お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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似た者兄弟 その2

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 私は、布団に入ったまま、ルカに声をかける。
 
「ルカ、私、エクトルに話があったの、少しでいいんだけど……」
「……」
「お願い」
「……ルカ様」
 
 私が声をかけるとエクトルもしめたとばかりに、ルカに視線を向ける。
 やはり話があるのだろう、二人に請われて、ルカはしばらく不機嫌そうにしっぽを左右に揺らしたあと、医務室の中に戻って、診察をする時に座っている椅子に腰掛けた。
 
 そのまま頬杖をついて、まだしっぽを揺らしている。
 
 ……話をしていいって事……かな?
 手短に済ませた方がいいだろう。ルカの機嫌が良くなさそうだし。
 
「エクトル、アンジュに私の手紙が届かない理由を知りませんか」
 
 特に深く考えずに、疑問を述べた。家族のエクトルなら、両親が手紙を破棄しているとか、接触禁止だと言っているとか、何かしら証言してくれるのではないかと思った。
 するとエクトルは、やはり獣らしい瞳を釣り上げて私を威圧するように睨んだ。
 
「知っています」
「……」
 
 知っていると言うか、まさかエクトルだろうか。
 だって、今日もずっと睨んできていたし、そういえば、彼とはしっかり話をした事もないのに嫌われている。

 今だってこんな感じだ。
 
「貴方が、もしかして、止めているんですか」
「はい、ですが、ユスティネ様には、不躾ながら話は通しています。しかし手紙を送るのを辞めるように言うのは、私の義務だと言われました」
「……やめませんけれど」
 
 初対面の時より、幾分穏やかな口調だが、威圧的という事に変わりはない、私はベットで上半身を起こしているだけの状態なので、物理的にも見下ろされている。
 
「あの、アンジュの、と言うか、二人のご両親はなんと言っていますか?」
「知りませんが、そもそも、貴方が知る必要も無いと思います」
「そうですか、まあ、いいか……こちらに来たらどうです。いつまでも立ち話はなんでしょう。お茶も出せませんけれど」
 
 そばにある、丸椅子に視線を移す。高圧的な態度ではあるけど話は出来そうだ、とりあえず、視線の高さを合わせたい。
 
 しっかし、ルカしかり主従揃って、やな奴である。二人は何か?人間に親でも殺されたのか。
 
 なわけないか、この国には人間だって少ないし、人間は獣人に対して、何か出来るほどの力を持っている人は滅多に居ない。

 エクトルは渋々といった具合に、こちらにやってきて座る。
 
 なんというか、動きが警戒している野良猫のようだ。私から視線を外さずに、移動したり椅子に座ったりする。疲れないのかな、そんなに警戒していて。
 
「それで、何故、そんな事をするのですか」
「……こちらこそ、何故、アンジュを望むのでしょうか」
「質問に質問で返さないでください」
 
 話がごっちゃになって進まないから、やめて欲しい。
 私が彼と同じように睨み返すと、一瞬怯んだように、視線を逸らして、それから、私の疑問に返答が返ってくる。
 
「……アンジュは、妹は、出来のいい自慢の妹です、そんな妹が道を踏み外そうとしていれば、正すのは当然だと私は考えています」
「私の従者になることが間違いだと、言いたいのですね」
 
 ……よくそんなことが言えるな。人間だからってなにを言ってもいいと思っているのか、なんなのか。ルカには忠義を尽くしているようだけど、さすがに、こんな言われ方をしたら怒った方が自然だよね。
 
「……エクトル、人には言っていいことと悪いことがあるでしょう。子供のように感情に任せて、誤解を産む言葉を口に出すのは、得策では無いでしょ」
 
 クリスティナ様の真似である。怒っている時こそ丁寧な言葉使い、言葉数を多くして、相手に反論をさせない。感情的に返せば、口論になってしまう、私はあまり頭の回転が早くないので、それは良くない。
 ゆっくりと正論だけで続ける。
 
「分かりやすく教えてくれませんか、エクトルは私が手紙を出さないように説得しなければならない。それなのに敵意だけ示して、険悪になって何か得がありますか?」
 
 彼にとっても、話し合いで解決すべき問題のはずだ。

 私は獣人のルールなどに疎い、なにかアンジュを私の付き人にするのに、不都合がある可能性もある。
 熱で少しだけ頭がぼーっとするが、すぐに薬を飲んだので、それほど辛くはない。気張っていかねば、こんなに敵意ある人と対等に話すことは出来ない。
 
 背筋を伸ばして、彼と目線を合わせる。
 私にとっても、大事な事だ。
 
「……」
 
 睨み合いのような時間が続き、しばらくすると自分に落ち度がある事を認めるように、エクトルは耳を伏せた。
 
「ありません、無礼な発言を取り消させてください」
「はい。……何故、アンジュを付き人に望むのかでしたね。エクトルがそれを阻止ようとする理由が分からないので、見当違いの答えになるかもしれませんが、良いですか」
「……構いません」
 
 ……エクトルは、初対面の時、人間に対する敵意を感じた。けれど、何度か会ってみると、ルカを侮辱する者に対する従者としての敵意だったことが分かる。

 それに……初対面の時に私を罵った言葉もなんだかルカに、似ていた。故意に真似をして、私を威圧していた可能性がある。
 
 孤児院へ来ても子供たちにも、カイリやレーナに酷い態度をとることは無かった。……エクトルは人間が特別嫌いだとは思わない。
 
 私個人にアンジュを仕えさせたくない理由があるように感じている。……まぁ、その肝心の理由がなにか分からないのだけど。
 
 思っている事を言うしか無いのだろう。
 
「簡潔に言うのなら、真っ直ぐな性格が好きだからです。家族の貴方からしたら彼女の何を知っているんだ、という気持ちになるかもしれないけど」
「確かに……そうですね。実直な性格をしていると思います。ですが、そのうえ繊細な部分もあります」
 
 心底真面目にエクトルはそう返す、人は誰しもそうだろう、と思うが突っ込むような事はしない。
 



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