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56話 収穫祭でデートですわ!!④
「ライル様。この子は迷子のようですので騎士にお願いしたいのですが、よろしいですか?」
「ああ、もちろんだ。僕がこの子を連れていく。さあ、おいで。肩車をしてあげよう」
若干硬い表情でライル様が男の子をヒョイっと肩に乗せてしまった。
「うわっ! オレ、お姉ちゃんがいいのに!」
「ダメだ。あのお姉ちゃんは僕の婚約者だから、いくら子供でもこれ以上は許せない」
「えー! お姉ちゃんがいいよー!」
男の子がまた泣きそうになったので、なんとか気を逸らせないかと考えた。
「ねえ、貴方は魔道士って聞いたらどう思う?」
「え? 魔道士? うーん、かっこいいとおもう!」
「それなら、秘密を教えてあげるわ。このお兄さんは実は魔道士でとっっっっても強いのよ」
「そうなの!? すごい!」
「だからお兄さんのお話も聞いてくれるかしら?」
「わかった!」
力一杯ライル様の素晴らしさを簡潔に伝えたところ、ちゃんと理解してくれたようだ。なんとか話を聞いてくれるところまで持っていけた、よかった。
「ライル様、勝手に話してしまって申し訳ありません」
「いいんだ、お陰でこの子も落ち着いた。さすが僕のリアだ。では騎士に引き渡してくる。すぐそこに騎士がいるから、ここで待っていてくれるか?」
「わかりましたわ、それではお願いします」
男の子に手を振って、ライル様を待ってほんの数分後に見知らぬ方に声をかけられた。
「おい、お前。面白い格好をしているな。この祭りでは私のパートナーにしてやるから、ありがたく思え」
一瞬、なにを言っているのかよくわからなくて、首を傾げてしまう。声をかけてきたのは三人組の男性たちで、仮装はしておらず話し方からして貴族のようだった。
仮装のことを知らないし、この国の貴族ではないようなので、他国からの旅行者だろうか?
三人とも頬を赤らめて、ごくりと唾を飲み込んでいる。
「どなたか存じませんけれど、今は婚約者を待っておりますのでお断りいたしますわ」
貴族であれば、名乗りもしない無礼者。平民であっても、初対面でお前と呼ぶような方とは仲良くしたいとは思わない。冷めた目を向けてはっきりキッパリ明言した。
「なにっ!? 貴様なんて無礼なんだ! 私は帝国のウィンター伯爵だぞ!!」
「申し訳ありませんけれど、名乗りもされてませんし、レディに対する声かけではありませんでしたので仕方ないと思いますわ」
「ますます生意気な! 平民の分際で、このような口答えをするなど、この国の民の程度が知れるわ!」
「あら、申し遅れました。わたくしマルグレン伯爵が長女、ハーミリアと申します」
膝丈の黒いワンピースの裾を持ち、優雅に淑女のカーテシーをすると、ウィンター伯爵はポカンとしていた。
「伯爵家娘がなぜこのような格好をしているのだ? まあ、いい。それなら私のパートナーに相応しいな」
「ですからわたくしは婚約者を待っておりますので、お断りしましたわ」
帝国の男性はどうしてこうも人の話を聞かないのだろう。
「いいから、この国の貴族として私をもてなせ! それが貴族子女の役目だろう!」
「—— 僕の婚約者になにをしている」
「っ!?」
後ろから抱きしめるように、ライル様の腕がわたくしを包み込んだ。慣れ親しんだ温もりに安堵する。
「貴様、どこから現れた!?」
「転移魔法を使っただけだ。それより、僕の婚約者に話しかけるな」
絶対零度の怒りをまきちらすライル様も、今の衣装にすこぶるハマっていて素敵とうっとりしてしまう。
「て、転移魔法だと? そんな、あれはマジックエンペラーしか使えない世界最難魔法だぞ!?」
「リア、結界を張る。ここから動かないで」
ライル様がわたくしに手をかざすと、周りに侵入不可避の結界が施された。
そして次の瞬間には、ウィンター伯爵の背後に転移魔法で移動してその首元にあるタイだけを凍らせる。
ウィンター伯爵は「ひっ!」と短く悲鳴を上げてガタガタ震えはじめた。
「これで理解できたか? 誰の婚約者に無礼な真似を働いたのか」
「も、申し訳ございませんでしたーっ!!」
そう言ってウィンター伯爵たちは大広場から走り去っていった。ライル様に視線を戻すと、思いっ切り眉間にシワを寄せている。
「やっぱりダメだ、リアが可憐すぎてうじ虫が寄ってくる。リア、場所を変えてデートしないか?」
ライル様に褒められてソワソワしてしまうけれど、一緒にいられるならどこでもかまわないので頷いた。
