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どうにか騒ぎは収拾する プレセア暦三〇四六年 コーネル領商いの街広場
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三頭の虎型雷獣が電撃の火花を散らしながら走り回り、その場は混乱した。
神官たちはなす術もなかった。自ら張った魔法結界から出ることもできず、かといって結界を消すと紙芝居の男女を逃がすばかりか雷獣まで街に解き放つことになるので解除もできずに逃げ惑い、防戦一方になった。
そこに二メートルのステッキを手にしたジェシカが参戦した。
ステッキの先端は片方が尖っているがもう片方には何かの魔石がはめられていた。
ジェシカがステッキを振るうと雷獣の一頭に空気弾が当たった。雷獣にとっては致命傷には至らないが雷獣の注意を引くことになった。
神官たちを襲っていた雷獣たちがジェシカの方を向いた。そして三方向からジェシカに迫った。
次の瞬間、ジェシカの体が宙に浮いた。いや飛んだというべきか。跳躍したのかとロアルドは思ったが、ジェシカの体は五メートル以上高いところで浮いた状態で止まっていた。
そこに雷獣の電撃が放たれる。
しかし三頭の電撃は一瞬にしてジェシカのステッキにはめられた魔石に吸い込まれて消えた。
何度放っても電撃はステッキの魔石に吸い込まれる。
「お姉さま、お空を飛べるの? すごい」ロージーが目を輝かせて素直に感動していた。
「多分、飛鉱石を使っていると思う。ただ飛鉱石だけだと上に浮くだけで横の動きはできないのだけれど……」
ジェシカはすごいスピードで空中をぐるぐるまわり上空から空気弾を何発も放っていた。
「風魔法と重力魔法を併用しているな。ここからじゃわからない」
ジェシカはスナッチが届く範囲から外れていた。
ジェシカが三頭の雷獣の相手をしているので、神官たちは紙芝居の男女への攻撃に転じた。まさに起死回生だ。
しかし分が悪いと感じた女の方がジェシカを最優先の攻撃対象と決めた。
「ジェシカ姉さまに加勢しよう。ロージー、手伝ってくれるね?」
「はい、お兄さま」ロージーはにっこり笑った。
ジェシカは三頭の雷獣と魔法師の男女を相手にするために空中から攻撃する戦法をとっていたためスナッチの圏外にいることが多く、ロアルドは魔法を借りることができなかった。こうなってはロージーに頼るしかない。
ロージーの初級魔法を借りるか紙芝居の男女もしくは神官たちに接近して彼らの魔法を借りるかするしかなかった。
領民は何とか全員を避難させることができた。ロアルドとロージーは連れ立って紙芝居の男女と神官たちが組んず解れつしているところに身をおいた。
「危ないぞ」神官のひとりが言った。「早く出なさい」
「魔法結界があるので出られないです」
「魔法が使えるのか?」
「まあ」あなたのを借りれば使えます、とロアルドは心の中で言った。
できるだけ誰にも大きな怪我をさせたくない。ロアルドの戦法は決まった。
「ロージー、僕が言う相手にエアロを当てて」
「はい」ロージーは頷いた。
ロージーのエアロなら空気弾のような破壊力はない。少し後ろへ倒されるだけだ。紙芝居の男の方を狙わせた。
男はロージーのエアロをまともに受けて後ろへ倒れた。
何が起こったのか男はわからなかっただろう。ロアルドが男から防御魔法を奪ったのだ。
ロージーのエアロが当たったら男に防御魔法を返す。
男が倒れてチャンスと思った神官が攻撃魔法を発動しようとしていたので、それも瞬時に奪った。
神官は自分の魔法が不発に終わったので不思議そうにしている。
こうしてそこにいた魔法師たちの魔法を借りたり奪ったりして戦闘の威力を殺いだ。
紙芝居の女の方がジェシカに向けて持ちうる限りの攻撃魔法を放っていた。
ジェシカは三頭の雷獣からの雷撃をステッキに吸い込ませながら女の攻撃をかわさなければならず防戦一方になっていた。
