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殺っちまおうぜ、今すぐ
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オーナー室は広めのホテルルームという設えだった。夜景を背にしたソファに、男性がゆったりと腰掛けている。
この部屋の主、羽根田社長だ。
「織人、元気そうだな」
翼さんと同じくコワモテだけど、雰囲気は柔らかい。整えられたシルバーグレイの髪と口髭が、几帳面な印象を与える。
「ご無沙汰してます。九郎さんもお元気そうでなにより」
「うむ」
羽根田社長はうなずくと、私に目を移す。鋭い眼光にドキッとするがそれも一瞬で、すぐに穏やかな眼差しになった。
「はじめまして、お嬢さん」
立ち上がり、歩み寄ってくる。息子に負けず劣らず背が高く、体格が良い。貫禄に圧倒されて、少し後退りした。
「私は当ビルのオーナー、羽根田九郎と申します」
「は、はじめまして。私は……」
由比さんの視線を感じる。こうなったら、きちんと挨拶するほかない。
「由比……奈々子と申します。織人さんの……妻です」
緊張し、ぎこちなくなってしまった。
これで良かったのかしらと心配になり由比さんをチラ見する。
「うっ……」
嬉しそうに目尻を垂らしている。
デレた表情に私は恥ずかしくなり、サッと目を戻す。
「なんだ織人、そのだらしない顔は。わっははは!」
羽根田社長が豪快に笑った。
側に控える翼さんも、噴き出している。
「ちょっと九郎さん、笑いすぎだよ」
由比さんがむくれると、羽根田社長は「すまん、すまん」と言いながらソファに戻った。
「お二人さん、デートの邪魔をして悪かったな。だがせっかく会えたことだし、お茶でも飲んでいきなさい」
由比さんは不満げだが、「しょうがないな。一杯だけだよ」と、私をソファに促し、並んで腰掛けた。
翼さんが茶器をのせたワゴンを運んできて、手際よくお茶を入れる。カップをそれぞれに配すと、羽根田社長の脇に控えた。
(この香り……ルイボスティーだ)
「遅い時間だからノンカフェインにしました」
「あ、ありがとうございます」
丁寧な所作と言葉がけに、彼のさりげない気遣いを感じる。一見豪傑だが、案外細やかな人なのかもしれない。
意外に思うと同時に、親しみを覚えた。
由比さんと私は羽根田社長と向き合い、お茶を飲んだ。部屋は静かで、暖かい。
「お前が見合いすると一人から聞いてはいたが、もう結婚したとは驚きだ。スピード婚ってやつか」
一人というのは、由比さんの父親である。
「早くしないと、逃げられちゃうからね」
由比さんが冗談めかすと、羽根田社長と翼さんが楽しげに笑う。その様子から、彼らの親しい関係が見て取れた。
「お前は昔から女にモテるからな。どんな相手と一緒になるのか心配だったが、奈々子さんとお会いして安心したよ」
えっ? と思い、羽根田社長を見た。冗談を言う表情ではない。
「守ってあげたくなるような、可愛らしい女性だ。優しくて控えめで、お前の足りないものを全て持ちあわせている」
思わぬ評価をもらい、恐縮する。
たぶん、頼りなく見える私を良いように言ってくれたのだろう。
足りないものを数えれば、私のほうが圧倒的に多いし、釣り合いが取れていないのは明白だから。
だけど、羽根田社長の態度は真面目であり、お世辞だとしてもありがたいと感じた。
「でしょ? 親父もお袋も奈々子と実際に会ったら、同じことを言うだろうなあ」
「なんだって?」
羽根田社長と翼さんが顔を見合わせ、首を傾げた。
「どういうことだ。親と顔合わせなしで籍を入れたのか」
「俺が気に入ればオッケーってことで、善は急げで進めたんだ。ほんと言うと、籍はこれからだけどね」
