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森の熊さん
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「お~。やっぱフトーさん凄いね」
「です」
何故か狩りに付いてきたエナとリン。
二人が付いてきてるのにテレポートする訳にも行かず、普通に早歩きで狩りのできる森まで移動した。
歩くスピードを早くしたおかげか、付いてくるのが必死だったのか特に話しかけられなかったのは良かった。
ただ、僕がミスリル三節棍で猪を倒すと同時に二人は話し始めた。
とりあえず猪を倒すまでは黙ってくれてたからいいんだけど。
「フトーさんさ~、そんな強いんだから魔鉱窟ダンジョンの攻略目指そうよ~」
「いや、だから寄りかからないでください」
いい加減慣れたけど、背中に抱きついてきて胸を押し付けるのは辞めてほしい。無邪気にやってくるけど、その胸は凶器だ。普通の反応を続けるのもなかなか難しいんだ。
「だから! エナは抱き着くんじゃないのですっ!」
ッパーン!!
「痛った~~~いっ!」
いい音が森に響き渡り、エナの悲鳴が上がる。
リンに尻を叩かれたエナが、身体を仰け反らせて僕の背中から離れた。
それから暫く、エナとリンがピーピーギャーギャー言い出した為、もう狩りどころではなくなってしまった。近くには猪や鹿はもちろん、鳥や兎を始めとした動物全部が逃げ出してしまっただろうから。
まあ、もう猪が狩れてるからいいんだけど。
でも他にも狩りに来てる人がいたら恨まれるだろうな。それも僕が悪い訳じゃないからいいけど。
僕は二人のやり取りに呆れつつ、猪を持ってきた台車に乗せて帰り支度を始める。
あとで「うるさくしてごめん」と謝られたけど、僕は不機嫌を装って返事をせずに森の中を歩いた。
ホント、こんな嫌な男のどこがいいんだろうね、この二人は。
でだ。
獣はいなくなったんだけど、レーダーとクレアボヤンスにはこちらに駆け寄ってくる熊の魔物の姿が映っていた。
どうやら騒ぎ過ぎて魔物を呼び寄せてしまったようだ。
どうするかな。
「君らの声が魔物を呼んだっぽい」
僕は正直に伝えることにした。
「えっごめん」
「ホントですか!?」
二人はすぐに警戒モードに入った。ふざけててもチャレンジャーとしての動きは身に付いているようだ。
「どっちから?」
「索敵に成功したら仲間に伝えるもんなのですよ」
仲間ねぇ。
「足音的に右後方からかな」
足音というか、草を雑にガサガサと掻き分ける音と、魔物のガウガウいうような声が後ろの方から近付いて来ているから、流石に彼女達にももう聞こえてるんじゃないかと思うんだけど。
この熊は、二人が以前のままだったら厳しいかな。
前にもここで魔物の熊(魔物化した熊?)を倒したことがあるけど、その時に手に入った魔石はコボルトの二倍くらいの大きさがあった。コボルトの二倍というとコボルトファイターとコボルトナイトの間くらいの強さがあるんじゃないかと思う。
「ガゥワォ!!」
「きゃっ!」
「でっか!」
木と木の間から枝をボキボキ折りながら現れた熊は、「見つけた!」とでも言うように吠えた。
目がバキバキに開いてて、口からは大量のよだれが飛び散っている。その見た目は軽くホラーゲームだけど、見慣れれば「またこいつか」くらいの存在ではある。
「……■■■■ウインドアロー!」
リンの周りに、圧縮された空気の矢が十本も現れた。その内の二本だけが熊の顔と胸に飛んでいき、熊の注意がリンの残りの矢に向く。
「スラッシュ!」
エナが熊の左後ろ脚を長剣で切りつける。バシュッという音と共に、熊の脚にダメージが入ったエフェクトが出て、熊がさらに吠えた。
その開いた口に三本、左後ろ脚に五本の空気の矢が突き刺さっては弾けて消えていく。
二人共強くなってるな。
レベルが上がってるだけじゃなくて、戦い方もスキルの使い方も、前よりも洗練されている感じだ。
基本的にエナが敵の攻撃を回避しているけど、二人が交互に攻撃を仕掛けることで、熊の狙いが二人のどちらかに絞られることがないように調整しているみたいだ。つまり、敵意管理ってやつがちゃんとできているようだ。
ただ、ちょっと威力が足りてないかも知れない。
「フトー、何見てるんですか! 手伝ってくださいなのです!」
この熊がここに来た原因は君らなんだけどね。自分のケツは……あ、女の子に使う言葉じゃないか。
僕はストーンバレットを熊の左後ろ脚、既にダメージを与えてる箇所と膝に向けて飛ばした。石は二つとも貫通していった。
片膝が駄目になった熊は前脚を地面に下ろした。
手の届く位置に来たその頭に、エナの連撃が打ち込まれる。
でも倒しきれない。
「フトーさん!」
仕方ない、もう少し手伝うか。僕はミスリル三節棍をフレイル状にして、熊の横から胴体の真上に叩きつけた。
その後、エナとリンの攻撃が一撃ずつ入って熊は消えていった。
「です」
何故か狩りに付いてきたエナとリン。
二人が付いてきてるのにテレポートする訳にも行かず、普通に早歩きで狩りのできる森まで移動した。
歩くスピードを早くしたおかげか、付いてくるのが必死だったのか特に話しかけられなかったのは良かった。
ただ、僕がミスリル三節棍で猪を倒すと同時に二人は話し始めた。
とりあえず猪を倒すまでは黙ってくれてたからいいんだけど。
「フトーさんさ~、そんな強いんだから魔鉱窟ダンジョンの攻略目指そうよ~」
「いや、だから寄りかからないでください」
いい加減慣れたけど、背中に抱きついてきて胸を押し付けるのは辞めてほしい。無邪気にやってくるけど、その胸は凶器だ。普通の反応を続けるのもなかなか難しいんだ。
「だから! エナは抱き着くんじゃないのですっ!」
ッパーン!!
