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グレースの迷い プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院図書館
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危惧していたことが現実になった。スチュワート教授が姉グレースに求愛したのだ。
ロアルドがそれを知らされたのは、やはり図書館を訪れた時だった。
「今日はスチュワート先生はお見えでないのですね?」ひとりで紙の本を読んでいたグレースにロアルドは声をかけた。
離れたところにいつものようにオスカーがいた。
ロアルドは周囲に聞かれないように気遣った。
「今日は論文をまとめられるそうですよ」グレースは少し落ち着きがなかった。
「姉さま、どうかされました?」
「実はねロアルド、スチュワート先生にお願いされたのです」
「何を?」
「研究を一生かけて手伝ってくれないかと」
「は?」
「スチュワート先生の専属にならないかという話なの」
「今でも専属のようなものではありませんか」
「スチュワート先生が家を用意するからそちらに住んで一生研究の手伝いをして欲しいとおっしゃるのよ」
「それは求婚という話ですか?」
「先生には奥さまもお子さまもいらっしゃるから婚姻関係ではないわね」
「では何でしょうか」
「研究のパートナーかしら」
「そのためにスチュワート先生が家まで用意されると?」
「そうなの。私、困ってしまうわ。まさかスチュワート先生がそこまで私を評価して下さって、一生面倒を見るお覚悟をお決めになったのですから。まあどうしましょう」
「何を暢気なことを言うのです。それは妾になれということではないのですか?」
「そういうことなのかしら? でもスチュワート先生は私の神官としての能力を大切にしたいからと言われて、交わりは最小限に抑えるとおっしゃられたのよ」
交わりがあることは理解しているのか。
「姉上はそれでよろしいのですか? スチュワート先生に囲われて暮らすということですよ」
「私はもともと神官として身を捧げるつもりでした。でもスチュワート先生の研究のお手伝いをしていくという生き方もありなのではないかと思うようになりました」
やはり姉はすでに精神支配系の魔法の影響下にあるとロアルドは思った。洗脳の効果が出始めているのだ。
「その話は父上や母上に伝えましたか」
「まだよ。どう言えば良いのかわからないの。ロアルド、あなた私に協力して下さるかしら?」
「僕には何もできませんよ」ロアルドは突っぱねるしかなかった。「マチルダ姉さまには?」
「言ってないわ」
「まずはマチルダ姉さまに相談し、それから母上に相談されるのが良いでしょう。父上には最後です」
「やっぱりそうなのね。私もそれが良いかと思っていたのよ」
「僕は反対ですけどね。一度愛婦になった者は、まともな貴族の初婚相手として見られなくなるようですから良い縁談の話も来なくなるでしょう」
「あら、私は結婚する将来は思い描いていなかったわ」
「はあ……」舞い上がっている姉を見ていられなかった。
「とにかく早まることはないようにして下さい。じっくりと考えて下さいまし」ロアルドはそう念を押すと図書館を離れた。
そして次の日、ロアルドは生徒会室に出頭するように命じられた。生徒会長マチルダに呼び出されたわけだ。
仕官科の教室にその伝令が伝えられると、その場にいた級友たちが物珍しそうにロアルドを見た。いったい何をやらかしたのだ、という目で。
ロアルドがそれを知らされたのは、やはり図書館を訪れた時だった。
「今日はスチュワート先生はお見えでないのですね?」ひとりで紙の本を読んでいたグレースにロアルドは声をかけた。
離れたところにいつものようにオスカーがいた。
ロアルドは周囲に聞かれないように気遣った。
「今日は論文をまとめられるそうですよ」グレースは少し落ち着きがなかった。
「姉さま、どうかされました?」
「実はねロアルド、スチュワート先生にお願いされたのです」
「何を?」
「研究を一生かけて手伝ってくれないかと」
「は?」
「スチュワート先生の専属にならないかという話なの」
「今でも専属のようなものではありませんか」
「スチュワート先生が家を用意するからそちらに住んで一生研究の手伝いをして欲しいとおっしゃるのよ」
「それは求婚という話ですか?」
「先生には奥さまもお子さまもいらっしゃるから婚姻関係ではないわね」
「では何でしょうか」
「研究のパートナーかしら」
「そのためにスチュワート先生が家まで用意されると?」
「そうなの。私、困ってしまうわ。まさかスチュワート先生がそこまで私を評価して下さって、一生面倒を見るお覚悟をお決めになったのですから。まあどうしましょう」
「何を暢気なことを言うのです。それは妾になれということではないのですか?」
「そういうことなのかしら? でもスチュワート先生は私の神官としての能力を大切にしたいからと言われて、交わりは最小限に抑えるとおっしゃられたのよ」
交わりがあることは理解しているのか。
「姉上はそれでよろしいのですか? スチュワート先生に囲われて暮らすということですよ」
「私はもともと神官として身を捧げるつもりでした。でもスチュワート先生の研究のお手伝いをしていくという生き方もありなのではないかと思うようになりました」
やはり姉はすでに精神支配系の魔法の影響下にあるとロアルドは思った。洗脳の効果が出始めているのだ。
「その話は父上や母上に伝えましたか」
「まだよ。どう言えば良いのかわからないの。ロアルド、あなた私に協力して下さるかしら?」
「僕には何もできませんよ」ロアルドは突っぱねるしかなかった。「マチルダ姉さまには?」
「言ってないわ」
「まずはマチルダ姉さまに相談し、それから母上に相談されるのが良いでしょう。父上には最後です」
「やっぱりそうなのね。私もそれが良いかと思っていたのよ」
「僕は反対ですけどね。一度愛婦になった者は、まともな貴族の初婚相手として見られなくなるようですから良い縁談の話も来なくなるでしょう」
「あら、私は結婚する将来は思い描いていなかったわ」
「はあ……」舞い上がっている姉を見ていられなかった。
「とにかく早まることはないようにして下さい。じっくりと考えて下さいまし」ロアルドはそう念を押すと図書館を離れた。
そして次の日、ロアルドは生徒会室に出頭するように命じられた。生徒会長マチルダに呼び出されたわけだ。
仕官科の教室にその伝令が伝えられると、その場にいた級友たちが物珍しそうにロアルドを見た。いったい何をやらかしたのだ、という目で。
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