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似た者兄弟 その3
しおりを挟む……それで結局、何が言いたいんだ?
「……幼い頃、アイメルト侯爵令嬢と仲が良く、何度も茶会や遊猟会に出かけていました」
「は、はい?」
突然の話題に、私は間抜けな返事を返した。アイメルト侯爵令嬢とはノーラのことだろう。
「その時に協力して狩った獲物は、たいそう立派だったそうで、公爵令嬢とまた、こうして同じ獲物を狩ろうねと約束をしたようなのです」
「うん」
「その後、アンジュは、狩場からその獲物の親兄弟を探し出し、数年前まで飼育していました」
「……」
「満を持して獲物を放ち侯爵令嬢にサプライズで、遊猟会にて振舞ったそうですが、侯爵令嬢は全くその約束を覚えなかった、とアンジュは落ち込んでおりました」
エクトルは、しんみりとその時を思い出すように、目を瞑って思い出に浸る。
落ち込んでおりましたって、え?
落ち込んで、それで、なんだ?
どういう事だろうか。
アンジュが、ちょっと方向性を間違えた頑張り方をしている事が問題なんだろうか。たま、この獲物狩ろうねという約束自体、人間の私からすると奇妙な話に思えるし、それを何年も飼育するアンジュも私からするとよく分からない感性だ……いやいや!多分そこじゃない。
「そ、そう、ですか」
「はい、そういう可愛らしい一面もある、女の子なんです、真は確かに強いですが、細やかな気遣いも得意なんです」
「……と、いうと?」
「お聞きになられますか!」
興味本位で、続きを促すと、彼はまた、自慢げにそして、なんと言うか、少々ムカつく顔で、身を乗り出した。
「あれは暑い夏の事でした。俺が、暑さに当てられて風邪を引いた時の事。幼いアンジュは、俺の体調不良に、いち早く気が付き、屋敷中の廊下を引きずるようにして駆け回ってくれました……応援してくれる彼女の声を忘れたことなど、一度もありません」
それはいじめでは……。
あ、違うんだった、一緒に走るのは、獣人風の看病だったっけ。つまりは、付きっきりで看病してくれたんだぜと言う……自慢?
私が黙っていると、エクトルは、まだ口を開く。
「アンジュが直接締めた、家畜のスープは、俺にとって無類の味でした。今でも、遊猟会でアンジュが取ってくる獲物は一部、職人に頼んで皮などで日用品を作成し、大切に使っているのです」
あーなんだっけ、風邪の時に出てきた血のスープの事だろう。アンジュに仕えて貰ったら、しっかりと、人間の常識を知ってもらわければ、物凄いことになりそうだ。
と言うかエクトル、なんか、性格変わりすぎじゃない?他人に厳しそうなイメージがあったのに、なんだこのデレデレっぷりは。
「そう……俺は、俺はっ!妹が、アンジュが大事で大事で仕方ないのです!貴方が来るまで俺は!アンジュと良好な関係を築けていたというのにっ!」
「喧嘩でもしたの?」
「違います!俺が貴方に剣を向けた話を聞いた途端アンジュは俺を無視するんです!こんな非道な事がありますか!俺は仕事だったのにっアンジュの主人になるだなんて聞いていないですっ初めから言っておいてくれないと、こちらだって対応があるんです!!」
そ、そんな無茶な。
エクトルは鬼気迫る表情で、私との距離を詰めた、その行動には見覚えがあった。やっぱり家族という事だろう。アンジュにそっくりである。
二人とも感情が高ぶると自分を制御出来ないらしい、瞳がギラギラと獣のように輝き、私を見つめている。
思わず、彼がいるほうとは反対側のベットの端へと移動した。
「このまま、貴方とアンジュが主従になって、ルカ様と不仲にでもなってご覧なさい!俺は一生、アンジュに、家族らしく接する事も!可愛らしくエクトルお兄様と呼んでもらう事もできなくなるのですよ!!」
よく喋るな、要は、私が主人になると自分が嫌われると言いたいのだろう。しかし彼の行動は、墓穴を掘っているような気がするんだけど、気の所為だろうか。
だって、ちゃんと謝罪して、私達の中を取り持つような事をしてくれれば、多分アンジュは、コロッと態度を変えるだろう。それを会う機会を奪い、私にアンジュを雇うなと言っている、これってアンジュが知ったら、無視どころじゃ済まないような……。
私がそう考えると、外から少し騒がしい声が聞こえて来る。
エクトルは気が付かず、如何にアンジュとの関係性が大事かを未だに語っている。
外の喧騒はやがて、足音に変わって、大きな足音が近づいてくる。
……何かあったのかな?
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