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しおりを挟む彼女の反応はとっても素直でかわいらしい、リディアは割とこういう素直な人間が好きだという自覚があった。
「ふふっ、そうでしょう。ロイはわたくしの事を好いていたんですの」
「プロポーズを受けたんですか?!」
「そうですの!」
「す、すごい、ロイってぼんやりしてそうなのに、頑張ったんですね!」
リディアはペラペラと事情を口にしてから、ロイを見た。また赤くなるところが見られるかと思ったが、案外ロイは整然としていてエイミーの言葉に返した。
「あの時は今しかないと思って焦っていましたから、よく覚えてませんよ。プロポーズというか告白でしたし、了承していただけて安心しました」
平然としている彼にリディアは、どういう条件で赤くなるのか割と気になったし、もしかすると自分といるときだけなのかという仮説が頭をよぎる。
検証したかったけれどエイミーがいる以上は、やるとしてもしばらく先になるだろう。
「……いいですね。ロマンチックじゃないけれど、恋心があるんだって感じがして……」
ロイのそっけない言葉にもエイミーは何か好感を覚えたらしく、ロイの事をキラキラとした目で見ていた。
もしかして、彼女も誰かに恋でもしているのだろうか。
「恋心と言われるとなんだかこそばゆいですが、昔からお慕いしておりました」
「む、昔から……です」
「はい、リディアお嬢様は快活で明るい人ですから、気がついたら自然と惹かれていたんです」
「自然と……です」
「ええ……エイミー様、少し変わりましたね。昔は男女の睦言など興味はない様子でしたのに」
ロイは、恥ずかしげもなくエイミーに自分の気持ちについて話をして、興味津々という様子で聞いている彼女に、そんな風に言ったのだった。
言われてエイミーは、心当たりがあったらしく少し考えてからロイにいった。
「……だって私も大人になったんですもん。変わりもします!」
「あら、たしかに少しは変わったかもしれないけれど、結局身長はわたくしの勝ちですわね」
「むっ、リディアはヒールを履いてるから反則ですよ」
「ヒールを履きこなすのも貴族のたしなみですわ、いつまでもそんな平たい靴では見下ろされてばかりよ? エイミー」
「なんですか、偉そうにー!」
彼女が子供のように飛びついたり駆け寄ったりできるのは、その靴のせいもあると思うのでヒールを履くようになれば少しは上品に見えるかもしれないと思ってリディアは言った。
しかし彼女は靴を変えるつもりはなさそうで、ふくれっ面になるだけだった。
「昔は私の方が少し大きかったはずなのに、どこで抜かされたんですかね?」
「いいえ、昔からわたくしの方が勝ってましたわ」
「そんなはずありませんっ、だってほら、初めて会った時に言っていたじゃないですか、自分より大きな相手を運ぶのは苦労するって」
「言っていないですわ」
「言ってましたもん!」
エイミーの言ったことにリディアはむきになって返して、それにエイミーのも同じくむきになって頬を膨らせた。
それに出会った時なんてもうずいぶんと昔の事だ。
お互いに自分の主張が正しいと言い合う二人のちょうど間にいたロイに、二人は当時の事を知っているロイに視線を向けて聞いた。
「どっちの方が大きかったんですの?」
「どっちの方が大きかったんです?!」
二人に同時に聞かれてロイはすこし驚いて、視線を空にやった後、優しく笑みを浮かべてたっぷり間をおいてから、二人に言った。
「あいにく、その時の詳細な状況は覚えていないんですが、お二人の出会いの話を聞けば思い出すかもしれません。お聞かせ願えますか? 」
「……」
「……」
ロイの優しい言い方にリディアとエイミーは、彼は話をそらしてしまおうと考えているとすぐに察して視線を交わした。出会いも何も特に変わったことなどない。
ただの偶然の産物だ。でも、ロイが聞きたいというのならばやぶさかではない。
「そんなに聞きたいなら教えてあげますのよ」
「どうしてもっていうなら、話します!」
二人とも出した結論は同じで、なんだかんだと言って息の合う二人はそのことにくすくす笑いあって、昔の事を思いだした。
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