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破天荒なジャマ― プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院
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ジェシカのチームにフランツがいるとは思わなかった。これもまた生徒会もしくは学院の意向が働いたのだろうか。
マチルダとしてはジェシカにフランツを監視してもらいたかったのだろうが、それをジェシカが嫌がっているという。なるほど自分も遠慮したいなとロアルドは思った。
攻守交代してオスカーがジャマーとして空中トラックに入った。審判が合図するまで敵味方とも入り交じって周回している。ジャマーであるオスカーが最後尾について開始されるのだ。
一方守備側になったためにトラックから引き上げているジャマーのフランツはジェシカの横に立って話しかけていた。
ロアルドはその二人から十メートル以内にそっと身をおいた。
フランツがどれほどの魔法をいつでも撃てるように準備しているか調べるためだった。
精神支配系の魔法を持っていないかも気になる。ジェシカを気に入ってそうした魔法を使わないとも限らないと睨んでのことだった。
なぜか以前にもこれと似たようなことをした記憶がある。ああそうか。先日図書館でグレースに文献検索を手伝わせている教授の魔法を覗いたのだ。あの時は何ら問題はなかった。
厳しい態度で接してきてもやはり姉たちのことを心配してしまうのか、とロアルドは思った。
そうしてフランツの魔法を覗いたのだが、何も問題はなかった。そもそも精神支配系魔法を持ち合わせていないようだ。
それどころか今にも撃ち出しそうな魔法は何一つ用意されていない。完全にジェシカに対して気を抜いており、周囲にも無警戒だった。魔法ではなく女好きのオーラを感じてしまったくらいだった。
拍子抜けしたロアルドは、開店休業状態のフランツの魔法の器をもっと良く見た。
趣味でコレクションしたのかと思うくらい様々なタイプの魔法が穏やかな海に沈めるように仕舞いこまれていた。
中にいくつかおやっと思う魔法が見つけられた。これはいったい何に使うのか? どういう状況で使われるのか? ロアルドの興味はそこに向けられた。
「さて、攻守交代だ。行ってくるよ、ジェシカ」
投げキッスでもしそうな顔を惜しげもなく見せて、フランツはありふれたタイプのステッキに跨がり、飛び上がった。
「どうだった? 覗いていたのでしょう?」ジェシカがロアルドに訊いた。
「緊張感のない人ですね。姉さまといる時の彼は全く敵意を持たないばかりか隙だらけでしたよ」
「そういう調子の狂う人なのよ。でもスイッチが入ったら豹変する」
「それを見てみたいですが、僕には届かないようです」
すでにフランツは上空のトラックで周回していた。
反時計回りに九つの影が飛んでいる。
フランツが最後尾についた。審判が始まりを宣言する。
フランツが加速しながら敵味方四人ずつを抜いていった。このはじめの追い抜きは得点として加算されない。これはあくまでも加速のための飛行だ。
先頭にたち、もう一度最後尾についてからが敵プレイヤーを一人追い越すごとに一点が入っていく。
ただしトラックは魔法結界によってドーナツ状に区切られており、その断面は直径七メートル。その中にいる状態で追い越さなければ得点として認められない。結界の枠からはみ出ても飛行は可能だが、枠内で抜かなければ得点にならないのだ。
枠内であれば外からでも内からでも、上でも下でも可とされていた。
敵ブロッカーが四人、上下内外、手を繋ぐようにしてブロックしていた。そこに隙間はほとんどなかった。これを得点になるかたちで抜くことは困難だった。
こうした場合は、味方プレイヤーが敵ブロッカーに体当たりを食らわしたりして道を空けさせることになる。
フランツはアーサーたち四人のブロッカーの後ろについた。
フランツの味方プレイヤーが一人フランツの傍を飛んでいた。かなり体格の良い男子だ。彼がアーサーたち四人に後ろから体当たりを食らわせるのかと思ったら。フランツがその男子を自分の前に入れて高出力のエアロで前へ噴き飛ばした。
魔法は敵プレイヤーを攻撃するために使用することは認められていないが、この場合は味方プレイヤーだ。飛ばされた男子はアーサーたち四人のど真ん中をぶち破った。その瞬間でき上がった穴をフランツは高速で突っ切って行った。
「すごいパワーですね。あの巨体をエアロで吹き飛ばすとは」ロアルドは感心した。
「破天荒なのよ。ふだんは理屈っぽく、理詰めで動くタイプなのに」ジェシカが言った。