ロアルドは女に近づいた。召喚魔法を使ったのならそれを回収する手段があるはずだ。それとも時限によって自動的に召喚獣は消えるのか? まさかずっと召喚魔法を放ち続けてそれをやめたら回収される仕組みでもあるまい。
そう考えてロアルドは女の魔法を見た。そして確かに回収する魔法があることに気づいた。
これを自分が使ったら召喚獣はどこへ行くのかな、と思い術式を解析して、それが女のところに戻るのだと知ることができた。
「では帰っていただこう」ロアルドは女の魔法をスナッチした。
三頭の雷獣は女の胸元の魔石へと吸い込まれていった。
ぎょっとする女。紙芝居の男女は追いこまれた。
ジェシカが地に降り立った。「観念しなさい」
唇を噛む女の顔は美しかった。それは何らかの決意を下した者の顔だった。
逃れられないと悟った者たちが敵味方構わず全て葬り去ろうと考えることをロアルドはこの時知った。
スナッチの圏内に近寄り、女が発動しようとしていた破壊性の魔法をそれが発動される直前に奪う。
次々と不発に終わる現象に女は慌てていた。
その一方で神官たちの攻撃も奪わなければならない。ロアルドはいつ息ができるのかと不安になった。
「逃がしてあげて」ロージーが言った。「楽しい紙芝居を見せてくれたのだもの、悪い人たちじゃないはず」
そうか、逃げ道を作れば事態は収拾する。
ロアルドは神官たちが敷いている結界を取り除くため彼らの結界魔法をスナッチした。
届かない範囲にいる神官たちには手は出せなかったが、結界は小さく弱くなった。
それを肌で感じた紙芝居の男女は閃光魔法を使った後、結界を突破して姿を消した。
「逃がしたか」ジェシカが大袈裟に言った。そして小声でロアルドとロージーに囁いた。「逃がしてやったのね?」
ロージーが頷いた。
捕り物は終わった。神官たちは不思議そうに顔を見合わせ、不機嫌さを隠さずにその場を去っていった。
「私たちに礼の一つもなし、か」ジェシカが吐き捨てるように言った。
「どうして教会の人たちはあの人たちを捕まえようとしていたの?」ロージーが無邪気に訊ねた。
「広場で芸をする許可をとっていなかったんじゃないかな」ロアルドは適当なことを答えた。
「許可が必要なんだ?」
「寄付金を払えば良かったのかな。何でもお金が必要なんだよ」
「私がお金を出せば、また紙芝居してくれるかな?」
「どうだろうね」
傍でジェシカがむっとしていた。適当なことを言うからややこしくなるんだとその目は語っていた。
神官たちはなす術もなかった。自ら張った魔法結界から出ることもできず、かといって結界を消すと紙芝居の男女を逃がすばかりか雷獣まで街に解き放つことになるので解除もできずに逃げ惑い、防戦一方になった。
そこに二メートルのステッキを手にしたジェシカが参戦した。
ステッキの先端は片方が尖っているがもう片方には何かの魔石がはめられていた。
ジェシカがステッキを振るうと雷獣の一頭に空気弾が当たった。雷獣にとっては致命傷には至らないが雷獣の注意を引くことになった。
神官たちを襲っていた雷獣たちがジェシカの方を向いた。そして三方向からジェシカに迫った。
次の瞬間、ジェシカの体が宙に浮いた。いや飛んだというべきか。跳躍したのかとロアルドは思ったが、ジェシカの体は五メートル以上高いところで浮いた状態で止まっていた。
そこに雷獣の電撃が放たれる。
しかし三頭の電撃は一瞬にしてジェシカのステッキにはめられた魔石に吸い込まれて消えた。
何度放っても電撃はステッキの魔石に吸い込まれる。
「お姉さま、お空を飛べるの? すごい」ロージーが目を輝かせて素直に感動していた。
「多分、飛鉱石を使っていると思う。ただ飛鉱石だけだと上に浮くだけで横の動きはできないのだけれど……」
ジェシカはすごいスピードで空中をぐるぐるまわり上空から空気弾を何発も放っていた。
「風魔法と重力魔法を併用しているな。ここからじゃわからない」
ジェシカはスナッチが届く範囲から外れていた。
ジェシカが三頭の雷獣の相手をしているので、神官たちは紙芝居の男女への攻撃に転じた。まさに起死回生だ。
しかし分が悪いと感じた女の方がジェシカを最優先の攻撃対象と決めた。
「ジェシカ姉さまに加勢しよう。ロージー、手伝ってくれるね?」
