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救出できない
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「ごちそうさまでした」
僕はカウンターに食べ終えた食器を持っていき、ハワードさんとネルさんに声をかけた。
そして、「ちょっと出かけてきます」と言って用意してたバックパックなどを手に持って外に出た。
……出ようとした。
「それはないんじゃないの~?」
そう言って僕を後からスリーパーホールドしてくるエナ。
「あ、エナはまたそういうことを!」
と言って、僕の前に回り込んできて意味もなく抱き着くリン。
「あの、ここは食堂なのでこういうのは辞めてほしいんですが……」
「フトウくん、モテモテやな」
「おう、ハワードさん、フトウくん女っ気がないと思ってたけど安心だなぁ」
店にいる常連さんにいじられ、僕はお騒がせしてすみませんと謝りつつ、そういうのじゃないですと断りを入れておく。
「いえ、そーゆーのですからっ!」
「それは私が! なのです!」
「場所を弁えないで騒ぐのは嫌いです」
バッと離れる二人。なんなんだいったい。
「フトー、悪いんだがこの子の話をちょっと聞いてやってほしい」
「僕にメリットは?」
「エナとこの子、それと熊野真司ってなあお前と同じ境遇なんだろ?」
僕は、はぁ、と溜息を吐く。
「境遇だけで言ったらギフもリンも一緒でしょう? 何故、僕を巻き込もうとするんですか」
「だから俺もリンも、もちろんエナも巻き込まれてんだろ。お前さんだけじゃねえよ」
「あの……巻き込んでしまって……すみません。でもフトウさん、ちょっと話を聞いてもらえないでしょうか」
あ、思い出した。この人は山口さんだ。危ない危ない。さっき聞こえてきたキョウコさん呼びをするところだった。
「さっき皆さんが隣で話していたことなら聞こえてましたよ。熊野くんが熊野くんの意志で男爵のパーティーに入ったという話でしょう?」
「はい」
僕は彼女の次の言葉を待った。
こっちが主導して話すことじゃないし。
「その……真司くんとは何もなかったんです。でも、彼、私のことを凄く心配してくれてて、ずっと助けてくれてて……だから今度は彼を助けたいんです」
うん。助ければいいんじゃないだろうか。
助ける、というのがどういうものなのかがいまいち分からないけど。
「あの、男爵のところにいた人が、ダンジョンで沢山死んでしまったみたいなんです。だから、あのパーティーにいたら危ないかなって……」
でも、その分の待遇は受けるんだよね、たぶん。
自ら望んで危険手当ありの仕事を選んだんだから、危ないのは仕方ないのでは?
強制されたんならともかく、この間のカゴシマって人の勧誘の仕方を思い出す限り、たぶん無理強いはしてないんだろうし。
「だから、真司くんを男爵のパーティーから抜け出させたいんです。それを手伝ってもらえないでしょうか?」
「ギフ……なんで教えてあげないんですか? 知ってるんでしょう?」
「ん、ああ……」
「知ってるって、なんの話ですか?」
「男爵の所に居る人達は、たぶん自分の意志でパーティーを抜けることができません」
「「「えっ!?」」」
山口さん、リン、エナが声を上げた。
なんでリンも驚いてるんだよ。エナが驚くのはなんとなく分かるけど。
「僕はこの間、レンゲさんという人と少し話す機会があったんですけど、彼女は男爵の所で働くのは嫌みたいでしたが、抜けることができないような雰囲気でしたよ」
「《契約》ってやつだ」
「契約?」
「ああ、男爵の所にいる奴は、男爵と契約をしてるばずだ。契約っつうか、悪く言やあ望む報酬と引き換えの奴隷契約だな」
召喚された混乱の中、ハズレと真逆の高待遇を受け、追放後の不安を煽り、高レアなスキルを持ち上げに持ち上げた上で、男爵の支配下でダンジョンチャレンジをして欲しいと頼まれる。
報酬としては、ダンジョン探索で得たお金の分配、贅沢な衣食住の確保、必要であれば女や男の提供などがあると持ちかけられるそうだ。
正常な判断を下しようがない状況の中で、ほぼ全員がその契約に頷いてしまうのだという。
契約は男爵の持つスキルによって行われ、契約者は自分の意志で解約することができなくなる。
これはギフが男爵のところいる人から聞いた話だそうだ。ギフも男爵のところにいる人を助けたくて動いたことがあるらしい。
「スキルとしてはハズレと言われても、この世界に呼ばれた奴の中じゃマシな方なんだよ、俺らはよ」
「と言うことは」
「俺らじゃあ助けられねえ」
「そんな……」
「あのバカ真司……」
いや、どう考えても、この話、僕いらなかったでしょ。
「だがな。男爵パーティーと一緒にダンジョンに入れば、何かあった時に助けてやることはできるかも知れねえ」
僕はギルドカードを持ってないから関係ない話だな。
