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50話 想いを乗せて②
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ブリジット伯爵はガックリと項垂れ、固く握った拳を震わせている。
「できない……私には無理だ。私が暴露したら、家族が殺される」
「ではブリジット伯爵のご家族も保護します。証言をお願いできますか?」
「本当に、家族も助けてくれるのか……?」
「はい。ご家族が安心して過ごせるよう手配いたします」
「……わかった。それなら話そう。その代わり、家族だけは絶対に助けてくれ」
「承知いたしました」
カッシュへ視線を向けると、承知したと力強く頷いてくれた。これでようやく、トカゲの頭を捕まえられる。
ルシアンが毒に倒れ、その敵を捕まえられるのだ。
「では誰がブリジット伯爵に指示を出しているのですか?」
「……アルマンド・カーヴェル公爵だ」
アマリリスは、ようやく謀反を企む主犯の名前を掴むことができた。
それからエドガーと同じくブリジット伯爵も保護下に置き、現在はカッシュが証言を聞き出している。
ブリジット伯爵は領地経営がうまくいかず、支援金の横領を思いついたがアマリリスが来たことで、申請が通らなくなり困窮していた。
横領の事実をカーヴェル公爵に掴まれ脅迫されたのと、成功したら多額の資金を援助すると言われ手駒として働かされていた。
今は証言を取り、物的証拠となるものを精査している。この調査は秘密裏に進められ、ブリジット伯爵の家族も無事に王家の保護下となった。
アマリリスは、いまだに目を覚さないルシアンのそばに寄り添い続けている。
「ルシアン様、毒を盛った実行犯は捕まりました。いつになったら目が覚めるのですか?」
どんなに話しかけても、返事は返ってこない。このまま目覚めなければどんどん衰弱してしまう、と医師は説明していた。ルシアンが倒れてからもう五日が経過している。
せめて水分をとってもらいたくて、アマリリスは氷を小さく砕き少しずつルシアンの口元へ運んでいた。
「お願いです……起きてください。腹黒教育もまだ、完璧ではないですよ」
わずかに開いた口へ小さな粒の氷を乗せると、体温ですぐに溶けて水となりルシアンの唇を濡らす。
ルシアンへは、まだアマリリスの気持ちを伝えられていない。
失いそうになって初めて気が付いた、ルシアンへの想いはアマリリスの胸を締めつける。
「ルシアン様。いつもみたいに私を翻弄して、ドキドキさせてください。そうじゃないと——」
アマリリスは枕元へ手をついて、ルシアンを見下ろした。
少し痩せてしまったルシアンだが、その美貌に陰りはない。
「私、泣いてしまいますよ」
込み上げる想いを乗せて、アマリリスはルシアンの唇にそっと触れるだけのキスをした。
その瞬間、ガッと後頭部を押さえつけられ、しかもアマリリスの唇をひんやりとした柔らかいものが撫でていく。驚いて口を開くと、ニュルリと口内へ侵入してきて縦横無尽に動き回った。
冷たかったそれはやがて熱を持ち、アマリリスを翻弄する。
息ができなくて苦しくなったアマリリスはルシアンの胸を強く叩いた。
「んんーっ!」
「ぷはっ……はあ、愛しい人のキスで目覚めるなんて最高だね」
「もう、ルシアン様! 息ができなくて死ぬかと思いました!」
「ふふ、ごめんね。リリスにキスされてると思ったら、我慢できなかった」
アマリリスはどんどんぼやけていく視界を瞬きでやり過ごしたかったが、こらえきれず涙がポロリとこぼれ落ちる。
ルシアンは慌てて起き上がり、アマリリスを優しく抱きしめた。
「よかった……ルシアン様、目が覚めて……よかった……!」
「リリス、泣かないで。心配かけてごめんね」
「ルシアン様……!!」
ルシアンの胸元を濡らしながら、アマリリスはこの温もりを絶対に手離さないと決心した。
「できない……私には無理だ。私が暴露したら、家族が殺される」
「ではブリジット伯爵のご家族も保護します。証言をお願いできますか?」
「本当に、家族も助けてくれるのか……?」
「はい。ご家族が安心して過ごせるよう手配いたします」
「……わかった。それなら話そう。その代わり、家族だけは絶対に助けてくれ」
「承知いたしました」
カッシュへ視線を向けると、承知したと力強く頷いてくれた。これでようやく、トカゲの頭を捕まえられる。
ルシアンが毒に倒れ、その敵を捕まえられるのだ。
「では誰がブリジット伯爵に指示を出しているのですか?」
「……アルマンド・カーヴェル公爵だ」
アマリリスは、ようやく謀反を企む主犯の名前を掴むことができた。
それからエドガーと同じくブリジット伯爵も保護下に置き、現在はカッシュが証言を聞き出している。
ブリジット伯爵は領地経営がうまくいかず、支援金の横領を思いついたがアマリリスが来たことで、申請が通らなくなり困窮していた。
横領の事実をカーヴェル公爵に掴まれ脅迫されたのと、成功したら多額の資金を援助すると言われ手駒として働かされていた。
今は証言を取り、物的証拠となるものを精査している。この調査は秘密裏に進められ、ブリジット伯爵の家族も無事に王家の保護下となった。
アマリリスは、いまだに目を覚さないルシアンのそばに寄り添い続けている。
「ルシアン様、毒を盛った実行犯は捕まりました。いつになったら目が覚めるのですか?」
どんなに話しかけても、返事は返ってこない。このまま目覚めなければどんどん衰弱してしまう、と医師は説明していた。ルシアンが倒れてからもう五日が経過している。
せめて水分をとってもらいたくて、アマリリスは氷を小さく砕き少しずつルシアンの口元へ運んでいた。
「お願いです……起きてください。腹黒教育もまだ、完璧ではないですよ」
わずかに開いた口へ小さな粒の氷を乗せると、体温ですぐに溶けて水となりルシアンの唇を濡らす。
ルシアンへは、まだアマリリスの気持ちを伝えられていない。
失いそうになって初めて気が付いた、ルシアンへの想いはアマリリスの胸を締めつける。
「ルシアン様。いつもみたいに私を翻弄して、ドキドキさせてください。そうじゃないと——」
アマリリスは枕元へ手をついて、ルシアンを見下ろした。
少し痩せてしまったルシアンだが、その美貌に陰りはない。
「私、泣いてしまいますよ」
込み上げる想いを乗せて、アマリリスはルシアンの唇にそっと触れるだけのキスをした。
その瞬間、ガッと後頭部を押さえつけられ、しかもアマリリスの唇をひんやりとした柔らかいものが撫でていく。驚いて口を開くと、ニュルリと口内へ侵入してきて縦横無尽に動き回った。
冷たかったそれはやがて熱を持ち、アマリリスを翻弄する。
息ができなくて苦しくなったアマリリスはルシアンの胸を強く叩いた。
「んんーっ!」
「ぷはっ……はあ、愛しい人のキスで目覚めるなんて最高だね」
「もう、ルシアン様! 息ができなくて死ぬかと思いました!」
「ふふ、ごめんね。リリスにキスされてると思ったら、我慢できなかった」
アマリリスはどんどんぼやけていく視界を瞬きでやり過ごしたかったが、こらえきれず涙がポロリとこぼれ落ちる。
ルシアンは慌てて起き上がり、アマリリスを優しく抱きしめた。
「よかった……ルシアン様、目が覚めて……よかった……!」
「リリス、泣かないで。心配かけてごめんね」
「ルシアン様……!!」
ルシアンの胸元を濡らしながら、アマリリスはこの温もりを絶対に手離さないと決心した。
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