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遊猟会 その2
しおりを挟む兎にも角にも、自分がテーブルにつかない事には、遊猟会を始めることが出来ない。
幼子に向ける、見守るような生暖かい視線を同じ歳の獣人から向けられていようが、知ったことか!
私は、とことこと歩いて案内されたテーブルにつく。
遊猟会と聞いていたが、さしてお茶会と変わらないセットだ。お茶とお菓子、軽食がある、ただそれにしては使用人の数が多い。シェフらしき者もいるので、狩ってきた動物をその場で調理するのだろうと言う事はわかる。
私が着席すると、皆も少し安心したように、腰掛ける。
が、しかし、私は進行役ができないのだ。
主催者側では無く、ほぼ招待客と同じような立ち位置だ。お義母さまが仕切ってくれると予想していたけれど、このままでは、初遊猟会デビューが、ものすごく気まずいものになってしまう!
そもそも、遊猟会とは何から始めたらいいのだろうか!気まずい笑顔を浮かべていると、お茶が出される。
せめて開会の一言ぐらい言わなければ、お茶だって呑めないだろうよ!
な、なんかお義母さまから聞いていたりしないだろうか、えっと。カミーユ。ちら、と彼の方を見ると、私の焦りを感じ取ったのか、ピンと耳を立てる。
可愛い仕草だが、そのお耳は、一体なんの動物だい?
そして君、すごくハンサムだね。
なんだろう、できる貴族男性って感じだろうか。まだ、成人はしていないのだろうけれど、女性人気がありそうだ。
「ロイネ様、まずはお茶でも飲みながら、自己紹介をさせてください。お互いの事を知れば、緊張もほぐれましょう」
「よ、良い案デスね!の、飲みましょうお茶!みんなの事も知りたいです!」
「ありがとうございます」
私は、緊張でパサパサだった口をお茶で潤す。
まさか目線だけで、SOSを察知してくれるとは、中々に出来る人だ。
獣人社会でもこういう人は、出世するんだと思う。
けれどやはり、先程の言い方だと、お義母さまから進行役を任されているという事は無さそうだ。
……そんな都合よくいかないよね、わかってましたとも。
自己紹介タイムを出来るだけ引き伸ばしたいが、昼時で腹も空いている。皆だって、この遊猟会を楽しみにしてきたのだろう長話をするのもマナー違反の可能性もある。
どうしたものか。
「では、私から、レアード公爵家。カミーユと申します。ロイネ様のお話は、父から聞いておりましたが……これ程までに愛らしい方だとは驚きました」
人あたりの良さそうな笑顔で、先程までの私の言動を愛らしいと表現される、さすがにほめ言葉ととれるほど私の神経は図太くない。
……愛らしいか……これでも王族の端くれ、威厳ある態度を教えこまれてきたけれど、まったく身になっていない模様。
だがしかし、こうなってしまっては仕方無い。タリスビアでの私の肩書きは、王族では無く、人間が一番最初にくる。人間の姫だし、人間の婚約者である。
「カミーユも素敵なお耳ですね、とっても可愛い」
その人間が、真っ当に社交をしていても、常識の違いが大きな壁なのだ。一緒に楽しんで交友を深めるのなら、距離を詰めた方がいい。
初手でこちらを捕食者の目で見てくる子がいたから、タジタジになってしまったが、机についてしまえば怖くない!
コミカルに!そして、子供っぽく、だ。
まともに社交していたら、人間だから出来ないよ!とか、その常識知らないんだけど!とは言えない。
知っている風を装っていたらいつか、痛い目を見るのは自分だ。
異文化交流、頑張っていこう。知らないことは知らないと、できないことは出来ない、と伝えていかなければね!
カミーユは、初対面で外見のことを言われると思っていなかったのか、少し目を見開いた後、ちょっとだけ嬉しそうにクスッと笑う。
「そうでしょう?私の家系の自慢です」
「あら、家系によってお耳の形は決まるのですか?」
「そのように親類で調整している、貴族もおりますが、種族関わらず、自由結婚の家系もあり、様々です」
へぇー、そうなんだ。確かに、なんの獣になるのかって、両親に依存する物なんだと思うし、近親者で、結婚をするのもうなずける。
「そうなんですね、知りませんでした。ありがとう」
「いえ」
会話を区切ると、カミーユの隣に座っている。丸くて小さい耳でふわっとした茶髪が特徴的な、青年が口を開く。
「ロイネ様、僕は、バルトロヴァー侯爵家。ディーテです。ご挨拶させて頂けてこ、光栄です」
どうやら彼は緊張しているらしい。丸いお耳がペタンと下がっている。ついでに、先程見たのだが、しっぽがまるっとしていてふわふわだ。
狸ちゃんだと思われる。文句なしに可愛い。
少し怯えたような、表情も、頑張って笑おうとしている姿も、なんか可愛らしい。前髪が長くて顔がよく見えないが、美青年だ。
「ディーテですね。あまり緊張しないでください。私まで、お耳が下がってしまいそうだから」
まぁ、人間の耳は動きませんがね!
何となく、ジョークだ、ユーモアだって時には必要だろう。
「……っ、……??」
ディーテは人間ジョークに、必死に意味を考えているのか硬直して、結局、何と返したらいいのかわからなかったらしく、顔を青ざめて、怯えたような表情を見せる。
あ、あちゃー。やってしまった。
「や、やだな、ジョークです。すみません」
「は、ははっ……あははっ」
私がジョークだと言った途端、壊れたように、ディーテはから笑いをして、涙をうかべた。
思っていたよりだいぶ、臆病な子らしい。
これ以上は、触れない方がいいだろう。
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