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騎士科と魔法科の空中騎馬戦 プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院
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その日たまたま休講があった。そういう時ロアルドは図書館に行くのが常だったが、誰かが騎士科の空中騎馬戦の様子を見に行こうと言ったものだから仕官科の生徒男女入り交じって見に行った。
同じ一年生の魔法体育の授業だったが、想像の遥か上を行く過激な格闘技だった。
すでに試合形式で始まっていて、教官は暇そうにしていた。仕官科の生徒たちが見学に来たのを知ると「感心、感心」などと言って解説役を買って出た。
その暑苦しさに多くの見学者は困惑した。
「騎士科の空中騎馬戦は独特のルールになっている。キングとナイトしかいない。敵のキングを落としたチームが勝つという単純なルールだ。もはや頭脳戦はないな、ハッハッハ」
使っているステッキからして違った。仕官科の生徒が使っていたブルーム型ステッキではない。ほとんど棒状で先端に飛鉱石しかついていなかった。ジェシカが使っていたものに近い感じだ。
推進力は自らの魔力で得るようだ。そのステッキを左手で握って跨がり、右手には何らかの武器が握られていた。ソードやハンマーに見立てた木製の武器だ。
これで襲いかかって相手を落とすというから文字通り騎士による騎馬戦だった。
その戦いが頭上五メートルから十メートルのところで繰り広げられていた。
飛ぶ速度はそれほど速くはない。むしろブルーム型ステッキに乗る方が速い気もする。しかしここでは速さはあまり必要なかった。
対峙したら相手を倒すことしか考えない。一騎討ちを繰り返してキングのところまでたどり着き、キングを倒すという単純明快なルールだった。
「これ見ても意味なくね?」
「こんな連中と一緒にやるのかよ」という声が聞こえた。
中でもやはりアーサーは目立った。アーサーはキングになっていた。
キングは王冠を模したリングを頭にはめていて、通常陣地の最後尾に控えている。
アーサーは明らかに攻撃する側の人間で、キングをやるとは思えなかったが、アーサーのキングはやはりアーサーのキングだった。自ら相手陣地に突入し、斬りかかる敵を返り討ちにしていた。それはもはや常識破りのキングだった。
「あのキング、凄いな」
まさに一騎当千。一人で十人の敵ナイトを倒し、敵のキングを狩った。
「彼は規格外だよ。上級生でも敵わない」教官は笑った。「しかし参考にならないと決めつけるものではない。彼の位置取り、相手との間合いの取り方、これは参考にすべきだ。まず彼は常に背後をとられないように動いている。横の動きは必要最小限で身を回転させるのが上手い。そして間合いの取り方、相手の武器が長ければ懐に入る。知っての通りソードにしろスティックにしろ根っこや先っぽは威力が半減する。武器には最も威力の出る部位がある。それを考慮して相手の間合いに入らず、自分の間合いに相手を入れる動きをしているのだ。これは参考にすると良い」
教官は説明して悦に入っているが、仕官科のルールでは武器を持たないのだけれど、と誰もが思っただろう。
アーサーの凄さだけが目立ち、あまり参考にならなかった。
「あっちで魔法科の三年生がやっているからそっちの方が参考になるかな。武器の使用がないからな」その代わり魔法は使うようだ。
他の生徒とともにロアルドは移動した。
魔法科もまた三竦みではなかった。クイーンとウィッチというようだ。男子生徒がなってもクイーンと言っている。このクイーンを落とせば勝ちのルールだった。
使える魔法はエアロ、ファイア、サンダー、アクアの四種類のみ。本来推進するための魔法だがそれを攻撃に使って良いことになっている。
「ただし、サンダーを直接相手の体に当てるのはファウルだ」教官がついてきて説明を始めた。どうも教官は暇なようだ。
「サンダーはステッキに落とすのだけが許されている」それにしたって感電するだろうと誰もが思った。
どうも防御魔法で身を守るのが当たり前になっているようだ。仕官科の生徒には無理な仕様だった。
そしてここで目立ったのはジェシカだった。
ジェシカはウィッチとして先陣にいた。試合開始の合図とともにすぐに飛び出す。そのスピードたるや誰もついていけない。そしてそのまま敵のウィッチが大挙しているところへ斬り込んでいった。
空気弾やら水流弾やらを撒き散らし、敵ウィッチに体当たりを食らわし、騎士科顔負けの力業でクイーンに迫った。男子でさえ圧倒する凄まじさだ。
相手クイーンは男子だったが負けていなかった。一騎討ちをせんとばかりに突っ込んできた。
ジェシカは寸前で身を翻したかと思うと、驚くべきことに相手クイーンのステッキの先端に立ち乗った。
ジェシカが跨がっていたステッキはジェシカ自身が頭上に握りしめていた。それを斜め上から振り下ろす。
相手クイーンは身体強化した上でそれを受け止めたが、そのまま上体ごと倒され、ステッキから落ちていった。
相手クイーンのステッキはジェシカが足の指で挟んで放さなかったのだ。もちろん強化魔法で足指の力を強化したのだろうが、それにしても自分の乗り物を武器にして相手の乗り物を奪うとはとんだ強奪犯だ。
「あれはアリなのか?」当然のように疑問の声が聞こえた。
