追放された殲滅の祓魔師〜悪魔達が下僕になるというので契約しまくったら、うっかり大魔王に転職する事になったけど、超高待遇なのでもう戻れません〜

里海慧

文字の大きさ
58 / 59
ブルトカール編

58、ずっとそばにいてほしい

しおりを挟む
「ただいまー!!」

「主人殿、よく無事で戻られたのぅ」

「レオン様が戻って、これでいつも通りねぇ」

 ベルゼブブとアスモデウスが、エントランスで出迎えてくれた。荷物も人数も多いので、ルディに城のエントランスにつなげてもらうよう頼んだのだ。
 ロシエルも十分回復したので、ようやくメイリルの宿屋から引き上げることができた。

「ルディ、ありがとう! 助かったよ」

「お礼はいらないです。その代わり、二度と身代わりやりません」

 ちょっと涙目になってる。本当に悪い事をしたなぁ……しばらく休みでもやろうかな。


「みなさんに、お土産いっぱい買ってきましたよー!」

 荷物を運び終えたグレシルが、空気を読まずに荷物をひろげはじめた。

「家ってここ? え、お姉ちゃん! 本当にここ!?」

 ロシエルはめちゃくちゃキョロキョロしてる。落ち着け。

「レオン様! オレたちにも部屋もらえるんですよね?」

「ああ、用意できてるから。見てきていいよ」

「はいっ! アシェル! 見に行こうぜ!」

「あ、待ってよ!」

 少しすると「うわ——!! すげぇ!!」とか「やった! ひとりのベッドだ! フカフカ!!」とか賑やかな声が聞こえてきた。

 そして、一緒に出迎えてくれた、奴隷から解放した獣人族や魚人族の人たちが、一斉に膝をついて頭を下げてきた。

「レオン様! 我らはレオン様に返しきれないご恩があります。どうか、この城でレオン様のために働かせてください!!」

「え、いいけど……全員なの?」

「「「「もちろんです!!」」」」

「おぉ、よろしく……な」


 何だか一気に騒がしくなったんだけど……大丈夫か? これ。まぁ、困る訳じゃないしいいか。


 でも、このあと俺には地獄が待ち受けていた。



    ***


 レオンは執務室で、溜まりに溜まった書類仕事を片付けていた。ブルトカールに抜け出してからと、ベルゼブブやアスモデウスが倒れた事によって、大量の仕事が残されている。


 元はと言えば俺のせいだし……でも、終わりが見えない……!! ベルゼブブもアスモデウスも、まだ病み上がりだから無理させたくないし!!


 その一心で机に積み上げられた書類を、ガツガツ処理していく。何時間たったのか、ふと集中力が切れた。
 長いため息を吐いて、こり固まった肩をほぐす。もう夜中だろうか、周りの音も聞こえてこない。

 そこにコンコンと小さなノックの音が響く。
 こんな時間に誰だ……? 時間も遅いので、そっと扉を開けた。

「あ、レオン様……邪魔してごめんなさい」

「いや、ちょうど集中力切れたところだから、大丈夫」

「そう、よかった。あの、お茶持ってきたの。よかったら一緒に飲もうと思って。入ってもいい?」

「うん、もちろん」


 ベリアルを好きだと気づいてから、初めてふたりきりになる。やばい、意識すると緊張してきて何も言葉が出てこない。

 ソファーに並んで、ベリアルが入れてくれたお茶を飲んでいる。美味い。いや、そうだけど、そうじゃなくて。
 ベリアルが紅茶を半分ほど飲んで、口を開いた。

「ねえ、レオン様、何か欲しいものとか、して欲しい事、ある?」

「いや……」

「ふふ、そういうと思った。あのね、私、ロシエルを見つけてくれて、レオン様にすごく感謝してるの」

「うん」

「だからね、感謝の気持ちを示したいの。でも、レオン様は何も求めてくれないから……」

 うん? ベリアルは何が言いたいんだ?

