お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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二人の事情 その4

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「そんな感じで二人は、ルカに拾われたって事か」
「えぇ、幼かった昔のルカを娘は守ったのです、ルカに非が無い事も、娘がルカに好意を持っていたことも知ってましたから……」
「お守りすると決めたにゃ」
 
 私はベットの中で暇だったので、仕事をしているリノとマティに昔の話を聴きながら、読書をしていた。
 読書と言っても、本を開いている形を取っているだけで、今まで謎だった部分が、次々と明かされる話に興味が移ってしまっている。
 
「そっかぁ」
「ただ長年仕えていたのに、急に人間の姫に付けと言われた時には、驚きましたね」
「説明がすくにゃいし、ルカはルカで準備が忙しそうだったし」
「あ!その頃!エクトル兄様が、ルカ様が一番信頼を置いていた古参のメイドが居なくて荒れてるって言ってましたわっ」
 
 ソファで書類を広げているアンジュが、流れるように会話に入ってきた。
 
 この三人が居れば、ルカの情報は私に筒抜けになりそうだなと思う。
 
 しっかし、ルカは素直じゃないなぁ。一番信頼しているから、何するか分からない私に、二人を付けたのだろう。
 アンジュの言葉を聞いて、リノはしっぽを振りながら呟くように言う。
 
「そんな事一度も言われたことにゃい」
 
 マティはなんとも言えない表情で、困ったように笑った。
 
「まったく、素直に言って欲しいものです」
 
 言葉だけ聞いたら、それほど仲の良い主従には思えないけれど、表情や仕草で、信頼から来るものだと分かる。二人も案外、素直じゃないね。
 
 三人とも、というかそう言えば、エクトルも、あまりアンジュの事以外はお喋りなイメージは無い。ルカのお部屋は、主従揃って静かそうである。
 
 あ、でも、ルカはちゃんと言ってくれたんだ。
 家族にしてくれるって……言ってた。必要な事まで言わないのは困るけれど、ルカはちゃんと必要な時は言葉にしてくれる人だと思っている。
 
 ……なんか、思い出すと恥ずかしくなって来たな。
 
「うぅーん」
「あら、どうかなさいました?」
「あや、ふふ、ルカの事思い出したら、恥ずかしくなっちゃって」
 
 アンジュはベットのそばに来て私に書類を手渡す。イーリスの件の事後処理の書類をまとめて来てくれたらしく、私は本を閉じてそれを眺めた。
 
「クルス様のことではなくて?」
「ン、違うよ?」
「……ロイネ姫様、クルス様と……番ったの……です、よね?」
「へ……え?」
 
 そんな事あるはずも無い、何故、確認するように聞いていたのだろう、私は、ルカを選ぶと伝えているし、クルスにもそのように伝えた。
 多少、誤解と行き違いがあって、ゴタゴタしたが、一番マシな形に落ち着いたと思っている。
 クルスは、予定通りクリスティナ様の元にお婿に行って、ルカはこちらに残り、私と結婚。
 問題だったルカの言動や、人間嫌いについても、何とか……解決……した?
 
「も、もしかして、私ってクルスと結婚する事になってる?」
「正式な決定はされておりませんが、姫様とクルス様のご様子から、そうだとばかり……」
「姫さん、クルス様の守りでガチガチだから」
「クルス様からも、ロイネ姫様の魔力を感じましたわ」
 
 三人が、当たり前のように答える。
 あ、あれ、もしかして……いや、もしかしなくとも納得していたの自分だけか!
 
 クルスと私が納得していても、周りから見たら、一晩同じ部屋で過ごして、お互い贈り物をし合っていたら、そういう事だと納得するのは、当たり前じゃないか!
 私、あれ?じゃあルカって今、どう思ってるのだろう。
 
「違っ、違うんだよ!クルスは、間違いなくお婿に行くし!想い人は私じゃないし!わ、私……ルカが、ルカの事は……」
 
 好きなのだ。
 多分、結構前から、少しずつ心を許してくれた時、嬉しかった、家族になってくれると言われて、どれほど、心臓が高鳴ったか。
 
 肝心な事は言えずに、皆の前でルカが好きだからと宣言するのが恥ずかしくて、布団を握りしめて黙り込む。
 
「大切に、思ってるの……」
 
 恋とか、愛とか、がこれ程恥ずかしいものだとは、思わなかった。ただの政略婚であれば、こんな思いはしなかったのかも知れない、でも、嫌な事ではないのだ、ただ、羞恥の方が勝ってしまうと言うだけで……。
 
 私の言葉に、その場がしんと静まり変える、アンジュがマティに振り返り、リノもマティを伺った。
 そんな困る事だろうか、というか、本来なら付き人のアンジュが一番、側近の中で身分が高いのだからリーダーになるはずなのだが、完全にマティがリーダーである。
 
 マティは、それほど、迷わずに、私に視線を合わせる。
 
「でしたら……少しでも早く事情を説明してあげてくださいませ。姫様、ルカもきっと、待っていると思いますから」
「うん!ありがとうマティ」
「マティ……わたくしは」
「どうするかは、アンジュの判断に任せます。私に従わなくてもいいのですよ」
 
 煮え切らない態度のアンジュに、マティは優しく言った。私はその反応の理由がわからずに、首を傾げる。
 
 アンジュが口を開いた時、ちょうど扉がノックされる。
 ビクッと、彼女の肩が震えて「何でもありません」と笑った。アンジュが言わないと決めた事なら、深く聞く必要はないだろう。
 
 マティが扉を開いて、なにかメモらしきものを受け取り、話を聞くと、言伝だったのか、誰も入室してくること無く、来訪者は去っていく。
 
 マティは頬に手を当てて、メモをじっと見てから、そして私を見て、ピンとしっぽを立てた。
 
「姫様!ユスティネ様がお呼びです!すぐにご準備を」
「お義母さま?!どうしたの急ぎの用事?」
「マナンルークより来航中の使節団の方が、姫様をご所望なんだそうです」
「えぇ、い、行きたくないなぁ」
 
 直ぐにでもルカにコンタクトを取って、誤解を解くはずが、そう言えば、イーリスの件があってから、既に五日経過している。
 よくよく考えると、まずいような気がしてきたが、どうしようもない。今は目の前に迫っている問題に、私はベットから降りながら、頭を抱えた。
 
 



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