「いや、たぶん、計算してやっていますよ」オスカーが傍に来ていた。「我々のブロッカーはアーサー以外は脆弱ですから。頑丈な壁が前にあったらあのような選択肢はとらなかったと思います」
「ふうん、そうなんだ……」ジェシカが横目でオスカーを見た。
マチルダとしてはジェシカにフランツを監視してもらいたかったのだろうが、それをジェシカが嫌がっているという。なるほど自分も遠慮したいなとロアルドは思った。
攻守交代してオスカーがジャマーとして空中トラックに入った。審判が合図するまで敵味方とも入り交じって周回している。ジャマーであるオスカーが最後尾について開始されるのだ。
一方守備側になったためにトラックから引き上げているジャマーのフランツはジェシカの横に立って話しかけていた。
ロアルドはその二人から十メートル以内にそっと身をおいた。
フランツがどれほどの魔法をいつでも撃てるように準備しているか調べるためだった。
精神支配系の魔法を持っていないかも気になる。ジェシカを気に入ってそうした魔法を使わないとも限らないと睨んでのことだった。
なぜか以前にもこれと似たようなことをした記憶がある。ああそうか。先日図書館でグレースに文献検索を手伝わせている教授の魔法を覗いたのだ。あの時は何ら問題はなかった。
厳しい態度で接してきてもやはり姉たちのことを心配してしまうのか、とロアルドは思った。
そうしてフランツの魔法を覗いたのだが、何も問題はなかった。そもそも精神支配系魔法を持ち合わせていないようだ。
それどころか今にも撃ち出しそうな魔法は何一つ用意されていない。完全にジェシカに対して気を抜いており、周囲にも無警戒だった。魔法ではなく女好きのオーラを感じてしまったくらいだった。
拍子抜けしたロアルドは、開店休業状態のフランツの魔法の器をもっと良く見た。
趣味でコレクションしたのかと思うくらい様々なタイプの魔法が穏やかな海に沈めるように仕舞いこまれていた。
中にいくつかおやっと思う魔法が見つけられた。これはいったい何に使うのか? どういう状況で使われるのか? ロアルドの興味はそこに向けられた。
「さて、攻守交代だ。行ってくるよ、ジェシカ」
投げキッスでもしそうな顔を惜しげもなく見せて、フランツはありふれたタイプのステッキに跨がり、飛び上がった。
「どうだった? 覗いていたのでしょう?」ジェシカがロアルドに訊いた。
「緊張感のない人ですね。姉さまといる時の彼は全く敵意を持たないばかりか隙だらけでしたよ」
「そういう調子の狂う人なのよ。でもスイッチが入ったら豹変する」
「それを見てみたいですが、僕には届かないようです」
すでにフランツは上空のトラックで周回していた。
反時計回りに九つの影が飛んでいる。
フランツが最後尾についた。審判が始まりを宣言する。
フランツが加速しながら敵味方四人ずつを抜いていった。このはじめの追い抜きは得点として加算されない。これはあくまでも加速のための飛行だ。
先頭にたち、もう一度最後尾についてからが敵プレイヤーを一人追い越すごとに一点が入っていく。
ただしトラックは魔法結界によってドーナツ状に区切られており、その断面は直径七メートル。その中にいる状態で追い越さなければ得点として認められない。結界の枠からはみ出ても飛行は可能だが、枠内で抜かなければ得点にならないのだ。
枠内であれば外からでも内からでも、上でも下でも可とされていた。
敵ブロッカーが四人、上下内外、手を繋ぐようにしてブロックしていた。そこに隙間はほとんどなかった。これを得点になるかたちで抜くことは困難だった。
こうした場合は、味方プレイヤーが敵ブロッカーに体当たりを食らわしたりして道を空けさせることになる。
フランツはアーサーたち四人のブロッカーの後ろについた。
フランツの味方プレイヤーが一人フランツの傍を飛んでいた。かなり体格の良い男子だ。彼がアーサーたち四人に後ろから体当たりを食らわせるのかと思ったら。フランツがその男子を自分の前に入れて高出力のエアロで前へ噴き飛ばした。
魔法は敵プレイヤーを攻撃するために使用することは認められていないが、この場合は味方プレイヤーだ。飛ばされた男子はアーサーたち四人のど真ん中をぶち破った。その瞬間でき上がった穴をフランツは高速で突っ切って行った。
「すごいパワーですね。あの巨体をエアロで吹き飛ばすとは」ロアルドは感心した。
「破天荒なのよ。ふだんは理屈っぽく、理詰めで動くタイプなのに」ジェシカが言った。
「いや、たぶん、計算してやっていますよ」オスカーが傍に来ていた。「我々のブロッカーはアーサー以外は脆弱ですから。頑丈な壁が前にあったらあのような選択肢はとらなかったと思います」
「ふうん、そうなんだ……」ジェシカが横目でオスカーを見た。
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