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二人の事情 その1
しおりを挟む「ふえっ、ふうぅ、ふぇん」
独特な嗚咽を漏らしつつ、アンジュは私の膝の上で泣き続けている。
大きなつり目は、腫れぼったく、目尻は朱に染まっていた。
「アンジュの髪はサラサラですね」
「ふっ、ふぇぇん」
ここまで来たら、私と一緒にベットに入ってしまえばいいと思うのだが、床に膝をつき、膝枕をするように、私の太腿に頭を預けていた。
耳を撫で付けるように、頭を撫でていたら、いつの間にか、耳が伏せってお義母さまに撫でられている時のクルスのようになる。
可愛い耳だなぁ。
「アンジュ、いくら姫様が無事で嬉しいからと言って、迷惑をかけては行けませんよ」
「ふぅ、ふっ、うぅ」
何やらベットサイドのテーブルに、用意しているマティが、窘めるように声をかけた。けれどアンジュは、私の腰に手を回して、更に泣きじゃくる。
「このライオンしつこいにゃ。姫さんをはにゃして」
いつもより、気が立っているらしきリノが、アンジュの首根っこを掴んで、ブンと投げると、目を疑うような速度で、アンジュは部屋の端に飛んでいった。
着地と同時に、獣の姿になって、リノにぶん投げられた事も気にせず、そのまま駆けてきてベットに飛び乗り、私のそばで丸くなる。
「にゃぅるる゛」
「んふふ、変な声」
重低音の鳴き声に、思わず私は声を出して笑った。
脇腹辺りを軽く撫でると、ゴルゴルと喉を鳴らしながら、変な声で鳴く。
「姫さん、ここに手を置いてほしいです」
「ん、うん?」
私は片手でアンジュを撫でながら、反対側の手で、差し出された魔法道具に、手を載せようとしたが、すんでのところで思いとどまる。
両手で抱える程度の大きさの、魔法道具だ、上部にはガラスで出来た球体がはめ込まれており青緑に発色している。
美しい装飾からして、高度な魔法技術の入った道具だと思われるが、使用用途が分からない。
「こ、これどうしたの」
「ユスティネ様に貸し出して頂きました」
「あ、や、コレ何?」
「魔力原動契約機器です。姫様」
……なんだって?
私の知る限りでは、世界に数個しか存在しない、契約魔法の全てを肩代わりし、解除不可の契約を結ぶことの出来る……規格外の魔法道具である、魔力原動契約機器しか思い浮かばないのだけど……。
そうだと言われても、否定できないほど、重厚感のある作りだ、お義母さまが貸し出したと言うことは、私の知っているそれで間違いないと……思うのだけど。
「え、えぇ、……何に使うのコレ」
「姫様と私達に、生命の連動契約をするため使うのですよ。ささ、お手をどうぞ」
ん!?何だって??こんな高級品が出てきた驚きよりも、当たり前のようにマティが言った言葉の方が驚きである。
あまりの驚きに、自分の耳を疑う。
「せ、生命の?!」
「そうです。心配は無用です。私達の命を姫様と連動するのみで、姫様には全く無害ですから」
「そうにゃの。僕たち、姫様が死んだら一緒に死にます」
いや、いやいやいや。
それって、騎士が忠誠を誓う時とかに、やることじゃない。それも、こんな契約魔法道具なんか使わないし、命をかけて守るという宣言をするだけだ。
二人はメイドなのだから、そんな必要は毛頭ないし、もちろん、私が何かしらの理由で死んだとしても、元気に生きて欲しいのである。
「で、出来ないよ!そんな契約!」
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