透明令嬢、自由を謳歌する。

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
45 / 46

45 贖罪 その二

しおりを挟む


 ラウラもこのままいけばいつか彼らに会うこともできるかもと思ったが、今までずっと黙っていたリーゼは母の向こうの一番端の席から、満を持しイラついた声をあげた。

「なによ。これじゃ、本当にわたくしたちだけが悪いみたいじゃない」

 つぶやくような押し殺した声だったが、すぐにヘルミーネが反応し、厳しい瞳をリーゼに向けた。

「リーゼ、何度も言ったでしょう。私たちが悪かったのよ。それにここで言う事ではないわ。あなたも謝罪をしたいというから連れてきたのに、どうしてそんなことを言うの?」
「だって、お母さまたちはわたくしを置いていく気だったでしょ? あの人が勝手に一人だけ贅沢して自分の好きなようにできるなんておかしいですわ! それを邪魔しないでわたくしたちが損をするなんてありえない!」
『はぁ、どうしようもないのう。人間の性根というのはそう簡単に変わらないものじゃな、ラウラよ』
「あんな、いてもいなくても変わらない地味な人、公爵家に嫁入りするなんてありえないわ。そうだ、フェリクス様! 今からでもわたくしをもらってくださいよ!」
「リーゼ!」

 ヘルミーネは𠮟りつけるような声をあげたが、リーゼは暴走して勝手に立ち上がって自分をアピールするように可愛く笑みを浮かべてフェリクスに視線を向けた。

「リーゼ、やめてください! なんて失礼なことを言うんですか」
「あの人には適当に仕事でもさせておいて、無視しておけばいいのよ。それでも一人でぶつぶつぶつぶつ喋って楽しそうにしてる奇人なんですから! わたくしの方がずぅっと可愛いですわ!」
『どうする、ラウラ、いっそ魔法で痛い目に合わせるなんてどうじゃ?』

 ニコラはそういってふわりと飛んでリーゼのそばに寄った。

 ラウラはそんなニコラの言葉に仕方ない気持ちになりつつ、ちょっとわらいながら、どうしようもない妹の目の前に向かった。

 彼女以外の家族はきっかけがあって自分たちの間違いを認めることができた。しかし頑なにそれが出来ない人間もいる。

 ラウラはそういう質なのは父アルノルトだとばかり思っていたがそうではないようだ。

 リーゼのそばによって、ラウラは彼女の両肩に触れて、魔法を使った。

 この透明化魔法には様々な使い方がある。

 長時間使うのは一人分がラウラの魔力的に限界だが、一人分あれば十分だろう。

 だってラウラはもう透明人間ではない。ラウラの姿が本当に消えている時だってその存在を見つけてくれる人がいるのだから。

「きゃあっ』
「……」

 ラウラは自分の魔法をといて姿を現した。けれどもそれと入れ替わるようにリーゼは影も形もなくなって声もどこにも届かない。

 自分の足元以外に干渉しないようにしてあるので、触れようとしたって触れられないだろう。

「ラ、ラウラ!」
「え、リーゼはどこ? なにどういうことなの?」

 突然姿を現したラウラに彼らは目を白黒させ、代わりに姿の消えたリーゼにさらに混乱した。

 しかし、その場にいたフェリクスだけは冷静に物事を見て、ラウラの肩を抱き、彼らに言った。

「落ち着いてくれ。……彼女は君らの良く知る神からの罰が与えられたのではないか?」
「よく知る神、ですか?」
「ああ、戦の女神だ。きっと自分の家族を蔑ろにし続けた彼女にそのつらさを思い知らせるためにかぶせたんだろう。古のアマランスの花冠を」
「そ、んな……」
「きっと罰が終わればいつか戻ってくるさ。それがいつになるかは知らないが……今はとにかく屋敷に戻って昔にそういう出来事があったのか調べることから始めたらいいのでは?」

 言いつつフェリクスは、ラウラを連れて部屋から出ていく。

 彼らはラウラ達を追いかけてくることはなく、彼の咄嗟の説明にラウラは驚きつつもほっとした。

 気持ちに任せてやってしまったが、フェリクスが居なければもっと混乱状態になっていただろう。

 それに数週間程度でラウラだって魔法をとく。

 原因が不明でも、神様のせいだと言われて姿が元に戻れば納得せざるを得ない。

 ちょっとばかり仕返しが出来ればいいのだ。それで彼女が懲りなかったとしても、ラウラはもう二度と彼女には会う気はないので問題ない。

「フェリクス、ありがとう」
「……正直驚いたが、まぁ、君がため込むよりずっとましだ」

 ラウラのお礼にフェリクスは当たり前のようにそう答えて、その日は家族が帰ってからしばらく、一緒に過ごしてラウラの昔の生活について少し話をしたのだった。



しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉そら
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...