お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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主張 その1

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 一大決心をしたものの、どうしようかな。今日は……もう眠たいし。明日の予定もある、また色々考えて後日ルカに連絡をすればいいんじゃないのかな。
 
 それに色々考えたいと言うのは、ルカの過去の事もある。聞いた直後では、お義母さまは事実を言っただけなので、ルカの心情をあまり鮮明に思い浮かべられなかった。
 だが、いざ、こうしてお義父さまの部屋を出ると、痛ましい話だった。
 
 悲惨な話に、まったく耐性がないということもないが、話を聞いただけでもかなり気が滅入った。それも、ルカが実際に体験した事なのだから、もう少し詳しく調べるなり、本人に確認するなり、対応を考えたい。
 そこから理解出来る事も多いはずだ。
 
 あ、でも、ルカは知られたくないって思ってるかもしれないし「勝手に俺の事、探って楽しい?」なんてにっこり笑うルカが想像出来る。
 
 しかし、彼が母のことが原因で過剰に人間に反応してしまうのなら、手紙でも書いてみたらどうだろう、少しは話を冷静にできそうじゃないだろうか。
 ……いや、ルカは、そもそも冷静ではあるんだろう。手紙になったら、さらに練りに練られた罵倒が並びそうである。
 
 手紙はやめよう。どちらかと言えば、彼は動揺している時の方がわかりやすい。
 ただあの普段の冷静さを取り払うためには、どうしたらいいか……マタタビでも嗅がせてやろうか。
 
 ……嫌われる可能性しか感じない。
 そうだ、リノとマティは付き合いが長いのだ、こういう時に相談するべきよね。
 
「ねぇ、マ───
「姫様」
 
 私が声をかけようとすると、静止するように、マティが私を呼ぶ。
 廊下が暗くて、私はマティに手を引いて貰っていたのだが、彼女は強く私の手を握り、歩くのを止めたので、私も立ち止まった。
 トンと、リノが前に出る。
 
 もうすぐ、私の部屋のはずだ。
 そういえば、そろそろ燭台の一つでも持ち歩くべきだろう。手を引いてくれるからと、特に準備していなかったのだが、一人で出歩く機会が無くても、非常時もあるだろうし……。
 
「……姫殿下、事を荒らげたく無いのであれば、獣人を下がらせてください」
 
 ……!!
 今現在が非常時だった。
 
 怒ったり泣いたり、話したり、忙しい夜を過ごしただけあって、もうあとは寝るばっかりだと、オフモードだった私の頭が、今、聞こえないはずの声に強制的に叩き起される。
 
 な、何、なんで、ギルバート?!それも私の部屋付近だろう、どうやってここまで来たというのだ。
 深夜とはいえ、警備がいるはずだ。それをかいくぐって来たとしても無事には出られないだろう。不法侵入で、捕まれば檻の中だ。

 その上で、なんだって、事を荒げなくないのなら?
 ギルバートが要求できる立場なの?見えないけれど、獣人三人に対抗できるほど、戦闘要員を連れてきているのか?
 
「女王陛下からのご命令です。姫殿下の真意を確認せよと」
 
 しんと静まり返った廊下に、ギルバートの声だけが響く。
 
「不可能であれば、実力行使にでると仰せつかっております」
 
 戦争も辞さないと言いたいのか。
 クリスティナ様は、それほどの覚悟で私を連れ戻そうとしている?でも、もちろんそんな事をしたら、私は無事でいられるのか、それに、タリスビアに勝利できるだけの国力が、マナンルークにあるとは思えない。

 けれど、近隣国と協力をするのであれば問題は変わってくる、その目処が立っているから強気?いや、今、世界情勢など考えた所で私の有している知識で、判断が出来るとは思えない。
 
「マティ、彼を……」
 
 捕らえろ。そう命令するべきだ。その後お義父さまやお義母さまに連絡して、指示を仰ぐなり、対応を任せるべきだ。
 
 それでも、私の真意を確認することになれば、私はちゃんとここに居たいと言う意志を伝えるし。それにギルバートの命令が、私を連れ去ることではなく真意の確認という事だから、穏便に済ませられる可能性は高い。
 
 そもそも、真意とはどう言う意味だ。お義母さまと共にギルバートと面会した時に伝えた事は、私の真意だ。それなのに、こんな事をするということは……言わされていると、考えたのかな。
 
 であれば、誰にも干渉されない場で、私と話がしたい、そういう要求か。
 
「私が規定日時に、マナンルークへと帰らない場合、女王陛下は、交渉が不可能であったと判断するとも仰っていました。姫殿下、貴方様が側近を下がらせる命令権をお持ちであれば、即刻私との話し合いの場を」
「……命令権が無いとしたら」
「私は捕らえられ、国は戦火に包まれる事でしょう」
  
 ど、どうしろと!

 完全な脅しだ。二人きりで話し合いの場を作ったとして、その場合は私の安全は保証されるのか?ギルバートの事は正直、信用に値しない、クリスティナ様の腹心と言うだけあって、有能だし、狡猾だし、私が上手く丸め込まれる可能性も無くはないのだ。
 
 いや、待てよ。今日、捕らえた所で、マナンルークに彼が規定日時までに帰れれば問題は無いはずだ。
 
「アンジュ、使節団の出国の日は分かりますか」
 
 出来るだけ、声を潜めて、アンジュに確認する。
 
「明日ですわ」
 
 すぐに返事が返ってくるが、詰んでるように思う。
 大事にしたら、ギルバートは確実に、使節団と同じ船で返す事が出来なくなる。
 
「……私の部屋の扉、消音の魔法がかかっていたりしませんよね」
「姫様、まさか」
「彼と、私の部屋で話をします」
「ダメにゃ」
「わかってる……でも、これ以外、方法が」
 
 側近には部屋の外で待機していてもらって、異変があればすぐに、突入してもらう。そうすれば、ギルバートは私の真意を聞けたと思うはずだし、私もある程度、安全だと思ったのだがすぐに却下される。
 
 それ以外だと、この場にお義父さまとお義母さまを呼んできて、何とかしてもらう……とか。
 



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