御堂藤学園二年D組あかね組

hakusuya

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チームあかねの寄り道

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 球技大会前の最後の自主練習を放課後に終えた後、明音は守崎菜生もりさきなおに誘われるまま学園最寄駅のファミレスに寄った。
 弟妹は二十九階で夕食をお世話になる日だったことと、ゆずりはもいて、さらに三宅と片倉もいるフットサルのメンバー五人そのまま寄っていこうという話になったからだ。
 本来制服のまま寄り道して店に入るのは校則違反になるのだが、教職員に見つかったらその時はその時と皆が言うので明音はそれに従った。
 本音を言うと、ゆずりはがいるところに片倉と三宅がいる状況が大丈夫なのかと思ったのが最大の理由だった。守崎はそこのところは問題ないとみているようだった。
 席は二人掛けの小テーブルを三つ使う形となったが、店員が全てくっつけて六人掛けにしようとしていたのを、明音が四人掛けと二人掛けに分けて、四人掛けに女子三人、二人掛けに男子二人にして、片倉と三宅を楪からできるだけ遠ざけようと配置した。
 ところが、男子二人から最も遠い位置に楪を坐らせたのに、その前に片倉が移動してきた。
 すると三宅が露骨に嫌な顔をして拗ねたので、仕方なくテーブルが三つ繋がり、明音の右に楪、楪の前が片倉、その隣の明音の対面が守崎、明音の左に三宅という配置となった。明音はすっかり四人に囲まれることとなったのだ。
「なんか、身動きとれないところに詰め込まれた感じ」
「オレ、替わってやろうか?」三宅が嬉しそうに言った。
「いや、良いよ、これで」
 そんなことをしたら片倉と三宅で楪を囲むことになってしまう。それだけは避けたかった。
「何、食べるかな」
 三宅がメニューを見ている。明音の左にいて一緒にメニューを見る格好となった。
「え、食べて帰るの?」守崎が訊いた。
「腹減ったし」三宅が答えた。
「オレも食うわ。マイは?」さりげなく片倉が楪の方を窺った。フットサルを終えても名前呼びが定着していた。
「私も何か食べて帰る」
 楪が夕食をとることに守崎は意外な顔をした。
「何が良いのかな」楪は片倉が楪に向けたメニューを覗き込んだ。
 二つしかないメニューが、二つとも明音と楪の方に向けられた格好となった。
「それだったら、私のお勧めはね」明音はでしゃばることにした。
 結局守崎も食べて帰ることになり、弟妹たちの食事の支度をしなくて良い明音も皆に倣うことにした。
「そういや、アカネ、ファミレスのバイトしてたんだよな?」三宅が訊いた。
「そうよ、同じチェーン店。だからメニューは完璧。全部食べたことがあるわけではないけれどね」
「そうだったんだ。で、どこの店?」
「教えなーい」
「家はどこ?」
「教えなーい」
「つれないなあ」
 明音はメニューを守崎の方に向けて、お勧めをいくつか教えた。
「私もバイトしてみたいな」メニューを見ながら守崎が言った。「許可がおりそうにないけど」
「親の収入で許可が出なかったりするからね。うちも来年は無理かな」明音は言った。
「成績も維持しないといけないから大変だ。明音は大丈夫だろうけど」
「うん、必死。だから毎日真っ直ぐ帰る」
「双子の面倒みてるんだよね?」
「うん」
「今日は大丈夫なの?」
「近所にみてくれる家があるから。でも毎日って訳にはいかないよ。だから球技大会の練習も今日で終わりかな」
「アカネの家、大変なんだな」
「だから誘わないように」
「日曜日はどう?」三宅は懲りなかった。
「だから日曜日はバイトだって」
「オレもバイト、手伝いに行くよ」
「あんたは邪魔しそうだなあ」
「言えてる」守崎も頷いた。
「ソンナコトナイヨ」三宅は白目をむいた。  
「マイは?」と楪に訊いたのは片倉だった。
