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そういうタイプの化け物か……。4
しおりを挟む血溜まりが広がる、濡れたアスファルト、冷えていく体。終わりの時、真っ赤に染まる世界……。
ッ……!!
抗いたくて力任せに起き上がれば、乱れた金髪が視界に入って前世の自分の体では無いことに気がつく。
「いっ……ッ、っ~?!」
左肩が異常なまでに痛んで、悪夢で酷い汗をかいていたのか服が体に張り付いて気持ち悪い。
「クレア、どうした?」
そっと誰かが私の背中に手を当てる。
人が居たのか……。ここは、保健室だろうか?すこし視線を巡らせるとベットがいつくかあり、看護教員の作業机が見える。
背をさすられて人の体温に少し落ち着きを取り戻し、呼吸を整える。
「悪い夢でも見てしまったのかな、ほら」
肩を抱かれて、抱きしめられそうになり、痛みのない右側の手で胸板を押し返す。
声の主を見上げれば、やはりローレンスだった。
「抱擁は結構、子供じゃあるまいしっ……っ」
痛みに堪えて声を出す。ローレンスは少し意外そうな顔をして、それから椅子に座り直す。ララという人が居ながら、この人は何故こういうことを軽々としようとするのか。
「強情だね、クラリスはもう少し素直だったと私は記憶しているんだが」
「……」
「まぁ、構わない、君はクレアだから、関係のない話だったな」
彼は自分から引き合いに出しておいて自分で否定する。
「ただ心配はしているんだ、君は私の大切な駒だからね、状況は理解出来ているかな?」
問われてまた沈黙を返す。正直、ずきずきと痛みが酷くて頭が回らない。私の沈黙を都合のいいように受け取った彼は、事の顛末を話す。
「君は魔法を使えていなかった、それが君の故意かどうかは不明だったが、サディアスはそれに打ち込む直前で気がついたらしい。彼が優秀な使い手でよかったね。おかげで君は真っ二つになる事は避けられたが、勢いは殺せず柄の部分で強打してしまったようだ」
どうりで、骨がボッキリ折れていそうな痛みなわけだ。しかし真っ二つになる可能性もあったらしい。あの時に感じた本能的な恐怖は嘘ではなかった。
「昏倒した君の状況をすぐにサディアスが報告し、ここは医務室。他の生徒は皆、懇親会に向かったよ。もちろん君の心配をして、ここに残ろうとしたヴィンスも教師に引きずられて行った」
「……そう。……ありがとう」
「あと、君が自分で握っていた短剣がサディアスと衝突した時に頬に傷を残してしまって、サディアスは酷く気落ちしていたな」
同じく左頬に確かにガーゼか何かが当てられている感覚はあるが、見たくは無い。馴染みの薄いこの体でも、さすがに顔に傷というのはショックだ。
無言でいれば、ローレンスはわざわざコンパクトを取り出して鏡をこちらに向ける。
「ローレンっ……はぁっ、……」
あまりに気遣いのない行動に、怒鳴ろうとすれば大きく息を吸っただけでも痛みが増して、夢や試合の恐怖から涙が出てきた。
右手でコンパクトを払い除けて、彼に目を向ける。
「痛み止め……か、何か……欲しいんだけど」
「そんな物より魔法を使えば、直ぐにとはいかなくとも治癒する事ができる」
多分、使えないんだ。私には。
ローレンスだってその可能性がわかっているだろう。それなのに……。いや、そうだからこそだろうか。
「ほら、魔法玉を出そうか」
手を伸ばされて、なんとか抵抗するけれど、服の中から勝手に引き出し、握りこまされる。
「魔法玉に異変があったから、まさかとは思っていたけれど……魔力を込めて、試合の時は出来ていただろう?」
手を動かすだけでも痛いのに、強く腕を掴まれて、体が震えた。これが終われば、安静に出来るのかと思い、集中して魔力を込める。
「魔法玉は起動しているな」
顎を持ち上げられて、瞳を覗かれる。視界いっぱいに彼の薄ら笑みを浮かべる退屈そうな表情がうつって、悔しいやら痛いやらで涙が滲んだ。
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