そっと抱きしめられて転移した先は、キャンピングスクールで訪れた海岸だった。
「ああ、もちろんだ。僕がこの子を連れていく。さあ、おいで。肩車をしてあげよう」
若干硬い表情でライル様が男の子をヒョイっと肩に乗せてしまった。
「うわっ! オレ、お姉ちゃんがいいのに!」
「ダメだ。あのお姉ちゃんは僕の婚約者だから、いくら子供でもこれ以上は許せない」
「えー! お姉ちゃんがいいよー!」
男の子がまた泣きそうになったので、なんとか気を逸らせないかと考えた。
「ねえ、貴方は魔道士って聞いたらどう思う?」
「え? 魔道士? うーん、かっこいいとおもう!」
「それなら、秘密を教えてあげるわ。このお兄さんは実は魔道士でとっっっっても強いのよ」
「そうなの!? すごい!」
「だからお兄さんのお話も聞いてくれるかしら?」
「わかった!」
力一杯ライル様の素晴らしさを簡潔に伝えたところ、ちゃんと理解してくれたようだ。なんとか話を聞いてくれるところまで持っていけた、よかった。
「ライル様、勝手に話してしまって申し訳ありません」
「いいんだ、お陰でこの子も落ち着いた。さすが僕のリアだ。では騎士に引き渡してくる。すぐそこに騎士がいるから、ここで待っていてくれるか?」
「わかりましたわ、それではお願いします」
男の子に手を振って、ライル様を待ってほんの数分後に見知らぬ方に声をかけられた。
「おい、お前。面白い格好をしているな。この祭りでは私のパートナーにしてやるから、ありがたく思え」
一瞬、なにを言っているのかよくわからなくて、首を傾げてしまう。声をかけてきたのは三人組の男性たちで、仮装はしておらず話し方からして貴族のようだった。
仮装のことを知らないし、この国の貴族ではないようなので、他国からの旅行者だろうか?
三人とも頬を赤らめて、ごくりと唾を飲み込んでいる。
「どなたか存じませんけれど、今は婚約者を待っておりますのでお断りいたしますわ」
貴族であれば、名乗りもしない無礼者。平民であっても、初対面でお前と呼ぶような方とは仲良くしたいとは思わない。冷めた目を向けてはっきりキッパリ明言した。
「なにっ!? 貴様なんて無礼なんだ! 私は帝国のウィンター伯爵だぞ!!」
「申し訳ありませんけれど、名乗りもされてませんし、レディに対する声かけではありませんでしたので仕方ないと思いますわ」
「ますます生意気な! 平民の分際で、このような口答えをするなど、この国の民の程度が知れるわ!」
「あら、申し遅れました。わたくしマルグレン伯爵が長女、ハーミリアと申します」
膝丈の黒いワンピースの裾を持ち、優雅に淑女のカーテシーをすると、ウィンター伯爵はポカンとしていた。
「伯爵家娘がなぜこのような格好をしているのだ? まあ、いい。それなら私のパートナーに相応しいな」
「ですからわたくしは婚約者を待っておりますので、お断りしましたわ」
帝国の男性はどうしてこうも人の話を聞かないのだろう。
「いいから、この国の貴族として私をもてなせ! それが貴族子女の役目だろう!」
「—— 僕の婚約者になにをしている」
「っ!?」
後ろから抱きしめるように、ライル様の腕がわたくしを包み込んだ。慣れ親しんだ温もりに安堵する。
「貴様、どこから現れた!?」
「転移魔法を使っただけだ。それより、僕の婚約者に話しかけるな」
絶対零度の怒りをまきちらすライル様も、今の衣装にすこぶるハマっていて素敵とうっとりしてしまう。
「て、転移魔法だと? そんな、あれはマジックエンペラーしか使えない世界最難魔法だぞ!?」
「リア、結界を張る。ここから動かないで」
ライル様がわたくしに手をかざすと、周りに侵入不可避の結界が施された。
そして次の瞬間には、ウィンター伯爵の背後に転移魔法で移動してその首元にあるタイだけを凍らせる。
ウィンター伯爵は「ひっ!」と短く悲鳴を上げてガタガタ震えはじめた。
「これで理解できたか? 誰の婚約者に無礼な真似を働いたのか」
「も、申し訳ございませんでしたーっ!!」
そう言ってウィンター伯爵たちは大広場から走り去っていった。ライル様に視線を戻すと、思いっ切り眉間にシワを寄せている。
「やっぱりダメだ、リアが可憐すぎてうじ虫が寄ってくる。リア、場所を変えてデートしないか?」
ライル様に褒められてソワソワしてしまうけれど、一緒にいられるならどこでもかまわないので頷いた。
そっと抱きしめられて転移した先は、キャンピングスクールで訪れた海岸だった。
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