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呼び出し その2
しおりを挟む「……」
ギルバートは、私を鋭い視線で見て、それから隣に座るお義母さまに柔らかく微笑みかける。
「お話に聞いていた通り、関係が良好と言うことで安心致しました、王妃殿下」
「そうですか……さぁ、ロイネ、一目でもと言うからお前を呼び出しただけです、部屋に戻って結構ですよ」
お義母さまも敵意が無いように微笑んだけれど、早々に私を部屋に返そうとする、どうやら望んでこの場に呼び出したわけでは無いみたいだ。
ぽんと肩に手が触れて、お義母さまと目が合う、真剣な表情に、私もすぐに退散しようと腰をあげようとするが、ギルバートは言葉を放つ。
「いいえ、姫殿下にもお話を聞いていただきましょう。関係のある話ですから、どうかそのままお聞きください」
「……」
聞きたいくないんだって!お義母さまも私に聞かせたい話では無いようだし。初対面の人間なら、察しの悪い人!と怒っていたところだが、ギルバートは故意にやっている事だろう。
室内に緊張が走る、沢山の人が居るだけあって、一人一人に緊張が伝染して、息遣いや人の動く些細な
音ですら心臓に悪い。
こんな陽気のいい日に、こんな思いをしたくなったよ。
それに貧血でクラクラするのだ。アンジュが教えてくれた事だが、治癒魔法は、傷が塞がりはするけれど欠陥はある、失った手足は戻ら無いし、流れ出た血も返ってこない。だから、安静にしていたというのに。
「……いいでしょう。この子の答えも、わたくしと変わらないはずです」
「ありがとうございます。姫殿下、貴方様はこの国に本来、来るべき人間ではなかったのです」
お義母さまが許可して、ギルバートが、私に語りかける。何を言うのかと思えばその事か、知った時は驚いた事だけれど、今では、どうでもいい事だ。
「女王陛下は、姫殿下を思い、大変心を痛めております」
返事をする間もなく、ギルバートは続ける。
「手違いとはいえ、こちらの方々が貴方様を選んだことは重々承知ですが、帰還願います。それに、クリスティナ様に囲われ、ろくに苦労もせず、経験も浅い貴方様が、王妃とは……少々荷が重いのでは無いですか」
そんな事、言っていいのか……良いんだろうな。
ギルバートが連れいる人間たちは、それを聞いても良い人達なんだろう。
それか、こうして公的に取り戻そうとしているということは、クリスティナ様の地盤は、万全になったという事だろうか。私を妹として取り立てて、そばに置いたり、そういう事をするつもりだと、私に言いたいらしい。
つくづく、人心掌握の上手いクリスティナ様らしい戦法だ。私が何に飢えているのか知っている。わかっていた上で、今まで与えず、こういう時にそれをチラつかせる。本当の家族と、名乗っても良いと、そばに置いてあげるよと。
なんて言おうかな、と言うか、ギルバートは言い過ぎだと思う。彼の言葉に、お義母さまは怒ってないかな。
ふと、お義母さまに視線を移すと、少し不安そうに、私のことを見ている。
後ろにいる皆も、おなじ顔してるのかな……。
「……手違いであったとしても、私は、帰るつもりはありません。既にここに居場所を持っています。……お姉様には、どうか私の気持ちを汲んで、諦めてくださいと伝えてください」
姉だと知っている。そのうえで、帰ってこいという要求を呑まないのだと示したつもりだ。
はっきり言わねば、伝わらない事もあるだろう。穏便に済ませてしまいたい気持ちもあるけれど、こればかりは譲れない。
ギルバートは、私の言葉を聞いて、怒りのような表情を見せた。
怖い……けど、皆がいる守ってくれている。
私はそれに報いなければならない。
目をそらさずに、睨み返すと、お義母さまが私の肩をだいた。
「話は付きましたね。ロイネ、わたくしも手違いであろうと、お前を手放すつもりはありません。お部屋に帰りなさい。後で見舞いに行きますね」
「はい、お義母さま」
お義母さまの柔らかい表情に、少しだけ心が楽になる。
立ち上がると、お義母さまは私の頬に手を伸ばした、そのまま流れるように、頬に親愛のキスをして、頭を撫でる。
お、おぉ。ギルバートの前だと思うと、すごく恥ずかしいのだけど、同時に嬉しい。
それに、イーリスの件があって以来、会うのは初めてだ、私もお義母さまの頬にキスをして、ソファを離れる。
そう言えば、親愛のキス、私、初めてしたな。たまに、屋敷で見ることはあったが、素敵なものだと思っていた。
「それでは失礼致します。ギルバート、会えてよかった。また、いつか機会があったら」
「……えぇ、姫殿下。御足労頂き、ありがとうございました」
明確に次の約束はしない。もう、きっと呼ばれることは無いだろう。
ギルバートは全く納得していなかったが、理解して貰えるまで話し合う必要は無い。彼の行動の大元はクリスティナ様だ。
結婚してから、手紙を出してみよう。……内容を考えるのが大変そうだけれど、それでも、腹心の彼を迎えにまで来させるほど、私を取り返したいと望んでくれていたのだからそれぐらいは、したい。
部屋から出るとやっと、思い切り呼吸ができる。
息が詰まって死んじゃうところだったよ……はぁ。
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