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呼び出し その1
しおりを挟むマティがノックをすると、すぐに扉が開く。
呼び出しがかかり、私は、部屋着から正装に着替えて、すぐに自室から飛び出した。手袋をしようか迷ったのだが、既にクルスにバレているのであまり意味はない、それに、マナンルークでは、聖痕を隠してしまう手袋をするのは、マナー違反になる、していると気分を害する者がいる可能性があるので外すことにした。
従者は三人とも連れてきている。使節団は、お義母さまが対応しているはずだ、歓迎パーティや諸々の席に、私は出席していなかったので、会いたいと言われれば、もちろん断ることは出来ないのだが、タイミングが妙だと思う。
私の体調が回復するまで、使節団も滞在予定のはずだ、マナンルークに帰る間近で、一目でもと言うのなら分かるが、回復してすぐに、呼び出されると言うのは違和感がある。
迎えは手紙で断ったのに、なんのコンタクトだろうか。
中へ入ると、お義母さまの付き人や護衛、使用人、それから、マナンルークの人間の貴族が連れている人間の側近がおり、大きな応接室が少し手狭に感じられる。
私も、お義母さまの隣のソファにかけて、向かい合っている、人間と目を合わせた。
「お久しぶりですでございます。ロイネ姫殿下。まずは、ご息災のようで何よりです」
「……」
相変わらず、地味な人だ。
騎士らしく凡庸な人、私の中で、この人への外見の印象はそれだ、けれど、この人が見かけによらず頭が切れて、少し怖い人なのだと言うことも、知っている。
「……ギルバート。心配ありがとう。貴方がいるとは思いませんでした」
昔、私の所に来る時にも、常にクリスティナ様に仕えていた、彼女の腹心だ。本来であれば、クリスティナ様のそばを離れてタリスビアに来るような人材ではないはず。
……なんで……私を呼んだの?
見知った顔なので、初対面の緊張は無いが、別の意味で緊張する、彼の動きは、クリスティナ様の意思そのものだ。親しみよりも警戒してしまうのが本音だ。
ドキドキと心臓の音が強くなる。
心配で様子が知りたかっただけなら、安心できるけれど、どうにも、別の理由があるような気がしてならない。
「えぇ、今回は特別に、使節団と共にこちらへ参りました」
「そうですか」
ギルバートが失態をして、クリスティナ様の側近から外されて、なおかつ、外交官にされた……という事では無さそうだ。
しかしとにかく、私のやる事は分からない。
「それで、要件は何でしょうか。私、他ならぬお義母さまからの要求でしたので、こうして応じましたが、これでも忙しいのですよ」
隙を見せないように微笑んで、お義母さまとの仲をアピールする、心配で呼びつけたのなら、大丈夫だよと言う意味だ、ここで虐げられたりしていない。
嫁姑問題も、結婚しても起こらないので、大丈夫である。
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