スナッチ ボクに魔力はありません 王都学院の異端児

hakusuya

文字の大きさ
52 / 86

破天荒なジャマ― プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院

しおりを挟む
 ジェシカのチームにフランツがいるとは思わなかった。これもまた生徒会もしくは学院の意向が働いたのだろうか。
 マチルダとしてはジェシカにフランツを監視してもらいたかったのだろうが、それをジェシカが嫌がっているという。なるほど自分も遠慮したいなとロアルドは思った。
 攻守交代してオスカーがジャマーとして空中トラックに入った。審判が合図するまで敵味方とも入り交じって周回している。ジャマーであるオスカーが最後尾について開始されるのだ。
 一方守備側になったためにトラックから引き上げているジャマーのフランツはジェシカの横に立って話しかけていた。
 ロアルドはその二人から十メートル以内にそっと身をおいた。
 フランツがどれほどの魔法をいつでも撃てるように準備しているか調べるためだった。
 精神支配系の魔法を持っていないかも気になる。ジェシカを気に入ってそうした魔法を使わないとも限らないと睨んでのことだった。
 なぜか以前にもこれと似たようなことをした記憶がある。ああそうか。先日図書館でグレースに文献検索を手伝わせている教授の魔法を覗いたのだ。あの時は何ら問題はなかった。
 厳しい態度で接してきてもやはり姉たちのことを心配してしまうのか、とロアルドは思った。
 そうしてフランツの魔法を覗いたのだが、何も問題はなかった。そもそも精神支配系魔法を持ち合わせていないようだ。
 それどころか今にも撃ち出しそうな魔法は何一つ用意されていない。完全にジェシカに対して気を抜いており、周囲にも無警戒だった。魔法ではなく女好きのオーラを感じてしまったくらいだった。
 拍子抜けしたロアルドは、開店休業状態のフランツの魔法の器をもっと良く見た。
 趣味でコレクションしたのかと思うくらい様々なタイプの魔法が穏やかな海に沈めるように仕舞いこまれていた。
 中にいくつかおやっと思う魔法が見つけられた。これはいったい何に使うのか? どういう状況で使われるのか? ロアルドの興味はそこに向けられた。
「さて、攻守交代だ。行ってくるよ、ジェシカ」
 投げキッスでもしそうな顔を惜しげもなく見せて、フランツはありふれたタイプのステッキに跨がり、飛び上がった。
「どうだった? 覗いていたのでしょう?」ジェシカがロアルドに訊いた。
「緊張感のない人ですね。姉さまといる時の彼は全く敵意を持たないばかりか隙だらけでしたよ」
「そういう調子の狂う人なのよ。でもスイッチが入ったら豹変する」
「それを見てみたいですが、僕には届かないようです」
 すでにフランツは上空のトラックで周回していた。
 反時計回りに九つの影が飛んでいる。
 フランツが最後尾についた。審判が始まりを宣言する。
 フランツが加速しながら敵味方四人ずつを抜いていった。このはじめの追い抜きは得点として加算されない。これはあくまでも加速のための飛行だ。
 先頭にたち、もう一度最後尾についてからが敵プレイヤーを一人追い越すごとに一点が入っていく。
 ただしトラックは魔法結界によってドーナツ状に区切られており、その断面は直径七メートル。その中にいる状態で追い越さなければ得点として認められない。結界の枠からはみ出ても飛行は可能だが、枠内で抜かなければ得点にならないのだ。
 枠内であれば外からでも内からでも、上でも下でも可とされていた。
 敵ブロッカーが四人、上下内外、手を繋ぐようにしてブロックしていた。そこに隙間はほとんどなかった。これを得点になるかたちで抜くことは困難だった。
 こうした場合は、味方プレイヤーが敵ブロッカーに体当たりを食らわしたりして道を空けさせることになる。
 フランツはアーサーたち四人のブロッカーの後ろについた。
 フランツの味方プレイヤーが一人フランツの傍を飛んでいた。かなり体格の良い男子だ。彼がアーサーたち四人に後ろから体当たりを食らわせるのかと思ったら。フランツがその男子を自分の前に入れて高出力のエアロで前へ噴き飛ばした。
 魔法は敵プレイヤーを攻撃するために使用することは認められていないが、この場合は味方プレイヤーだ。飛ばされた男子はアーサーたち四人のど真ん中をぶち破った。その瞬間でき上がった穴をフランツは高速で突っ切って行った。
「すごいパワーですね。あの巨体をエアロで吹き飛ばすとは」ロアルドは感心した。
「破天荒なのよ。ふだんは理屈っぽく、理詰めで動くタイプなのに」ジェシカが言った。
「いや、たぶん、計算してやっていますよ」オスカーが傍に来ていた。「我々のブロッカーはアーサー以外は脆弱ですから。頑丈な壁が前にあったらあのような選択肢はとらなかったと思います」
「ふうん、そうなんだ……」ジェシカが横目でオスカーを見た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...