御堂藤学園二年D組あかね組

hakusuya

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生徒会室

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 翌日、東矢泉月とうやいつきが助っ人をしてくれそうだと佐田に伝えたら佐田は目を見開き、テンションが高くなった。すぐにでも東矢のところに挨拶に行きたいと言うので明音は付き合わされることとなった。
 他の生徒なら一人でも行っただろうに東矢はやはり特別なのだ。
 そして東矢は昼休みなど長い休憩時間は生徒会室にいるので明音と佐田は昼休みに入って三十分くらいしたところで生徒会室まで出向いた。
 生徒会室には東矢以外に、会長の舞子まいこ、広報担当の一年生三井寺みいでらと、なぜか新聞部の天埜あまの部長ともう一人新聞部部員がいた。どうもランチをとりながら新聞部と会合していたようだ。新聞部の定期取材だったのかもしれない。
泉月いつき
「あら小早川さん、佐田君を連れてきたわけね」
 昔は東矢も「明音」と下の名で呼んでいたことがあったが今は違う。明音が東矢を「泉月」と呼んでも返しは「小早川さん」だった。
「天埜さんもご一緒でしたか」これは好都合といった顔を佐田はした。「女子剣道の親善試合、よろしくお願いします」
「ほう、東矢にも声がかかったのか」と天埜部長が口を挟んだ。隣にいた新聞部部員がメモをとる。それを促すためにわざわざ声に出したわけだ。
「え、何事?」と顔を上げたのは生徒会会長舞子実里まいこみのりだった。
「秀星学院との剣道親善試合に東矢殿と天埜さんに助っ人をお願いしたのです。快く引き受けていただき感謝します」決定事項であるかのように佐田は言い切った。
「待て待て、私は最後の一人がどうしても見つからない時に引き受けると言ったのだが」天埜が言うと「私もそうです」と東矢が続いた。
「ですからそれで最後のピースが埋まりました」白々しく佐田が言うので明音は失笑した。
 確かゆずりはも同じことを言っていたはずだ。最後の一人が三人いることになる。
「楪さん以外に二人いるんだよね?」明音は佐田に念を押した。
「一年生の正規部員と君だ!」明音は佐田に思い切り指を向けられた。
「ちょ、ちょっと待って。私はダメって言ったじゃん!」
「そこを何とか、助けると思って。せっかく入った一年生の活躍の場を奪う権利は我々にはない」
「『我々』の中に私も入ってるの? ひどくない?」
「話になりませんね」東矢が吐き捨てるように言った。「一年生部員には可哀相ですが部としての体裁すら整っていないのでは問題外です」
「ありやあ……」佐田は丸い頭を抱えた。
 相変わらず段取りが悪い。明音は少し同情したが自分が巻き込まれていることを知って佐田の味方になることを躊躇した。
「まあ、待て」と口を開いたのは生徒会長の舞子だった。「その正規部員の一年生というのはどういう奴だ?」
 生徒会室にいる時の舞子はボスの威厳がある。中等部時代も東矢や三井寺と一緒だったこともあり、東矢も三井寺も舞子の信望者だった。だから東矢も三井寺も黙って成り行きを見守った。
「高等部からの新入生です。身長百七十超え。すでに二段を所持しております。剣道の強豪校からも勧誘を受けていた手練てだれで、どこへ出しても恥ずかしくない戦果を上げるでしょう。わが校の秘密兵器です」
「君、盛ってないよな?」舞子はわずかに笑みを浮かべた。
「滅相もない」
 芝居がかった佐田の言葉は割り引いて聞かなければならない。明音は佐田に横目を向けた。
「そんな娘がなんでわが校に?」舞子は疑問を口にした。
「もちろんわが校の校風に憧れて」
「清楚、清純、可憐な淑女たるべき、とかいうやつか?」舞子はあやふやにしか覚えていないようだ。
「おっしゃる通りです」佐田は調子が良かった。悪のりにも見えるがこれが佐田の素なのだ。
「ではこうしよう」舞子が提案を始めた。「その一年生が、たった一人でも剣道部を名乗るに匹敵する人物で、わが校にて剣道で名を馳せたいと思っているなら天埜と東矢、そして浅倉にフォローを頼むことにしよう」
「は? 私もですか?」浅倉と呼ばれたことは無視して明音は舞子に訊いた。
「頼むよ、明音。私と君とは長い付き合いじゃないか」そうでもないが、とは言えなかった。
 東矢も含めた中高一貫生は一度は舞子の世話になっている。特にいわゆる「S組」と呼ばれた一団は舞子の子分のようなものだった。頼まれて断れるものでもない。
「天埜と東矢には剣道の練習風景を見に行ってもらおうか」
「私は構わないが」天埜が言った。
 脇にいる三つ編み眼鏡の新聞部部員がひたすらメモをとっていた。記事にするのだろう。天埜は記事になるのなら少々のことは何でもする。面白い展開ならなおさらだった。
 東矢はこの時もまた無表情だったが異を唱えなかった。かくして明音はこのイベントに巻き込まれた。
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