お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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マーケット その1

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 馬車の行き交う音、露店商の客引きの声。そこかしこに沢山のお店があり、興味をそそられる光景にワクワクと胸が高鳴る。
 
「ふ、ふおお!」
 
 それに、見渡す限りの獣人!
 お耳としっぽが揺れており、通り過ぎる時にだいたい私に視線を向けて、ひそっと言葉を交わす。
 
 カンジ悪いけれど、今はそんな事はどうでもいい。
 
 タリスビア獣族国に来て、初めてのマーケットだ!
 広場から続く道は、商店街になっていて、どの道を歩いても楽しそうだ!
 
「ずごいよ!私、城下町なんて初めてっ」
「ふふ、はぐれないでくださいね、姫様」
「僕も久しぶりに来ました」
 
 マティは、私の手とリノの手をしっかりと握って、親のように言い聞かせた。リノは耳をピコピコと色々な方向に向けていて、興奮していることが分かる。
 
「まずはどこから回りますか?」
「え……ええと、あ、露店みたい!」
「はい、欲しいものがあったら、言ってください」
「うんっ」
 
 身長の小さい私とリノは、マティより少し後ろを歩く。
 
 露天は、何やら怪しげなマジックアイテムを売っているお店や、マナンルークで見た事も無いような装飾品を扱っている店、よく分からない骨董品屋とバリエーション豊かだ。
 そのどれもがキラキラとしているように見えて、同じ部屋で何日もすごしていた私からすれば、目新しいものは楽しくて仕方がない。
 
 今日、マーケットに来た目的は、獣人を知ろうという目的がある。風邪を引いて以来、私は、人間について二人について一生懸命話した。
 が、そもそも、私も何が違うのかよくわからなかったため、あまり実のある話ができなかったのだ。
 
 そこで、思いついた。まずは私が、獣人を知ればいい。そして、違うところを二人に話すのだ。だって、この国は獣人だらけだもの、その方が効率がいい。
 
「お、おお」
 
 マーケットを歩いていくと、物販から、飲食物の店舗が増えていく。
 中には、牛の生首が飾ってあり、ただいま切り分けましたとばかりに血やお肉が売っているお店がある。
 
「マティ、あのお店」
「はい、行きましょうか」
「ち、違う、もしかして、お肉、生食するの」
「そうです、火を通さない方が、栄養があるのですよ」
「姫さん、そういえば、お肉あんまり食べない」
「うん、多分獣人より胃が弱い?のかな、苦手です」
「心得ました」
「わかった」
 
 火を通してないお肉をマナンルークでは、一度も食べたことがなかったので、食べられない理由を考えるのが大変だったが納得してくれたようだ。
 多分、正しいはずである。
 
 そのお店を見ながら通り過ぎると、ごつっと人にぶつかってしまう。
 
「あだっ」
「あ゛?」
 
 見上げると、だいぶ柄の悪い狼さんだった。
 
「す、すみませ」
「おい、なんだ、ガキ。人間じゃねぇか」
 
 少し目を見開いて、私を見下ろす。人間だから、なんだというのだろうか、その呼び方は、嫌いだ。
 男は、ふとマティに視線を移して、それから、その奥のリノを見る。
 
 そして、しっぽをぶわっと逆立てて、軽く中腰になった。
 
「すみません」
「へ」
 
 一言、しっかりと謝罪をして、足早に去っていく。
 ど、どうしたのだろ。リノがめちゃくちゃ怖い顔でもしたのかな?
 
 疑問に思って振り返るが、いつものリノだ、可愛い。
 
 不思議だなぁ。……じゃないっ。ちゃんと質問しよう。
 
「リノ、なんで柄の悪気狼さんは、急に態度変えたの」
「僕が睨んだから」
「リノってそんなに怖い顔してる?」
「顔じゃにゃいです」
「……もしかして姫様は、圧力が見えないのですか」
 
 トコトコと歩きつつ、マーケットを見渡しながらマティと話す。
 
 圧力って、目に見える物じゃないような気がするけれど、どういう意味だろう。連想されるものと言えば……。
 
「お鍋?」
「ええ?」
 
 圧力調理器の事では無いらしい。
 マティが戸惑った声を出した。私はマーケットの見物を続けつつ話を聞く。
 
 あ、なんか雑草みたいなのだけ売ってるお店がある。
 
 雑草を花束みたいにして売っているのだ。価格はお安い、なんだろう家に帰って植えるのかな。
 
「獣人の纏う、魔力の層みたいなものです」
「ふむ」
「それが大きければ大きい程、魔力の強い獣人だと分かります。圧力が見えないと、相手の力量も測れませんが……」
「見えてないです」
「左様でしたか」
「圧力の揺れで、動揺してるとか、怯えてるとか、怒ってるとか分かります。人間はそれがにゃいから視線の位置、両手の配置、鼓動でどんにゃ事考えてるか分かる」
 
 ……リノがすごい。
 なんだか、メイド業より護衛が向いてるような気が……。
 
 あ、露店で猫の獣人が葉っぱ買った。
 
 猫の獣人は、それをむしゃっと食べた。
 もくもくとよく噛んで、またもそもそと口の中に入れる。なんだあれ、私が世間知らずなのか、もしくは異文化かのどちらかだろう。
 
「リノは、感度が高いですから、参考にはしないでください、実際は、強いか弱いかぐらいしか分からないものです」
「じゃあ、リノはあの狼さんより強い圧力が出てるの」
「ええ、そうです。……本当に見えてないのですか……。驚きました」
「うん、まったくです。リノは可愛いだけだと思ってた」
「スカートはいてるからじゃにゃい?」
「え?」
「可愛いってたまに言われるにゃ」
 
 スカートじゃなくても可愛いと思うが、ううん。これは異文化ではなく個性かな?
 スルーで!
 
 よしっ次だ!
 
「あの露店は───
 
 そこからマーケットをぐるぐると回って、色んな違いが見つかった。正直、下町を歩いたぐらいで、こんなに見つかると思ってなかったので獣人をどんどん知れる楽しさに、何時間も歩き回った。
 



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