「痛った~~~いっ!」
いい音が森に響き渡り、エナの悲鳴が上がる。
リンに尻を叩かれたエナが、身体を仰け反らせて僕の背中から離れた。
それから暫く、エナとリンがピーピーギャーギャー言い出した為、もう狩りどころではなくなってしまった。近くには猪や鹿はもちろん、鳥や兎を始めとした動物全部が逃げ出してしまっただろうから。
まあ、もう猪が狩れてるからいいんだけど。
でも他にも狩りに来てる人がいたら恨まれるだろうな。それも僕が悪い訳じゃないからいいけど。
僕は二人のやり取りに呆れつつ、猪を持ってきた台車に乗せて帰り支度を始める。
あとで「うるさくしてごめん」と謝られたけど、僕は不機嫌を装って返事をせずに森の中を歩いた。
ホント、こんな嫌な男のどこがいいんだろうね、この二人は。
でだ。
獣はいなくなったんだけど、レーダーとクレアボヤンスにはこちらに駆け寄ってくる熊の魔物の姿が映っていた。
どうやら騒ぎ過ぎて魔物を呼び寄せてしまったようだ。
どうするかな。
「君らの声が魔物を呼んだっぽい」
僕は正直に伝えることにした。
「えっごめん」
「ホントですか!?」
二人はすぐに警戒モードに入った。ふざけててもチャレンジャーとしての動きは身に付いているようだ。
「どっちから?」
「索敵に成功したら仲間に伝えるもんなのですよ」
仲間ねぇ。
「足音的に右後方からかな」
足音というか、草を雑にガサガサと掻き分ける音と、魔物のガウガウいうような声が後ろの方から近付いて来ているから、流石に彼女達にももう聞こえてるんじゃないかと思うんだけど。
この熊は、二人が以前のままだったら厳しいかな。
前にもここで魔物の熊(魔物化した熊?)を倒したことがあるけど、その時に手に入った魔石はコボルトの二倍くらいの大きさがあった。コボルトの二倍というとコボルトファイターとコボルトナイトの間くらいの強さがあるんじゃないかと思う。
「ガゥワォ!!」
「きゃっ!」
「でっか!」
木と木の間から枝をボキボキ折りながら現れた熊は、「見つけた!」とでも言うように吠えた。
目がバキバキに開いてて、口からは大量のよだれが飛び散っている。その見た目は軽くホラーゲームだけど、見慣れれば「またこいつか」くらいの存在ではある。
「……■■■■ウインドアロー!」
リンの周りに、圧縮された空気の矢が十本も現れた。その内の二本だけが熊の顔と胸に飛んでいき、熊の注意がリンの残りの矢に向く。
「スラッシュ!」
エナが熊の左後ろ脚を長剣で切りつける。バシュッという音と共に、熊の脚にダメージが入ったエフェクトが出て、熊がさらに吠えた。
その開いた口に三本、左後ろ脚に五本の空気の矢が突き刺さっては弾けて消えていく。
二人共強くなってるな。
レベルが上がってるだけじゃなくて、戦い方もスキルの使い方も、前よりも洗練されている感じだ。
基本的にエナが敵の攻撃を回避しているけど、二人が交互に攻撃を仕掛けることで、熊の狙いが二人のどちらかに絞られることがないように調整しているみたいだ。つまり、敵意管理ってやつがちゃんとできているようだ。
ただ、ちょっと威力が足りてないかも知れない。
「フトー、何見てるんですか! 手伝ってくださいなのです!」
この熊がここに来た原因は君らなんだけどね。自分のケツは……あ、女の子に使う言葉じゃないか。
僕はストーンバレットを熊の左後ろ脚、既にダメージを与えてる箇所と膝に向けて飛ばした。石は二つとも貫通していった。
片膝が駄目になった熊は前脚を地面に下ろした。
手の届く位置に来たその頭に、エナの連撃が打ち込まれる。
でも倒しきれない。
「フトーさん!」
仕方ない、もう少し手伝うか。僕はミスリル三節棍をフレイル状にして、熊の横から胴体の真上に叩きつけた。
その後、エナとリンの攻撃が一撃ずつ入って熊は消えていった。
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