お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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お見合いパーティー その5

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 彼は、ひくっと頬をひきつらせて、私を哀れみの表情で見ながら、カトリーナ姫の後を追う。
 
 姫達は私が犯人、そういう事になったと安堵しているが、獣人達の動きは違う。
 私には用が無くなったというふうに、その場にいた獣人は、皆、犯人の姫たちの方へと向かっていった。
 
「きゃぁぁっ」
「何をするのですかっ!」
 
 背後で悲鳴が上がる。
 
 ……少し考えれば、わかる事だ。
 獣人は、私達よりはるかに五感が良い。
 姫様達は香水を吹きかけた時点で、少なくとも自分たちのドレスにもその香りは付着している。
 香水を投げ捨てるなりしても、残り香はする。
 
 私からは匂いがしなかったのだろう、そして嘘を言って、カトリーナ姫を援護した二人。
 犯人がわかってしまった。
 
 何も言わなければ、まだ、うやむやに出来たかもしれないのに。
 
「何か、証拠があるのですか!この無礼者っ、獣風情が、わたくしに触れるなどっ」
 
 ドゴッと背後から音が聞こえる。
 なんでそういう事を言うかな姫様達は。獣人を獣と罵るなんて、一番の侮辱じゃないか。
 
「いやぁぁっ!!」
「えっ」
「ッ……うそ」
 
 甲高い悲鳴がこだまする。
 青い空、心地いい日差しにまったくもって似合わない悲痛な声。
 振り返るのが怖くて、私は、その場で目を瞑る。
 
 心臓がどこどこと音を立てて、連鎖していく恐怖の空気に、震える唇を噛み締める。
 
 すると、サクサクと芝を踏みしめてこちらへ向かってくる足音が聞こえた。
 肩をとんとんと叩かれる。
 
 目を開くと、眼前にはランランと輝く金色の瞳。
 豪奢で優雅なしっぽをふわりと揺らして、私の顔を覗き込む。
 
「ロイネ……だったかな。……俺、君にしようかな」
「は……?」
 
 おもむろに私の頬に触れて、顎を持ち上げる。
 何を言ってるんだ、この王子様は。
 
「お嫁さんにしてあげるよ。人間と何日も交流するなんて面倒だしね。……それに、あの子達が捕らえられたらそんな雰囲気じゃくなるでしょ」
 
 愉快そうに笑った彼を凝視する。

 本当に、何言ってんのこの人。

 背後の喧騒は収まらない、悲鳴はやまない。悠長に結婚相手を選んでいる場合じゃない。王子ならこの騒ぎを収めるのが仕事だろう。
 
「そ、そんな……事、今、してる場合ですか」
「……さぁ?いいんじゃない、どうせ目障りだったし。人間なんて見てるだけで不快でしょ?明日もこんなパーティが続いたら俺、気が狂っちゃうよ、あははっ」
 
 ……え?
 ええ?

 私、こんな人と家族になれないんだけど。
 絶対に嫌なんだけど。
 

 ルカ王子は背後の混乱を心底、可笑しそうに目を細めて眺めている。
 
「あぁ、そうだ。ほら、人間!俺が選んであげたんだら、喜びなよ」
 
 彼は、私の頭を掴んでうりうりと前後に動かす。
 彼の言葉を理解しようとするのだが、脳が処理を拒否しているように頭に入ってこない。
 
 けれど、このままお嫁に貰われちゃまずいと言う事だけはわかる。
 
 後先考えずに、その手を叩き落とした。
 咄嗟に、立ち上がって全力で駆け出す。
 
 何処に逃げたらいいのか、まったくもってわからなかったが、一応走った。この場から逃げたところで、意味などないのに、逃げ出さずにはいられなかった。
 
 
 
 
 
 
 
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