「はい、お兄さま」ロージーはにっこり笑った。
ジェシカは三頭の雷獣と魔法師の男女を相手にするために空中から攻撃する戦法をとっていたためスナッチの圏外にいることが多く、ロアルドは魔法を借りることができなかった。こうなってはロージーに頼るしかない。
ロージーの初級魔法を借りるか紙芝居の男女もしくは神官たちに接近して彼らの魔法を借りるかするしかなかった。
領民は何とか全員を避難させることができた。ロアルドとロージーは連れ立って紙芝居の男女と神官たちが組んず解れつしているところに身をおいた。
「危ないぞ」神官のひとりが言った。「早く出なさい」
「魔法結界があるので出られないです」
「魔法が使えるのか?」
「まあ」あなたのを借りれば使えます、とロアルドは心の中で言った。
できるだけ誰にも大きな怪我をさせたくない。ロアルドの戦法は決まった。
「ロージー、僕が言う相手にエアロを当てて」
「はい」ロージーは頷いた。
ロージーのエアロなら空気弾のような破壊力はない。少し後ろへ倒されるだけだ。紙芝居の男の方を狙わせた。
男はロージーのエアロをまともに受けて後ろへ倒れた。
何が起こったのか男はわからなかっただろう。ロアルドが男から防御魔法を奪ったのだ。
ロージーのエアロが当たったら男に防御魔法を返す。
男が倒れてチャンスと思った神官が攻撃魔法を発動しようとしていたので、それも瞬時に奪った。
神官は自分の魔法が不発に終わったので不思議そうにしている。
こうしてそこにいた魔法師たちの魔法を借りたり奪ったりして戦闘の威力を殺いだ。
紙芝居の女の方がジェシカに向けて持ちうる限りの攻撃魔法を放っていた。
ジェシカは三頭の雷獣からの雷撃をステッキに吸い込ませながら女の攻撃をかわさなければならず防戦一方になっていた。
ロアルドは女に近づいた。召喚魔法を使ったのならそれを回収する手段があるはずだ。それとも時限によって自動的に召喚獣は消えるのか? まさかずっと召喚魔法を放ち続けてそれをやめたら回収される仕組みでもあるまい。
そう考えてロアルドは女の魔法を見た。そして確かに回収する魔法があることに気づいた。
これを自分が使ったら召喚獣はどこへ行くのかな、と思い術式を解析して、それが女のところに戻るのだと知ることができた。
「では帰っていただこう」ロアルドは女の魔法をスナッチした。
三頭の雷獣は女の胸元の魔石へと吸い込まれていった。
ぎょっとする女。紙芝居の男女は追いこまれた。
ジェシカが地に降り立った。「観念しなさい」
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逃れられないと悟った者たちが敵味方構わず全て葬り去ろうと考えることをロアルドはこの時知った。
スナッチの圏内に近寄り、女が発動しようとしていた破壊性の魔法をそれが発動される直前に奪う。
次々と不発に終わる現象に女は慌てていた。
その一方で神官たちの攻撃も奪わなければならない。ロアルドはいつ息ができるのかと不安になった。
「逃がしてあげて」ロージーが言った。「楽しい紙芝居を見せてくれたのだもの、悪い人たちじゃないはず」
そうか、逃げ道を作れば事態は収拾する。
ロアルドは神官たちが敷いている結界を取り除くため彼らの結界魔法をスナッチした。
届かない範囲にいる神官たちには手は出せなかったが、結界は小さく弱くなった。
それを肌で感じた紙芝居の男女は閃光魔法を使った後、結界を突破して姿を消した。
「逃がしたか」ジェシカが大袈裟に言った。そして小声でロアルドとロージーに囁いた。「逃がしてやったのね?」
ロージーが頷いた。
捕り物は終わった。神官たちは不思議そうに顔を見合わせ、不機嫌さを隠さずにその場を去っていった。
「私たちに礼の一つもなし、か」ジェシカが吐き捨てるように言った。
「どうして教会の人たちはあの人たちを捕まえようとしていたの?」ロージーが無邪気に訊ねた。
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