「だからよ、フトー。お前さん、やっぱりうちのギルドに入らねえか?」
嫌だよ。
僕はカウンターに食べ終えた食器を持っていき、ハワードさんとネルさんに声をかけた。
そして、「ちょっと出かけてきます」と言って用意してたバックパックなどを手に持って外に出た。
……出ようとした。
「それはないんじゃないの~?」
そう言って僕を後からスリーパーホールドしてくるエナ。
「あ、エナはまたそういうことを!」
と言って、僕の前に回り込んできて意味もなく抱き着くリン。
「あの、ここは食堂なのでこういうのは辞めてほしいんですが……」
「フトウくん、モテモテやな」
「おう、ハワードさん、フトウくん女っ気がないと思ってたけど安心だなぁ」
店にいる常連さんにいじられ、僕はお騒がせしてすみませんと謝りつつ、そういうのじゃないですと断りを入れておく。
「いえ、そーゆーのですからっ!」
「それは私が! なのです!」
「場所を弁えないで騒ぐのは嫌いです」
バッと離れる二人。なんなんだいったい。
「フトー、悪いんだがこの子の話をちょっと聞いてやってほしい」
「僕にメリットは?」
「エナとこの子、それと熊野真司ってなあお前と同じ境遇なんだろ?」
僕は、はぁ、と溜息を吐く。
「境遇だけで言ったらギフもリンも一緒でしょう? 何故、僕を巻き込もうとするんですか」
「だから俺もリンも、もちろんエナも巻き込まれてんだろ。お前さんだけじゃねえよ」
「あの……巻き込んでしまって……すみません。でもフトウさん、ちょっと話を聞いてもらえないでしょうか」
あ、思い出した。この人は山口さんだ。危ない危ない。さっき聞こえてきたキョウコさん呼びをするところだった。
「さっき皆さんが隣で話していたことなら聞こえてましたよ。熊野くんが熊野くんの意志で男爵のパーティーに入ったという話でしょう?」
「はい」
僕は彼女の次の言葉を待った。
こっちが主導して話すことじゃないし。
「その……真司くんとは何もなかったんです。でも、彼、私のことを凄く心配してくれてて、ずっと助けてくれてて……だから今度は彼を助けたいんです」
うん。助ければいいんじゃないだろうか。
助ける、というのがどういうものなのかがいまいち分からないけど。
「あの、男爵のところにいた人が、ダンジョンで沢山死んでしまったみたいなんです。だから、あのパーティーにいたら危ないかなって……」
でも、その分の待遇は受けるんだよね、たぶん。
自ら望んで危険手当ありの仕事を選んだんだから、危ないのは仕方ないのでは?
強制されたんならともかく、この間のカゴシマって人の勧誘の仕方を思い出す限り、たぶん無理強いはしてないんだろうし。
「だから、真司くんを男爵のパーティーから抜け出させたいんです。それを手伝ってもらえないでしょうか?」
「ギフ……なんで教えてあげないんですか? 知ってるんでしょう?」
「ん、ああ……」
「知ってるって、なんの話ですか?」
「男爵の所に居る人達は、たぶん自分の意志でパーティーを抜けることができません」
「「「えっ!?」」」
山口さん、リン、エナが声を上げた。
なんでリンも驚いてるんだよ。エナが驚くのはなんとなく分かるけど。
「僕はこの間、レンゲさんという人と少し話す機会があったんですけど、彼女は男爵の所で働くのは嫌みたいでしたが、抜けることができないような雰囲気でしたよ」
「《契約》ってやつだ」
「契約?」
「ああ、男爵の所にいる奴は、男爵と契約をしてるばずだ。契約っつうか、悪く言やあ望む報酬と引き換えの奴隷契約だな」
召喚された混乱の中、ハズレと真逆の高待遇を受け、追放後の不安を煽り、高レアなスキルを持ち上げに持ち上げた上で、男爵の支配下でダンジョンチャレンジをして欲しいと頼まれる。
報酬としては、ダンジョン探索で得たお金の分配、贅沢な衣食住の確保、必要であれば女や男の提供などがあると持ちかけられるそうだ。
正常な判断を下しようがない状況の中で、ほぼ全員がその契約に頷いてしまうのだという。
契約は男爵の持つスキルによって行われ、契約者は自分の意志で解約することができなくなる。
これはギフが男爵のところいる人から聞いた話だそうだ。ギフも男爵のところにいる人を助けたくて動いたことがあるらしい。
「スキルとしてはハズレと言われても、この世界に呼ばれた奴の中じゃマシな方なんだよ、俺らはよ」
「と言うことは」
「俺らじゃあ助けられねえ」
「そんな……」
「あのバカ真司……」
いや、どう考えても、この話、僕いらなかったでしょ。
「だがな。男爵パーティーと一緒にダンジョンに入れば、何かあった時に助けてやることはできるかも知れねえ」
僕はギルドカードを持ってないから関係ない話だな。
「だからよ、フトー。お前さん、やっぱりうちのギルドに入らねえか?」
嫌だよ。
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