お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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ロイネの話 その4

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 先日ルカと話をした時と同じだ、目が回る。
 それが、酷くなっているような気がして、椅子に座っているのか、中に浮かんでいるのか分からない。
 
 ちょっと。まって、待って、ダメだ、ふわふわする。
 
「わかった、考えるのを一旦、止めようか」
 
 肩に触れられると、その部分を軸にして、感覚が戻ってくる。
 
 止める、辞める、考えない、考えない。考えないという事を必死に考えて、今まで掘り起こしていた感情を押し流す。
 
「っ……ぅ、……はぁ」
 
 頭を抱えて、目を瞑る。平衡感覚が戻ってくると、妙な浮遊感もなくなって、夢から現実に戻ってきたような心地に安心した。
 
 な、なんなんだこれ、体が考えることを拒否している?いや、それだけでこんな症状が出るのか?何かがおかしい。自分の体の事なのに奇妙すぎて、少し怖い。
 
 私の頭は、どうかしちゃったの?
 手を離して見ると、小刻みに震えていた。
 
「……戻ったね」
「ね、ねぇ、ルカ、私ちょっと変じゃない?」
「ちょっとじゃないよ、結構おかしい」
「だ、だよねぇ」
 
 彼の方を振り返ると私を覗き込むように、見ていた。彼から見ても変だったらしい。
 
 ルカは、軽く私の首に手を添える。多分また、熱を測っているのだろう。
 
「熱は無いかな……じゃあ続けよう」
「ほ、ほんとに?」
「話すと言ったのは君でしょ、それとももう辞める?俺は、構わないよ」
 
 構わないって……そんなの当たり前か、私が言い出したことだ。私が話さないと言えばそれまでだ。
 
 でも、話してはいけないと思う、それなのにやはり、心の端っこの方で、痛いぐらい強い感情が逃げるなと主張する。
 
 怖すぎる、今までこんな事、一度だってなかった。屋敷で静かに暮らしていたあの時には、こんな思いはしなかった。ただ続いて行く日常に身を任せて、屋敷の中で決められた運命を辿るだけだった。
 
 それで良かったのかも、それが正解だったのかも、だから、こうして外に出て、妙な事を考えないように、体が反応するのかもしれない。
 
 そう考えてみると、緊張していた体が和らぐような、緩やかなまどろみの中にいるような、優しい心地良さが体を包む。
 
 ……嫌だ。こんなの嫌だ。
 
「はなす、話すから、聞いて」
「わかった……話題を振ろうか」
「うん」
 
 ルカは私から目をそらすことは無く、それから考える素振りも無く、次の話題を降った。
 
「クリスティナ女王の事を教えて」
 
 心臓の鼓動が大きくなる、建前ではなく、私自身が思っていることを考えなければならない。
 一応、彼女は一国の女王だ、国政などの情報を話などしたら、死罪ものだが、私は、私と彼女の関係以外は、まったく知らないので問題は無いだろう。
 
 クリスティナ様は、完璧な人だ、美しく、聡明で、非の打ち所がない。そして、十三年前の政変の勝者。歳は私より少し上だが、天才と言う言葉が似合うほどに、頭が回る。
 人を味方につけるのが上手くて、常に彼女の周りには、大勢の人がいる。

 現在のクリスティナ様は、手仕事による庇護を与えて、自分の地盤を強化している、らしい。
 万全になるのも時間の問題だ。
 
 そして、何を考えているのか、よく分からない。
 私の公式の庇護者は、養父であるテラスト公爵だが、実際は、クリスティナ様だ。
 
「私の……」
 
 親のような人でもない、肉親のような暖かさを感じたことは無い、あえて言うのなら。
 
「所有者、みたいな」
 
 居場所も用意するし、定期的に様子を見に来るし、話もするが、私を人間……だと、思ってない。
 部屋に鍵をつけたのも、貴族らしい長い髪を切らせたのも、家族を探させないようにしたのも、クリスティナ様だ。
 
「所有者、ね。けど、君もわかっているんでしょ、彼女と自分の関係性」
「そりゃ……分かるよ、年の差的にも、親は無い、けど他人では絶対にないって、わかってる」
「理由も口に出してみて」
「……似てるから、私と、クリスティナ様は、似てるよ、すごく」
 
 一目で家族だと分かる顔だ。そんな人間が、私を気にかけていれば、一目瞭然だ。そしてそれが、周囲に、バレないようにか、歳を重ねるにつれ、私は、他の貴族と会うことが少なくなっていった。
 
 隠しているのだとわかっている、家族を探してはいけない事もわかっている。けれど、どう考えても、目をそらすことはできない事実だ。
 
 そこから、考えれば、姉だと言うことを前提にして考えると、全ての冷たい行動は、その関係性を隠すためのカモフラージュだと、分かる。
 
「そうだね、そして、君は?実姉の元に帰りたいと望んでいるという事?」
「……そう、だよ。事情があって、辛く当たっていたのだって、分かるし……そ、そう、だから、屋敷の人達の事もクリスティナ様が、居れば、わたし」
 
 大丈夫。だと、反射的に考えた。
 自分の価値は、クリスティナ様に愛されることだけだ、それ以外で私は、あの彼女の冷たい笑顔以外は、何も望んでいないはずだ。
 





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