悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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腹黒男め……。6

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 翌日、天窓を開けっ放しで眠ってしまった私は、この世界に来てから初めての朝日でスッキリと目を覚ました。
 
 ……日差しが気持ちいいなぁ。

 ふわふわとした寝ぼけ頭で顔を洗って、長い髪を櫛で梳かす。腰の辺りが軽くカールがかかっているのでこの部分がよく絡まるのだ。

 割と面倒に感じつつもせっかくの綺麗な髪なので出来れば維持したいと思っている。それに……これ、切っちゃうとせっかくの悪役令嬢らしさが消えてしまうような気がする。

 いや、私がそのアイデンティティを守りたいと思うなら、行動で示したらいいと思われるかもしれないが、悪役令嬢っぷりを発揮するタイミングが無いのだから仕方がない。とにかく、髪はそのままの方向で、問題は髪型だ。
 
 頭の中でいくつかの髪型を思い浮かべてその中から、ローレンスによって切られた横髪が、目立たない髪型をとりあえずチョイスして、やってみる。
 
 クラリスがアイシャドウに使っていた色である濃い紫のリボンを頭の上で蝶々結びにして、それからしずらして後頭部に持ってくる。最後に、前髪を整えて完成。
 
 これで長い髪が邪魔になることは無いし、短いところが止められているので目立たないようになるのだ!そしてなりより悪役令嬢っぽいだろう。

 お嬢様と言えばカチューシャだもんね!

 前世でもこういうリボンやレースは大好きだったのだが、なんせメガネで芋臭い私じゃ、洋風の波には乗れなかったのだ。強いていい所をあげるなら、浴衣が良く似合うことだった。

 和物の服はもう着ることは無いし、今の体では似合いもしないだろうと思うと少し寂しいが、仕方ない。今の自分を好きになろう。

 少し硬い制服に袖を通して、鏡で入念に着こなしを確認する。

 ……でもこれちょっと恥ずかしいな、私みたいな歳の女が……やめよう。この思考は何もいい結果を生まない。

 支度をバッチリ終えて、備え付けてあった丸テーブルに腰掛けるとテーブルの上に何かあることに気がつく。

 小さなピンクのポーチに手紙が添えられていて、封筒を開けて中を確認すると、これまた豪華な金色で装飾がしてある便箋で、達筆な字で文章が綴られていた。

『お小遣い。無駄な出費は避ける事。使用用途は、すべて明らかにする事。今日からは遅刻厳禁だからね』

 ……。

 お小遣いという名の、小口現金じゃねぇか腹黒野郎。

 ついつい頭の中で、汚い言葉が浮かぶ。

 それに遅刻したの誰のせいだと思ってんの……?

 朝からイラつきがMAXになって、頬を引き攣らせた。それに、よく考えてみると、部屋の鍵をきちんとかけて、眠っていたというのに……。

 視線を移すと、やっぱり私の部屋の鍵はきっちり閉まっている。王子様の権力はどうやら学園にも影響しているらしい。

 合鍵か……。プライバシーゼロじゃん。

「はぁぁ……」

 気分の良い朝だったはずが、今日もローレンスのせいで台無しである。あの人、私の事をなんだと思っているんだろうか。

 落ち込んた気分のままポーチのボタンを外す。中には価値は分からないが金貨?らしきコインが沢山入っている。

 この世界の通過設定は………金貨、銀貨、銅貨の三種類があって、銅貨は百円ぐらい、銀貨は千円ぐらい、金貨は一万円ぐらい、それぞれ金銀銅の前に大とつくと価値が五倍程大きくなる……だったっけ?

 うーん、だから。この金貨が大金貨だったら一枚五万円つまり、高級なフレンチ二人前、ブランド服二枚、都内のワンルームに住めるか住めないかぐらいの金額になる。

 大きさは五百円玉と百円玉の間ぐらいのように思う。

 いくらあるのか計算できずに見ていると、コンコンとノックの音がして鍵を閉めっぱなしだった事に気がつく。

 鍵を開けて扉を開けば、そこにはジャケットの制服が良く似合うヴィンスの姿があった、少しだけ恥しそうな所もポイントが高い。

 可愛らしさに甥っ子味を感じつつ、笑いかける。

「おはよう!ヴィンス、制服よく似合ってるね」
「いえ、私なんか……クレア様の方が良くお似合いです」
「ありがと」

 会話をしながら部屋に入り早速ヴィンスは、私の起きたままのベットを整え出す。

 あれが彼の仕事なんだと私は、割り切って考えてテーブルに座り直し、数分待っていると鞄から外套まで、すべてを用意したヴィンスが満足気にこちらに来て、私の手元のものを覗き込む。

「色々とありがとね」
「いえ、滅相もございません、ふふっ……それはなんでしょうか?」
「……お小遣いだとさ、王子様からだよ」

 私が手紙と中身を見せると、ヴィンスは目を丸くする、それからコインの枚数を軽く数えて、少し不安そうに眉を下げて笑う。

「殿下はクレア様を信用なさってるんですね」
「ねえ、ヴィンス、それって……大金貨?」
「そのようです」

 全部で十枚、大金貨の価値は五万円……。

 私はそこから一枚拝借し、ヴィンスにも一枚渡す。

「……ヴィンス、こんな大金の事は忘れよう?いいね?お小遣いはお互いこれだけ!あ、でもヴィンスは仕事をしてるんだから、早く使っちゃっても大丈夫だよっ」
「…………クレア様のお小遣いであって、私のものでは無いと思うのですが……」
「細かい事言わないの!私だって、他人から無償でお金貰うなんていやよ、でも、そうも言ってられないから、ね?ヴィンス、罪悪感を薄めるために共犯になってよ」

 お願いと、彼の手に金貨を握らせると、困ったように彼はしばらく私と見つめあいを続けてそれから、仕方ないというように了承する。

「わかりました」
「やった!……ってあっ、ヴィンスそろそろ朝ごはんじゃない?」

 ふっと気が緩んだからかお腹がすいていることに気がついてヴィンスに確認する。彼はキョトンとしてから時間を確認して、にっこり笑った。

「まだ、余裕があります、ゆっくりと向かいましょう」

 そして私は、そのポーチを私は部屋に置いていこうか、持って歩こうか迷って、強盗にあったらと思うと怖くなった。良い隠し場所が見つかるまでは、持ち歩こうと決意を決めて鞄の中へとほおりこみ、朝食へと向かった。




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