「だから……」

 夕日のような瞳と視線がからむ。ソファーに並んでるから、距離が近いと思った時だった。


 ベリアルが触れるだけのキスをした。


「こ……これしか、思いつかなくて……!」

 真っ赤になりながら、言い訳している。
 俺は、固まって動けなかった。その、この前みたいな、人命救助でもなく、ただのキスだったから。
 ベリアルからキスしてくれた————

「じゃぁ! おやすみなさい!」

 俺が固まってるからか、気まずさと恥ずかしさに染まったベリアルは、慌てて立ち上がる。
 瞬間的に腕を掴んでいた。

「えっ————」


 驚いた顔のベリアルに構わず、そのまま引き寄せて抱きしめてた。もう、勝手に動いてた。だってさ、仕方ないだろ。
 好きな人からキスされて、真っ赤になって、めちゃくちゃ可愛かったんだよ!!
 ヤバい、心臓バクバクしすぎて、多分ベリアルにも聞こえてる。

 ふと、テオの言葉が蘇った。

『自分のものにしたいなら、さっさと捕まえろ』

 そうだな、多分もう他の人じゃダメっぽいし、いますぐ捕まえよう。


「……ある」

「ふぇ?」

「して欲しい事、ある」

「えっ! な、なに?」

「ずっと俺のそばにいてほしい」

「……っ!!」


「好きだよ、ベリアル」


 そして、今度は俺から口づける。今度はベリアルが固まっている。
 ふっと微笑んで、もう一度キスをして「返事は?」と尋ねると、史上最高の笑顔でうなずいてくれた。








    ***



「こうして、大魔王様はルージュ・デザライトだけでなく、世界中の国の架け橋となって、この世界を平和にしました」

 ベリアルは読み終えた本を、そっと閉じる。タイトルは『追放されたエクソシスト、大魔王になる』だ。子供でも読みやすいように、表現が簡単で世界各国で発売されている。

 著者はなんとロシエルだ。ベリアルの話を聞いて、書いてくれる人を探したけどいなかったので、自分で書くことにしたらしい。
 ヴェルメリオで発売された時は一悶着あったが、今では至って平和だ。

「お父さま、すごいねー!」
「すごいねー!」

 ふたりの娘たちは、この話が大好きだった。自分の父親が活躍する本なんて、そうそうない。いつもせがまれて、読んでいた。

「そうね、今では魚人の国もエルフの国も、同盟国だものね」

「お父さま、かっこいい!」
「かっこいい!」

 その時、開けっ放しのテラスドアからふわりと風が舞い込んでくる。



     ***



「ただいまー、あー、疲れた」

「レオン! おかえりなさい!」

「「お父さま! おかえりなさい!」」

 ひと仕事終えて帰ると、いつも寝ているはずの双子の娘たちが起きていた。最近は魔物が活性化していて、調査のために帰りが遅くなりがちだった。

 またあの本を、読んでもらっていたみたいだ。
 恥ずかしいからやめてくれと言っても、お父さまかっこいいのに……と悲しそうに言われてしまうと、結局許してしまう。

「あれ、まだ起きてたのか? じゃぁ、みんなで一緒に風呂入るか?」

「「はいるー!!」」

「じゃぁ、準備してくるね」

 俺の最愛の妻は、いそいそと風呂の準備をはじめる。それを横からさらうように抱きしめて、ただいまのキスをした。

「ベリアル、ただいま」

「もう、わかったから! ほら、お風呂の準備してくるから!」

 真っ赤になってたから、恥ずかしいのか? そんなベリアルも可愛いけどな。

 そうだ、ノエルとアリシアにも待望の子供が生まれるから、赤子用のお湯が出る魔石をプレゼントしよう。あれも中々評判がいいんだよな。

 世界は少しずつ変わってきていた。種族ごとで国を作っていたけど、今では行き来が盛んになり、違う種族で結婚するケースも増えている。

 魔物が増えてきて注意は必要だけど、世界中の国が俺とノエルの同盟に加入している。いざとなったら、みんなで力を合わせてどんな事も乗り越えられる。
 想像以上の結果になってビックリだけどな。


 愛する妻と可愛い子供に囲まれて、俺はとても幸せな毎日を送っていた。



 そして、これからもずっと、心のままに生きていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...