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相談
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「で、こんなとこに連れてきてなんの話だ」
「これは対価として用意した場所です」
「それで?」
「聞きたいことがあります」
「ああ」
「仮に……」
「めんどくせえ勿体ぶるな」
「ダンジョンを完全攻略すると、そのダンジョンはどうなりますか」
「……消えてなくなる、らしいぜ」
「なるほど。消える時に地震とかの影響がでますか? それと、その後ダンジョンが復活したりしますか?」
「地震は聞いたことがねえな。それと、別の街の領域にあるダンジョンが、攻略された少しあとに難度が上がって復活した、って話は聞いたことがある」
「ですか」
「大根か?」
「え?」
「お前さんが大根のずん止まりまで行ったのか、ってえ聞いてんだよ」
「ああ、違いますよ」
「じゃあなんでこんなことを聞く」
「ヒヤミという人に出会ったんです」
「ヒヤミ?」
「はい」
「ヒヤミって、あのヒヤミか?」
「?」
「ちょっとスカした四十過ぎくれえの優男だよ」
「多分……ギフも会ったことが?」
「ああ、いつも色々と……いや、勝手に話していいことじゃあねえか。で、そいつがどうした?」
「ええ。その人曰く、そろそろダンジョンを攻略できそうだと」
「なんだと!? どこのダンジョンの話なんだいってえ。ううむ……。それを聞いたお前さんとしてはどこだと思ってんだ?」
「魔鉱窟かなと思ってます。ハワードさん達に何か影響がなければいいなと思いまして」
「なるほどな」
翌日、僕は結局、ギフに話を聞くことにしたのだった。
昨日、ぼたん鍋を食べながら、ハワードさん達にも聞いてみたのだけど、ダンジョンを攻略するとどうなるか、については詳しくは知らないとのことだった。
そらから、自分の狡さについての嫌悪感についても話してしまっていた。それには、そんなのは普通のことだよと簡単に返されてしまった。
利用して利用される。
それは、助け、助けられる関係と似ている。
人には好意や悪意があって当たり前のこと。
好き嫌いもあって当然で、やりたくないとをやらないで済ませられるなら、誰だって回避しようとするものだよ。
こういうことで自己嫌悪になれる僕は、ある意味ではいい人なんじゃないかと言われた。
助けが必要なときは、それを助けることができる人に助けてもらえばいい。ただ、どこかでそれを、助けてくれた人にじゃなくてもいいから、返せるときに返せればいいんじゃないか。
字面だけで言えば分かっていたことだけど、お年寄りの言葉の深みというか、僕はその言葉で気持ちが楽になってしまった。
グズグズと悩んでいた割に、随分と単純な頭だなと思う。
まあ、また似たようなことで今後も悩むんだろうけど、とりあえず今回は、自分勝手な自分の思考や行動を受け入れることができた。
そして、そんな自分でもいいと受け入れてくれる人がいることも分かった。
そして、それを受け入れてくれない人もいるのが当たり前なことも分かった。僕にだって嫌いなことや嫌いな人がいるんだから当たり前だ。
「こいつあ旨えな。んで、質問てなあそれだけか?」
「はい。質問はそれだけです」
「それにしちゃあ、随分と豪勢な心付けだな、おい」
温泉の貸し切り小屋を借りて、いい酒を頼み放題で美味い食事を出してもらっている。一人金貨三枚のスペシャルコースだ。
「じゃあもう一つ。ダンジョンが攻略された後ダンジョンは消えてしまうそうですが、その時中にいた他の人はどうなりますか」
「外に放り出されるらしいぜ。だが念の為に暫くは魔鉱窟には入らない方がいいかも知れねえな」
「まだ分からないですけどね。ただ、何か彼は嘘はつかないような気がして」
「ああ、あいつはかなりなやり手だと思うぜ。店に持ってくるもんのレベルが違えからな……あっ、いけねえ。聞かなかったことにしてくれ」
こうやって、ついうっかりと情報や噂話は広がっていくんだろうなぁ。
そうして、その後は再びギルドへの勧誘の話を断ったり、リンとエナのどっちにするんだだとか、そんな話をしながら、おっさん二人の裸の付き合いと飲み会は終わったのだった。