さすがに呆れたようで、羽根田親子が「それでいいのか」という眼差しをこちらに向ける。
しかし、何も言えずもじもじするばかりの私を見て、だいたい察したようだ。
この部屋の主、羽根田社長だ。
「織人、元気そうだな」
翼さんと同じくコワモテだけど、雰囲気は柔らかい。整えられたシルバーグレイの髪と口髭が、几帳面な印象を与える。
「ご無沙汰してます。九郎さんもお元気そうでなにより」
「うむ」
羽根田社長はうなずくと、私に目を移す。鋭い眼光にドキッとするがそれも一瞬で、すぐに穏やかな眼差しになった。
「はじめまして、お嬢さん」
立ち上がり、歩み寄ってくる。息子に負けず劣らず背が高く、体格が良い。貫禄に圧倒されて、少し後退りした。
「私は当ビルのオーナー、羽根田九郎と申します」
「は、はじめまして。私は……」
由比さんの視線を感じる。こうなったら、きちんと挨拶するほかない。
「由比……奈々子と申します。織人さんの……妻です」
緊張し、ぎこちなくなってしまった。
これで良かったのかしらと心配になり由比さんをチラ見する。
「うっ……」
嬉しそうに目尻を垂らしている。
デレた表情に私は恥ずかしくなり、サッと目を戻す。
「なんだ織人、そのだらしない顔は。わっははは!」
羽根田社長が豪快に笑った。
側に控える翼さんも、噴き出している。
「ちょっと九郎さん、笑いすぎだよ」
由比さんがむくれると、羽根田社長は「すまん、すまん」と言いながらソファに戻った。
「お二人さん、デートの邪魔をして悪かったな。だがせっかく会えたことだし、お茶でも飲んでいきなさい」
由比さんは不満げだが、「しょうがないな。一杯だけだよ」と、私をソファに促し、並んで腰掛けた。
翼さんが茶器をのせたワゴンを運んできて、手際よくお茶を入れる。カップをそれぞれに配すと、羽根田社長の脇に控えた。
(この香り……ルイボスティーだ)
「遅い時間だからノンカフェインにしました」
「あ、ありがとうございます」
丁寧な所作と言葉がけに、彼のさりげない気遣いを感じる。一見豪傑だが、案外細やかな人なのかもしれない。
意外に思うと同時に、親しみを覚えた。
由比さんと私は羽根田社長と向き合い、お茶を飲んだ。部屋は静かで、暖かい。
「お前が見合いすると一人から聞いてはいたが、もう結婚したとは驚きだ。スピード婚ってやつか」
一人というのは、由比さんの父親である。
「早くしないと、逃げられちゃうからね」
由比さんが冗談めかすと、羽根田社長と翼さんが楽しげに笑う。その様子から、彼らの親しい関係が見て取れた。
「お前は昔から女にモテるからな。どんな相手と一緒になるのか心配だったが、奈々子さんとお会いして安心したよ」
えっ? と思い、羽根田社長を見た。冗談を言う表情ではない。
「守ってあげたくなるような、可愛らしい女性だ。優しくて控えめで、お前の足りないものを全て持ちあわせている」
思わぬ評価をもらい、恐縮する。
たぶん、頼りなく見える私を良いように言ってくれたのだろう。
足りないものを数えれば、私のほうが圧倒的に多いし、釣り合いが取れていないのは明白だから。
だけど、羽根田社長の態度は真面目であり、お世辞だとしてもありがたいと感じた。
「でしょ? 親父もお袋も奈々子と実際に会ったら、同じことを言うだろうなあ」
「なんだって?」
羽根田社長と翼さんが顔を見合わせ、首を傾げた。
「どういうことだ。親と顔合わせなしで籍を入れたのか」
「俺が気に入ればオッケーってことで、善は急げで進めたんだ。ほんと言うと、籍はこれからだけどね」
さすがに呆れたようで、羽根田親子が「それでいいのか」という眼差しをこちらに向ける。
しかし、何も言えずもじもじするばかりの私を見て、だいたい察したようだ。
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