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番外編 リリスの幸せを願う①
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ルシアンの執務室で三人の男たちが集まり、ある重要事項について相談していた。
「なあ、結婚式が一年後って早くない?」
「何言ってるの、ユアン。それでも遅いくらいだよ」
「それより、ユアンはいつになったらリリスに会うつもりだ?」
集まっているのは部屋の主人であるルシアンと、アマリリスの兄であるテオドールとユアンだ。アマリリスは妃教育を受けているため、この時間は不在である。
三人はソファーに腰かけ、お茶を飲みながら話を進めた。
「あー、それなあ。結婚式当日じゃダメかな?」
「いや、いくらなんでもその前に会っておけよ。リリスは会いたがってるぞ」
「うーん、ちょっと今の組織から抜けるのに時間がかかるんだよな。半端な状態で会って、リリスが危なくなるのは避けたいし」
ユアンもテオドールと同様で、南の国ナイトレイの養子先に話が通っておらず、そのまま町に住み着く孤児になった。ひょんなことからイルシオ商団に拾われたが、少しばかり黒い組織であったためテオドールのように話が簡単ではないのだ。
「抜けられたら、後はこちらで面倒を見てあげるよ」
「お、それは助かる。さすが王太子だけあって太っ腹だな」
「はあ、俺はユアンの態度がいつ不敬罪に問われるかと胃が痛い」
「あはは、リリスの兄上なら義兄弟なんだから大丈夫だよ。リリスを泣かせない限りは敵認定しないし」
ユアンは礼儀作法とは無縁の組織で過ごしてきたためか、ルシアンに対しても敬語など使わないし態度も太々しい。だがルシアンはそんな細かいことは気にしていなかった。
「はあ? お前こそ王太子だからってリリスを泣かせたら、問答無用でオレが連れ去るからな」
「それは心配ないね。僕がリリスを泣かせるなんてありえないから」
「どうだかな」
「あ、ベッドの上では鳴かせると思うけど、それはいいよね?」
ルシアンの爆弾発言に、テオドールもユアンも殺気立つ。
「お前……結婚式の前に手を出してみろ。ただじゃおかねえ」
「ルシアン殿下、そういうことなら今すぐにリリスは連れて帰ります」
「ははっ、リリスは愛されてるね。僕が一番愛してるけどね」
義兄たちに殺気を向けられても気にも留めないルシアンは、挑発的な言葉を繰り返した。
「リリスを一番愛してるのは俺だ!」
「リリスを一番愛してるのはオレだっての!」
テオドールとユアンも負けじとアマリリスへの愛を叫ぶ。三人が集まると一度はこうして張り合っているのだ。仲がいいのか悪いのか、それでもアマリリスのためならばこうして三人で相談し合う。
ただ、アマリリス本人だけがそれを知らない。
「ていうか、結婚式が早すぎるから二年後にしろ」
「嫌だよ。一年後でも遅すぎる」
「ですが、本来は二年後のはずでしたよね? それまでクレバリー家で過ごすのが本来の姿ですよ」
「でもリリスは僕の婚約者だし、護衛を強化する必要があるでしょう? 王城以上に安全な場所なんてないよ?」
アマリリスは王太子の婚約者であるから、通常の貴族令嬢よりも警備を厳重にしなければいけないのは嘘ではない。
しかしルシアンの本性をすでに知っているテオドールとユアンは、アマリリスの別の危険を感じ取っている。
「は? むしろお前のそばにリリスがいる方が危険だっての」
「ルシアン殿下には申し訳ないですが、リリスの貞操が危険です」
「なんでそんなに信用ないかな」
ルシアンはこれでもアマリリスが嫌がるようなら、手を出すつもりはない。ゆえに毎朝のキスを日課にして、そういった抵抗が少なくなるように努力をしているくらいだ。
(アマリリスは身持ちが固くて、そうそう一線を超えることはないから結婚式を早めたんだ)
