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夏休み早々……。2
しおりを挟む「ヴィンス本当にごめんね」
「いえ、構いません、少し待っていてくださいね」
「うん、ありがとう」
彼は、私へ買ってきてくれた飲み物を置いて、今度は学園街に降りて、何か消化に良いものを買いに出かけるのだった。快く引き受けてくれてくれたが、申し訳なかったので多めにお金を渡して、何か好きな物でも買ってくるようにと送り出した。
ディックは私のベットで、ぼんやりとしている。
扉を閉めて彼の方へと行き、額に手を触れる。
……熱くは無いから風邪じゃないね。単純に栄養不足かな?
「睡眠もあまり取っていないんだっけ?」
「ん」
コクリと頷いて、彼は私を見た。
何となく、ふわふわの髪が心地よくて、撫で付けていると、彼は眉間に皺を寄せて口を開く。
「……やめて」
「ん、ああ、ごめんね」
パッと手を離す。意外と自分自身も他人にベタベタと触っている事が多いとクリスティアンに言われたのを思い出し、距離を置くために椅子を持ってきて、ベットのそばに座った。
辛そうな彼は、相変わらず荒い呼吸を繰り返している。魔法を使っているので、なにかしら回復はしていると思うのだが、ご飯を食べない事には、根本からの治療にはならないだろう。
「……」
「……」
しかし、不思議な光景だなと思う。
……前世じゃあんまり人を自分の部屋に入れなかったもんね。
こうして、他人の看病をする事も多くなかった。
恋人は居たこともあるけれど、正直あまり近い関係というより、相手に取って都合のいい人である事の方が多かった。なので、相手の家に行ったり、ホテルであったり、割と希薄な関係性だった。
友人も同じような感覚で、誘われれば遊ぶし、ご飯にも行くのだが、年中一緒という人もいなかった。
……まさかこんな形で、色んな人に関わっていくだなんて思っていなかったな。
それに大人になるとだいたい皆、取り繕うのが上手くなる。こうして、どうしようもなく弱るような事があるのは、彼自身がというより、この学園にいる人は皆まだまだ成長途中だからだろう。
淡く光を纏う魔法玉を片手で弄びつつ、ぼんやりと考える。こんな体調の悪い彼に話すことも無かったので、ディックが話出さない限りは暇だった。
二人でいる手前、本を読むのは悪いような気がして、手持ち無沙汰のままディックを見つめる。
……この子は、多分、私の固有魔法をエリアルに報告した張本人……だよね。
初めての模擬戦のあった頃、私はエリアル達に連れ去られた。非道な事をされて、釘を刺された。
クラリスはいつでも自分の側に寝返ってもいいようなことを言っていたけれど、結局、今日に至るまで、特に何事もなく学園生活が送れている。ローレンスとの関係性も相変わらずだ。
たまに深夜に私の部屋を訪れては、無視するとキレて乱暴をするし、仕方なく他愛のない話をすると満足して帰っていく。
何かが起こっているという事も無い。でも、ディック自身はあの時以来、私と少しだけ距離がある。私も彼に何かを問い詰めるようなことは無いが、少し気まずい。
こういう関係の場合には、はっきりさせた方がいいのだろうか。でも、確かに嫌な思いはしたが、決してディックが悪いとは言いきれない。そもそも彼には、秘密にする義務もなければ義理もない。
……だから、問い詰めてもね……。私もこの固有魔法を持ったまま宙ぶらりんなのは、危険だから早くローレンスと親愛の誓いをするべきだと言われつつ、未だに、彼から何も言われないからと放置しているのだし。
考えても、答えは出てこない。
「……君は……僕に……」
ディックはボソボソと何かを言った。よく聞き取れず、首を傾げると、ディックは瞳を伏せて再度言い直す。
「君は、僕に怒ってないの」
「何を?ディックなにかしたの」
「……」
聞き返すが彼は答えない。言いづらいこと、つまりはここ数ヶ月、彼が私に気まずかった理由だろうか。
話をしてくれる気があるのなら、聞きたい。
「もしかして、エリアルに告げ口したこと」
「……それ」
「んー……怒ってはないよ」
素直に答える。むしろ、彼から話をしてくれるなんて、とてもありがたい。悪いことをしても開き直る人はいるし、とぼける人もいるしで、割とそんな事にも慣れてきたのだが、誠実なのは喜ばれるべきことだ。
「むしろ、貴方からそういう風に言ってくれて、ありがたい」
「…………聞かないの、あちらの思惑とか……」
「言ってくれるなら、聞くよ」
「……い、言えない」
……言えない、か。言いたいと思ってくれてはいるのかな?
教えてくれるのならありがたいけれど……私は特に調べるようなことをしていない。それなのに、他人に聞いてばかりいるのもダメだろうと思う。
そもそも調べたらわかるのかすら分からないけれど、私はそれをやっていない。つまりは問い詰める資格もないと思う。
「でも……このままじゃ君は死ぬって事……は知ってる」
「……ど、どういう……こと」
思わぬワードに、目を見開いてしまう。
すると彼は、横になったまま話をするのが嫌だったのか、起き上がって少し辛そうにしつつも、私と目線を合わせた。
「だから、ちょっとだけ。……説得しに来たんだ。本当は明日、いろいろと言おうと思ってたんだけど」
「説得? 何を?」
「分からないの?……僕はエリアルに協力してるんだよ」
「ローレンスと関係を断てって話?」
「うん」
……そういう、事ね。
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