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しおりを挟む……なるほどな。セージ自身は一応はちゃんと恋人が欲しかったのか、けど揉めて別れたリクの言葉もあってか、ペットを飼うしかないってなったのか。
まあ、その相手がちょうど、ゴミ捨て場に落ちてたボクになったのは、言った側も言われた側も想定外の事だったと思うけど。
「……だから、てっきり、僕の部屋で過ごしてる乎雪をみて、出会い系とかであって、セフレっぽい感じの文字通りペットなんだと思ってたんだけど……」
「当てが外れたってわけか」
「ま、そーなるね!」
……サオリさんが話してくれた事とも合致するな。昔から同じようなことで喧嘩して別れているのを相談されたことがあると言っていたし。
酒でのどを潤しながら考える。
セージが自分のそういう性質をどうにかした方がいいとわかっていつつも、多分辞められないであろう事。しかし、恋人を作りたくないと思っているわけでなはいという事。
今の状況はボクが、恋人じゃないから、踏み込んでも来ないし詮索もないけれど、セージは多少なりとも、不安になったり束縛したい気持ちはあるだろう。今日だってきっと、リビングでそれらしい言い訳をつけて待っていると思う。
「それを聞いたうえで、乎雪はどう思うわけ?僕は普通に無理って思ったよ。恋人って言っても、お互い生活も仕事も別でしょ、そんなに束縛されちゃ、僕って人間の事ないがしろにしてるって思う」
リクの言い分ももっともだと思う。なにより、断られたからと言って勝手に調べるのはよくない。
……ただ、なぁ。……ボク自身が、少し前までまったくプライバシーがない生活してたからな。ミノルにも多分未だに居場所とか監視されてると思うし……あんまり支障ないなんて考えんのが普通じゃねえ、のかな。
「……」
「お勧めしないよ。ほんと……良い人だけど、多分たいていの人には合わないし。なにより、あの人お金あるじゃん?実家もお金持ちだし、そういう普通に付き合っていく間にお金とか色々出してもらって、さらには完全に束縛されるとさ、つり合いが保てないよ。対等でいられない」
……実家金持ちなのか……。
「そういうのって、恋人って言えるのかな?付属物みたいにいつかなっちゃいそうで、僕はそれが耐えられなかった」
「……凛久さんはとても自立した考えをお持ちなんですね」
「そう?皆そうでしょ?」
「そうですね。……人それぞれだと思いますよ。きっと、そうなることに安心する人もいると思いますから」
フジナミさんは、言葉を濁しつつ少ししゃがんで、何やら小皿に持ったサクランボを二皿、ボクらの間に出す。
「サービスです。他のお客様には秘密にしてくださいね」
「え、いいの?」
「お得意さんからのいただき物ですから」
「……い、ただきます」
「ええ」
リクはおずおずと手を伸ばして、みずみずしいそれを一つ手に取って、口に含む。
「凛久さんの考えは、俺はとても、良いと思いますよ。ただ、清司さん……でしたっけ、彼も凛久さんとの事があってから、変わろうとしているのではないですか。そうでなければ、凛久さんの言ったことを律儀に実行するわけもありませんから」
確かに、その考えも一理ある。サオリさんからはリクと別れた後のセージは相当塞いでいたと聞いているのだ。きっと、セージの中でも変えなければという気持ちがあるのだろう。
「……良い男だったのでしょう?今は、彼らの新しい未来を応援してみても楽しいかもしれませんよ、凛久さん」
どうやらボクのためにリクを説得してくれたらしい。リクの反応を見てみると彼は、パチパチと瞬きして、それからニコッと眩しい笑顔を見せる。
「そーかもね。……まあ、藤浪さんがそういうなら、それでもいいかな!」
ころりと意見を変えて、リクは機嫌よさげに微笑む。そのキラキラした笑顔を見て、というか、すこし感づいていた節もあったのだが、リクはフジナミさんに淡い恋心を抱いているらしい。
「それにしてもこのサクランボ美味しいねっ!」
「出回るにはまだ早いですが、甘みが強くてみずみずしいですよね。乎雪さんも、どうぞ、召し上がってください」
「ああ……いただきます」
進められて一つ手に取る、色鮮やかな赤が美しい。すこし黄色みがかっていて、柔らかい発色がとても上品だ。
口に入れれば、皮のつやっとした感触が下に触れて、噛むと弾けて果汁が口に広がる。
「……美味しい、です」
「よかった」
甘酸っぱいその味は、恋の味なんて言葉でよく表現されるが、今のリクにはぴったりの果実だろう。その相手である彼はそれに気が付いているのか、応える気があるのか定かではないが、リクがここに来たいという分にはボクもしばらくは付き合ってもいいかもしれない。
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