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幸福を願う その3
しおりを挟む「なんか凄い話聞いちゃったなぁ」
「そうか?マナンルークでは、ざらにある事なんだろ」
「そ、そうなのかな……?」
誘拐だの、殺人だのがしょっちゅうあるとしたら、私では多分、生き抜けなかっただろう。
しかし話を聞いた限り、クルスは、意外にもしっかりとクリスティナ様の事を覚えていた。
「そう言えばどうして、クリスティナ様の名前すら思い出せなかったの?」
「……さあな、致命傷を負った俺は、母上の手で治癒されたんだが、それから今まで、はっきりとした容姿や名前を思い出せなかった。ついさっきだ。お前から名前を聞いて、ようやく彼女の思い出が蘇った」
「きっかけが必要だった、みたいな事?」
「いいや……クリスティナが、お前を洗脳できたように、限られてくるが、記憶を操れる魔法が一応はある。その影響だろう」
魔法か……クルスの話を聞いていて思ったが、お義母さまは、多分、相当に高度な魔法を操れる。
そんな事件が起こって、自分の息子が致命傷を追って、更には、将来の約束までしていれば、記憶を消した可能性があると言うのもうなずける。
全てのクリスティナ様の記憶を消す事をしなかったのは、お義母さまなりの優しさだろうか。
私がうむむと考えていると、クルスはおもむろに私の手を取った、四つ目のマジックアイテムが出来たらしい。
「先程話に出てきたアイテムだ、任意の相手に投擲すると発動する。使う時は躊躇するな」
「う、うん。……それはわかったけど……私、凄いじゃらじゃら」
左腕に三つ、右手に一つだ。動かしづらいほど大きいわけでは無いが、こうも身につけるものが増えると気になる。
「我慢しろ」
「はぁい」
と、私も最後のひと針を縫い終える。これできっかり、お終いだ。本当に眠たいし、魔力だってカスカスだ。もうひと針も縫えやしない。
糸を切って、改めて見てみれば、色とりどりの花束のようなハンカチになっていた、到底、普段使いは出来ないだろう。
まぁ、いいか、クルスもこんなに私をじゃらじゃらにしたのだから、お愛顧である。
「おまたせ、私も縫い終わったよ」
クルスの手を取る。
彼はじっとハンカチを見て、表情をほころばせた。
「刺繍だらけだな」
「我慢してね」
「あぁ、構わない」
どうかクリスティナ様と上手く行きますように。
私は願いを込めて、あってないような魔力を放ちながら言葉にする。
「私の魔法があなたの助けになりますように」
暗い部屋に、魔法の光が飛び交って、クルスに降り注ぐ。クルスは驚きに目を見張って、それから穏やかに笑った。
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