一日でも早くアマリリスを自分のものにしたいルシアンは、密かに画策していた。
「なあ、結婚式が一年後って早くない?」
「何言ってるの、ユアン。それでも遅いくらいだよ」
「それより、ユアンはいつになったらリリスに会うつもりだ?」
集まっているのは部屋の主人であるルシアンと、アマリリスの兄であるテオドールとユアンだ。アマリリスは妃教育を受けているため、この時間は不在である。
三人はソファーに腰かけ、お茶を飲みながら話を進めた。
「あー、それなあ。結婚式当日じゃダメかな?」
「いや、いくらなんでもその前に会っておけよ。リリスは会いたがってるぞ」
「うーん、ちょっと今の組織から抜けるのに時間がかかるんだよな。半端な状態で会って、リリスが危なくなるのは避けたいし」
ユアンもテオドールと同様で、南の国ナイトレイの養子先に話が通っておらず、そのまま町に住み着く孤児になった。ひょんなことからイルシオ商団に拾われたが、少しばかり黒い組織であったためテオドールのように話が簡単ではないのだ。
「抜けられたら、後はこちらで面倒を見てあげるよ」
「お、それは助かる。さすが王太子だけあって太っ腹だな」
「はあ、俺はユアンの態度がいつ不敬罪に問われるかと胃が痛い」
「あはは、リリスの兄上なら義兄弟なんだから大丈夫だよ。リリスを泣かせない限りは敵認定しないし」
ユアンは礼儀作法とは無縁の組織で過ごしてきたためか、ルシアンに対しても敬語など使わないし態度も太々しい。だがルシアンはそんな細かいことは気にしていなかった。
「はあ? お前こそ王太子だからってリリスを泣かせたら、問答無用でオレが連れ去るからな」
「それは心配ないね。僕がリリスを泣かせるなんてありえないから」
「どうだかな」
「あ、ベッドの上では鳴かせると思うけど、それはいいよね?」
ルシアンの爆弾発言に、テオドールもユアンも殺気立つ。
「お前……結婚式の前に手を出してみろ。ただじゃおかねえ」
「ルシアン殿下、そういうことなら今すぐにリリスは連れて帰ります」
「ははっ、リリスは愛されてるね。僕が一番愛してるけどね」
義兄たちに殺気を向けられても気にも留めないルシアンは、挑発的な言葉を繰り返した。
「リリスを一番愛してるのは俺だ!」
「リリスを一番愛してるのはオレだっての!」
テオドールとユアンも負けじとアマリリスへの愛を叫ぶ。三人が集まると一度はこうして張り合っているのだ。仲がいいのか悪いのか、それでもアマリリスのためならばこうして三人で相談し合う。
ただ、アマリリス本人だけがそれを知らない。
「ていうか、結婚式が早すぎるから二年後にしろ」
「嫌だよ。一年後でも遅すぎる」
「ですが、本来は二年後のはずでしたよね? それまでクレバリー家で過ごすのが本来の姿ですよ」
「でもリリスは僕の婚約者だし、護衛を強化する必要があるでしょう? 王城以上に安全な場所なんてないよ?」
アマリリスは王太子の婚約者であるから、通常の貴族令嬢よりも警備を厳重にしなければいけないのは嘘ではない。
しかしルシアンの本性をすでに知っているテオドールとユアンは、アマリリスの別の危険を感じ取っている。
「は? むしろお前のそばにリリスがいる方が危険だっての」
「ルシアン殿下には申し訳ないですが、リリスの貞操が危険です」
「なんでそんなに信用ないかな」
ルシアンはこれでもアマリリスが嫌がるようなら、手を出すつもりはない。ゆえに毎朝のキスを日課にして、そういった抵抗が少なくなるように努力をしているくらいだ。
(アマリリスは身持ちが固くて、そうそう一線を超えることはないから結婚式を早めたんだ)
一日でも早くアマリリスを自分のものにしたいルシアンは、密かに画策していた。
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