「何?」楪はぼおっとしていて、バイトの話題を聞いていなかったようだ。
「日曜日、ヒマ?」
「忙しい」
「忙しいんだ。何をやってるの?」
「本を読んだり、ゴロゴロしたり」
「ヒマじゃないの?」
「ゴロゴロするのに忙しい」
「え」片倉が絶句するのを見て、明音と守崎は笑った。
「休みの日に、ゴロゴロして好きなことをするのは、大切なこと。とても大事な気分転換」楪は真顔で言った。
「外に出かけるのも大事な気分転換だと思うよ」
 楪はムッとしたような顔で黙った。明音にはとても可愛い顔に見えたが、片倉にはそうではなかったようだ。
「籠っちゃったよ」片倉が呟いた。
 食事が運ばれてきたので、食べる方に集中した。
「そういえば、三宅も片倉も部活はしてなかったよね。だからヒマなんだよね?」守崎が訊いた。
 守崎は沈黙を嫌う。だからそこに三宅や片倉しかいなかったとしても話しかけたりする。三宅や片倉が女子を名前呼びするのに対して、守崎は男子を名字で呼び捨てていた。
「入ってないこともないよ」三宅が言った。「掛け持ち幽霊部員」
「へえ、どこ?」
「物理部、とか」
「物理部って、ゲンキがいるところか」
 明音は思い出した。全く意識しない部活だが、部活名を聞くとそこに所属する部員の顔が何名か浮かんでくるのだ。
「そうそう、げんき組の生出元気おいでげんき。知ってるの? 明音」
「中一の時同じクラスで、班も同じだったし」
「へえ、あいつA組にいたことあったんだ。目立たないのにな」
「でも三宅が物理部にいるのは鶴翔かくしょうさんがいたからだよな」片倉が横槍をいれた。
「なるほどね」守崎が笑った。「わかりやすい」
「鶴翔さん、物理部にもいたんだ」明音は驚いた。「あのこ、いくつ部活やってるの。チアダンス部に助っ人団に、学級委員もやってたよね?」
「げんき組の、G組の顔だよ」
「そんな子目当てに物理部に入るとは、三宅も手をひろげすぎ。そんなだから女子にひかれるんだよ」守崎がはっきりと言った。
「別に良いだろ」
「三宅の趣味みたいなものだな」
「そんな感じであちこち部活入っているのね?」明音は呆れた。「忙しいね、ホントに。どこかに出かけてる場合じゃないじゃん」
「やりこめられてるな、三宅」片倉が他人事のように笑った。
「お前だっていろいろ入ってるだろ」三宅は明音と守崎の間を通って最も遠い位置にいる片倉に言った。「ゲーム部とか」
「ゲーム部?」明音は気に留めた。「ボードゲーム研究会?」
「じゃなくて、リアルゲーム同好会だよ」
「そんな名前のマイナー部活、確かに聞いたことあるような」
「マイナーって言うな、小原さんだって入ってるよ」
「梨花が?」小原梨花おはらりかはずっと同じグループにいた仲間だ。
「そう、ボランティア部の小原さん。レクリエーションのゲームとかやってるんだよ、面白いよ、見に来る?」片倉は再び楪の方を向いた。
「私、ゲーム、苦手」
「そういう人もいるけど、やってみたらみんな面白がるよ」
「ホントかどうか、今度私が梨花に訊いてみる」明音は楪に言った。
 ここでは楪の保護者を明音や守崎がしなければならない。
「人狼とか王様ゲーム、やってそうだね」
「ソンナコトナイヨ」
「オレっちとしては、映画とか舞台とかコンサートに行きたいな」
「三宅のことは知らないよ」明音は冷たく言った。
「つれないなあ」
「三宅が調子良すぎる」
 いろいろと文句を言ったが、久しぶりに男女混じってダベったので気分転換にはなった。去年まではこうして毎日のように仲間とつるんでいたのだ。
 食事を終えた。
「また来ようぜ」三宅は軽く言う。
「ないわ」明音は即答してから「でも、まあ、楽しかったよ」と付け加えるように言った。
 守崎や片倉は驚いた顔をして、三宅は小躍りした。
 こいつはつけあがるなあ、と明音は思い、三宅を無視して店を出た。そして自宅マンションまで帰った。
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