そしてその日の夜、魔鉱窟ダンジョンは攻略され、その入口が消え去ったのである。
「これは対価として用意した場所です」
「それで?」
「聞きたいことがあります」
「ああ」
「仮に……」
「めんどくせえ勿体ぶるな」
「ダンジョンを完全攻略すると、そのダンジョンはどうなりますか」
「……消えてなくなる、らしいぜ」
「なるほど。消える時に地震とかの影響がでますか? それと、その後ダンジョンが復活したりしますか?」
「地震は聞いたことがねえな。それと、別の街の領域にあるダンジョンが、攻略された少しあとに難度が上がって復活した、って話は聞いたことがある」
「ですか」
「大根か?」
「え?」
「お前さんが大根のずん止まりまで行ったのか、ってえ聞いてんだよ」
「ああ、違いますよ」
「じゃあなんでこんなことを聞く」
「ヒヤミという人に出会ったんです」
「ヒヤミ?」
「はい」
「ヒヤミって、あのヒヤミか?」
「?」
「ちょっとスカした四十過ぎくれえの優男だよ」
「多分……ギフも会ったことが?」
「ああ、いつも色々と……いや、勝手に話していいことじゃあねえか。で、そいつがどうした?」
「ええ。その人曰く、そろそろダンジョンを攻略できそうだと」
「なんだと!? どこのダンジョンの話なんだいってえ。ううむ……。それを聞いたお前さんとしてはどこだと思ってんだ?」
「魔鉱窟かなと思ってます。ハワードさん達に何か影響がなければいいなと思いまして」
「なるほどな」
翌日、僕は結局、ギフに話を聞くことにしたのだった。
昨日、ぼたん鍋を食べながら、ハワードさん達にも聞いてみたのだけど、ダンジョンを攻略するとどうなるか、については詳しくは知らないとのことだった。
そらから、自分の狡さについての嫌悪感についても話してしまっていた。それには、そんなのは普通のことだよと簡単に返されてしまった。
利用して利用される。
それは、助け、助けられる関係と似ている。
人には好意や悪意があって当たり前のこと。
好き嫌いもあって当然で、やりたくないとをやらないで済ませられるなら、誰だって回避しようとするものだよ。
こういうことで自己嫌悪になれる僕は、ある意味ではいい人なんじゃないかと言われた。
助けが必要なときは、それを助けることができる人に助けてもらえばいい。ただ、どこかでそれを、助けてくれた人にじゃなくてもいいから、返せるときに返せればいいんじゃないか。
字面だけで言えば分かっていたことだけど、お年寄りの言葉の深みというか、僕はその言葉で気持ちが楽になってしまった。
グズグズと悩んでいた割に、随分と単純な頭だなと思う。
まあ、また似たようなことで今後も悩むんだろうけど、とりあえず今回は、自分勝手な自分の思考や行動を受け入れることができた。
そして、そんな自分でもいいと受け入れてくれる人がいることも分かった。
そして、それを受け入れてくれない人もいるのが当たり前なことも分かった。僕にだって嫌いなことや嫌いな人がいるんだから当たり前だ。
「こいつあ旨えな。んで、質問てなあそれだけか?」
「はい。質問はそれだけです」
「それにしちゃあ、随分と豪勢な心付けだな、おい」
温泉の貸し切り小屋を借りて、いい酒を頼み放題で美味い食事を出してもらっている。一人金貨三枚のスペシャルコースだ。
「じゃあもう一つ。ダンジョンが攻略された後ダンジョンは消えてしまうそうですが、その時中にいた他の人はどうなりますか」
「外に放り出されるらしいぜ。だが念の為に暫くは魔鉱窟には入らない方がいいかも知れねえな」
「まだ分からないですけどね。ただ、何か彼は嘘はつかないような気がして」
「ああ、あいつはかなりなやり手だと思うぜ。店に持ってくるもんのレベルが違えからな……あっ、いけねえ。聞かなかったことにしてくれ」
こうやって、ついうっかりと情報や噂話は広がっていくんだろうなぁ。
そうして、その後は再びギルドへの勧誘の話を断ったり、リンとエナのどっちにするんだだとか、そんな話をしながら、おっさん二人の裸の付き合いと飲み会は終わったのだった。
そしてその日の夜、魔鉱窟ダンジョンは攻略され、その入口が消え去ったのである。
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