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二人の事情 その3
しおりを挟む確かに私は言われた通り、二人の命を背負っていれば、危険を顧みない行動をしなくなるだろう。ルカに言われた事も覚えている。
彼は病気だと言っていたけれど、本当にその通りで、咄嗟に、私より誰かを、と考えてしまう。それを危惧して、ルカが私に家族になると言ってくれたように、リノとマティは生命の連動と言う形で、変えてくれようとしているのだろう。
貰ってばっかりだ。
優しくて暖かい情を貰ってばかりだ。
私も精一杯返して行くしかない。
「マティ」
「……姫様」
私は、ベットから降りて、マティの手を取った、リノの手を離れて、マティは膝をつく。
「まず……嬉しい。すごくね」
「……でしたら」
「でも、契約はしない」
「何故、ですか……」
私の手に触れるマティの手は震えている、悲しみに染まる表情に、私はすぐに言葉を続ける。
「マティが大好きだから」
「……それは、どういう意味なのでしょう」
「……説明するのが難しいんだけど、その、私ね。二人が私の事大切に思ってくれているから、こうして契約を持ち出してくれた事ちゃんと……わかってるつもりなんだ」
自分達が悲しみたくないから共に逝きたいという、願望では無く、私を止めたいと言う気持ちからだ。
「ううん……わかって、行きたいと思ってる。タリスビアに来てね。いっぱいの人が、私を大事だとか、傷つかないで欲しいって言ってくれて。私も、私を大切にしてきたいって思う。だから、二人の提案は、それを実行に移させてくれる、良いものだとも思う」
自分で喋っていて、こんがらがってくるけれど、本当に言っている通りで、クルスも、ルカも、お義父さまもお義母さまも、沢山の気持ちを私にくれる。
「でも、すぐには……きっと出来なくて、頑張るけれど、上手くいったり……行かなかったりすると……思ってて」
私は、自分の意思というものを手に入れてから、ほんの数ヶ月しか経っていない、赤ちゃんみたいなものだ。そのうえ、進歩が遅くて覚えも悪い。
「上手くいえなくてごめんなさい。でも、完璧に出来なくて……だから、背負っても、二人の命を預けられても、無駄にしていまうかもしれない」
「ですが!姫様!それ以外にどうしたらいいのですか!」
切羽詰まったように、苦しげな声でマティは私の手を強く握った。
「うん、だから、叱って欲しい。私が私を顧みなかった時、教えて欲しい。取り返しが付かなくなってから気がつくからさ、私」
「……」
「出来るようになったら、契約させて、私も二人を悲しませたくないよ」
情けなくって笑うと、マティはじっと私を見る。
何か言いたそうに、口を開くけれど、そのまま声を発する事は無く、数秒たって、一筋の涙を流しながら笑った。
「わかり、ました。約束ですよ。姫様」
「うん!」
話がまとまると、リノが激突する勢いで、私達をまとめてハグをしてきた。
「僕も約束するにゃ!」
「ヴァル!」
背後から、大きな獣がのしかかり、覆い被さる。
そう言えばアンジュもいたのだった。ふんわりと、柔らかい腹の毛が私を包み込み、ほのかに暖かい。
「わたくしも!じゃ、無いのですよアンジュ!貴方はちゃんと姫様に話をしなさい」
「そうにゃ、新参者の癖に図々しいの」
「ガルル」
問題児のアンジュに、二人は私に抱きつきながら、文句を言う、アンジュは気にしないとばかりに喉を鳴らしている。
三人分の命を背負うとなると、これは怪我のひとつもして居られないなと思った。
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