな、おい」
「まだ生きてるから大丈夫」
「そうか……まあ、生きてて何よりだな」
ビッキーとプニルという単語は昨日聞いたな。西の街道ってことはやっぱり大樹のとこでコボルトと戦ってた子達か。
僕は昨日の夜は、斜めの獣道の方を低空飛行で飛んで帰ったから、休んでいる彼らに出会わなかったのかも知れない。
最近、自分の体重(+装備)くらいなら長時間サイコキネシスで飛ぶことができるようになったので、月明かりの少ない夜は、訓練を兼ねて目立たないように空中を飛ぶようにしているのだ。
ダンジョンの中から自分の部屋に置いてある水筒をアポートで取り寄せることも疲れずにできるようになったし、超能力は使えば使うほどに便利になってきてる。
あ、違う。また考えが脱線してしまった。
あの三人にはあまりいい印象がないけど、袖擦れ合ってしまったからなあ。貰い事故みたいな出会いだったけど。
「今はどこにいる?」
「プニルはこっちに運んでるところだ。ビッキーと高山はそれぞれの部屋に戻らせた」
「そうか。じゃあ今ダンジョンに入ってないヒーラーを……いや、阿鳥は上にいるか?」
「あたしはア・ト・リだって言ってんでしょ、ギフのおっちゃん」
カウンターの奥にある階段から誰か降りてきたようだ。声は女の子のようだ。
「おお、コトリ、怪我人が来るから準備しといてくれ」
「だ~から、アトリだっつーの。面倒くせえ」
ギルド内は相変わらず蝋燭の炎だけで薄暗いのでよく見えないが、随分と薄着の女の子……ん~、声は若いけど見た目は僕と同い年くらいかな。まあ、そんな女性のようだ。
話の流れからすると、この女性はヒーラー(回復職)なのかも知れない。自分の使うヒールと違いがないか気になるし、少しは関わった子の治療なので、このまま見届けさせてもらおう。
ギルド内のテーブルと椅子が壁に寄せられて(僕も手伝った)、室内が明るく照らされる。空いたスペースにベッドが準備されたところで再びドアが開いた。
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