「魔法科のルールでは武器は持てないが、自分が乗るためのステッキを武器代わりにしてはならないとは明示されていない」と教官は言ったものの、呆れていた。「ステッキをぶつけて倒すのがありだから、まあ許されるのだろう」
「怖いよ、あんなのと当たりたくない」
「生徒会長の妹だってよ」
「生徒会長はもっと過激なのだろうな」
ロアルドは耳を覆いたくなった。
同じ一年生の魔法体育の授業だったが、想像の遥か上を行く過激な格闘技だった。
すでに試合形式で始まっていて、教官は暇そうにしていた。仕官科の生徒たちが見学に来たのを知ると「感心、感心」などと言って解説役を買って出た。
その暑苦しさに多くの見学者は困惑した。
「騎士科の空中騎馬戦は独特のルールになっている。キングとナイトしかいない。敵のキングを落としたチームが勝つという単純なルールだ。もはや頭脳戦はないな、ハッハッハ」
使っているステッキからして違った。仕官科の生徒が使っていたブルーム型ステッキではない。ほとんど棒状で先端に飛鉱石しかついていなかった。ジェシカが使っていたものに近い感じだ。
推進力は自らの魔力で得るようだ。そのステッキを左手で握って跨がり、右手には何らかの武器が握られていた。ソードやハンマーに見立てた木製の武器だ。
これで襲いかかって相手を落とすというから文字通り騎士による騎馬戦だった。
その戦いが頭上五メートルから十メートルのところで繰り広げられていた。
飛ぶ速度はそれほど速くはない。むしろブルーム型ステッキに乗る方が速い気もする。しかしここでは速さはあまり必要なかった。
対峙したら相手を倒すことしか考えない。一騎討ちを繰り返してキングのところまでたどり着き、キングを倒すという単純明快なルールだった。
「これ見ても意味なくね?」
「こんな連中と一緒にやるのかよ」という声が聞こえた。
中でもやはりアーサーは目立った。アーサーはキングになっていた。
キングは王冠を模したリングを頭にはめていて、通常陣地の最後尾に控えている。
アーサーは明らかに攻撃する側の人間で、キングをやるとは思えなかったが、アーサーのキングはやはりアーサーのキングだった。自ら相手陣地に突入し、斬りかかる敵を返り討ちにしていた。それはもはや常識破りのキングだった。
「あのキング、凄いな」
まさに一騎当千。一人で十人の敵ナイトを倒し、敵のキングを狩った。
「彼は規格外だよ。上級生でも敵わない」教官は笑った。「しかし参考にならないと決めつけるものではない。彼の位置取り、相手との間合いの取り方、これは参考にすべきだ。まず彼は常に背後をとられないように動いている。横の動きは必要最小限で身を回転させるのが上手い。そして間合いの取り方、相手の武器が長ければ懐に入る。知っての通りソードにしろスティックにしろ根っこや先っぽは威力が半減する。武器には最も威力の出る部位がある。それを考慮して相手の間合いに入らず、自分の間合いに相手を入れる動きをしているのだ。これは参考にすると良い」
教官は説明して悦に入っているが、仕官科のルールでは武器を持たないのだけれど、と誰もが思っただろう。
アーサーの凄さだけが目立ち、あまり参考にならなかった。
「あっちで魔法科の三年生がやっているからそっちの方が参考になるかな。武器の使用がないからな」その代わり魔法は使うようだ。
他の生徒とともにロアルドは移動した。
魔法科もまた三竦みではなかった。クイーンとウィッチというようだ。男子生徒がなってもクイーンと言っている。このクイーンを落とせば勝ちのルールだった。
使える魔法はエアロ、ファイア、サンダー、アクアの四種類のみ。本来推進するための魔法だがそれを攻撃に使って良いことになっている。
「ただし、サンダーを直接相手の体に当てるのはファウルだ」教官がついてきて説明を始めた。どうも教官は暇なようだ。
「サンダーはステッキに落とすのだけが許されている」それにしたって感電するだろうと誰もが思った。
どうも防御魔法で身を守るのが当たり前になっているようだ。仕官科の生徒には無理な仕様だった。
そしてここで目立ったのはジェシカだった。
ジェシカはウィッチとして先陣にいた。試合開始の合図とともにすぐに飛び出す。そのスピードたるや誰もついていけない。そしてそのまま敵のウィッチが大挙しているところへ斬り込んでいった。
空気弾やら水流弾やらを撒き散らし、敵ウィッチに体当たりを食らわし、騎士科顔負けの力業でクイーンに迫った。男子でさえ圧倒する凄まじさだ。
相手クイーンは男子だったが負けていなかった。一騎討ちをせんとばかりに突っ込んできた。
ジェシカは寸前で身を翻したかと思うと、驚くべきことに相手クイーンのステッキの先端に立ち乗った。
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相手クイーンは身体強化した上でそれを受け止めたが、そのまま上体ごと倒され、ステッキから落ちていった。
相手クイーンのステッキはジェシカが足の指で挟んで放さなかったのだ。もちろん強化魔法で足指の力を強化したのだろうが、それにしても自分の乗り物を武器にして相手の乗り物を奪うとはとんだ強奪犯だ。
「あれはアリなのか?」当然のように疑問の声が聞こえた。
「魔法科のルールでは武器は持てないが、自分が乗るためのステッキを武器代わりにしてはならないとは明示されていない」と教官は言ったものの、呆れていた。「ステッキをぶつけて倒すのがありだから、まあ許されるのだろう」
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