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お見合いパーティー その1
しおりを挟むキラキラと眩しい光景が広がっている。
姫様達の柔らかい髪が風に煽られ靡いており、身につけている宝石が陽光をチカチカと反射する。
彼女達は皆、豪奢な長い髪で、美しいドレスを身にまとい、嫋やかな笑顔を浮かべていた。
「……」
園庭の所々に、護衛と給仕役の獣人がちらほらと居るが、どの獣人も顔を顰めて、不機嫌そうに耳をへたりと下げていたり、姫様達を視界に入れないようにしている。
あれは、多分、姫様達の香水と宝石が原因……かな。
かく言う私は、そういった装飾はしていないけれど、完全に場違いな装いだ。
格好がラフすぎたのだ。
だって、仕方ないんだよ?
ここへ来る道中の船は、気ぐらいと身分が高い姫様達の荷物がいっぱいで、私の部屋なんて倉庫のようなものだった。それに、従者が居ない状態で、化粧品やら、精巧な作りのアクセサリーなど、持ち運べる余裕がなかったのだから。
……でもまぁ、あそこまで、着飾ってアピールしている姫様達は、十三年前の政変で負けた派閥の血筋だろう。
中心で固まってお茶を飲んでいる子達は、女王陛下の命令で、数合わせに呼ばれたのかな。
……しっかし、この土地は暑いなぁ。
パタパタと手で自分を扇ぐ。
土地に足を踏み入れた時から、体調が悪くなる子達がいたけれどわかる気がする。 なんと言うか暑さのせいで、風邪を引いている時と似たような感覚がするのだ。
さすが、世界一魔力が強い土地と言われているだけある。この土地にずっと居たら、耳としっぽが生えてくるのも納得出来るね。
私は、暇なのでここに来ることになった経緯を思い出した。本当にあっという間に過ぎた怒涛の一ヶ月だったように思う。
ある日の事、私の住んでいる、公爵邸へと、王宮からの手紙が届いた。
タリスビア獣族国への嫁入り候補に決定したと。
そもそも、私の住んでいるマナンルーク王国は、タリスビア獣族国と同盟関係にある。
名前の通りタリスビアは、獣人の国で、魔力豊富なこの土地と獣族特有の力によって人間の国など比べものにならないほど強い。いくつもの人間の国を戦争で蹴散らしてきた強国である。
方や、マナンルーク王国は、小国なのに毎度毎度、王座の取り合いで内戦を起こし、さらに国力を弱めている人族の国。
タリスビアは、マナンルークが拒否でき無いことを知っていて、マナンルークの人族の姫の嫁入りを要求してきた。
獣人は元々、魔力の影響と言われているが子を産む数が少ない。けれど多くの戦争によって死亡する数が増え、人間と交わって数を増やそうと言う狙いだと、ずっと私の面倒を見てくれていた、婆やがぼやいていた。
そういったわけで、私のいる場所は、獣族の王子に嫁ぐ姫を決めるための大規模なお見合い会場だ。
タリスビアという強国相手に立場の弱い私たちマナンルークの姫は、選ばれるかも分からないのに、遠路はるばる船に乗せられ、ここ、タリスビア王宮までやってきたという事だ。
そんな横暴な獣人相手でも、政変での負け組の姫様達は必死だろう、王座に近づくことも出来ず、家は困窮、ここでタリスビアの王妃にでもなれれば、一族を立て直すことが出来る。
それだけ、強国なのだこの国は。
「しっかし、だるいよねぇ」
私は、欠伸を噛み殺して、椅子の背もたれに体を預ける。
そのままテーブルに置いてある、お菓子を引っ掴んで、口の中に突っ込んだ。
「だらしないにも程があるでしょう!淑やかになさい!」と婆やの声が聞こえて来そうだ。
味の薄いクッキーは、口の中の水分を奪うだけ奪って、飲み込むのが大変だ。
しかし、なんで外でのお見合いパーティーなんだろう。いい陽気だから、私は文句ないけれど、色々と不便じゃないだろうか。
……やっぱり獣人だから?これだけ姫様達がいて声が室内で反響したらうるさそうだもんね。
下働きの半獣人達も大きな音やきつい香水が苦手だった、きっとそういう理由だろう。
屋敷の人達を思い出す。私が居ないのできっと、休暇が取れてのんびりと過ごしているのだと思うが、迷惑をかけるとわかっていつつも早く帰りたい。
……一人ぼっちの宿は心細いんだ。
もうちょっと私の身分が高ければ、従者の一人や二人は連れてこられたと思うのだけど。ね。仕方ない、私はこの中で一番下位の人間だ。大人しく、終わるのを待つしかない。
座り直して、先程までのように、王子にアピールする姫様達を眺める。
すると、妙な動きをしている、獣人が目に入った。
焦げ茶色の毛色で、立ち耳の先っぽがちょっとだけ折れている子犬みたいな耳をした、立派なしっぽのワンコ……。
じゃなくて!
キリッとした顔立ちに、優しげなブルーの瞳、がたいが良くて、格式の高い服装をしている……あ、あれも、王子様じゃん。
確か、クルス王子。
イヌ科かな、あー……いいね!
短毛なので、もふもふは期待できないが、あのなんとも、可愛い先の折れた耳よ。見てるだけで癒される、出来ることならば触りたい。フニフニしたい。
こんな事を王子に思うのは、不敬にあたるかもしれないけれど、言葉にしなければ自由だ。獣人は耳がいいので、呟くだけでも下手な事を口走ってはならない。これは、鉄則!
それで……彼は一体何をしているんだ。
クルス王子は、一人一人をじっと見つめて、右手の甲を確認する。
右手の甲という事は、聖痕を確認しているのだろう。私もなんとなしに自分の手の甲を見てみるが、私には、それが無い。
王の血族たる証、神に認められている証拠これがマナンルークでは、王位継承権に大きく関わる。要は、地位の証明書みたいなものだ。
王族には、生まれつき右の手の甲に魔法火傷のような複雑な文様が、刻まれている。血が薄すぎると、私のように現れない姫も居る。
それに、もはや公爵家に養子入りした、私を姫と呼べるのかどうかは、微妙なラインだ。
……いや多分、王族じゃないんだけど、タリスビアに呼ばれたって事は、血筋だけは、姫なんだからタリスビアに送る姫の数に入れとけって呼び出されたんだろう。
面倒な血筋よね。全く。
はぁ、とため息を付いて、右手の甲をこすこすと摩っていると、全員を確認し終わったのか、クルス王子は、分かりやすくガックリと肩を落として、自分の付き人の元に戻る。
遠くにいるので話し声は聞こえないが、付き人は慰めるような仕草をした後に、端の方にいた私に気がついて、あそこにまだ見てない奴がいるぜ!的な仕草をした。
すると、ぴこんっと耳を立ててクルス王子は、ズカズカと私の方へ歩いてくる。
げっ!きた!
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