ゴミ捨て場で男に拾われた話。

ぽんぽこ狸

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 俺の言葉に、彼は眉間にしわを寄せて想定外だったであろうことがうかがえるが、彼はすぐに、馬鹿にするような笑みを浮かべる。

「はっ?恥ずかしげもなくよくそんなこと言えんな!同性愛なんて、反吐が出る」
「……なんとでも。それで?こうなると、もう俺がユキを追い出す理由もなくなったと思うけれど」

 俺がここに来たのはそれが理由じゃない。ユキが俺に隠れて、別の人間のところに行こうとしているのではないかという疑惑の方が問題なのだ。ただ正直に言っても、この青年が素直に答えるとは思えない。あのバーでの写真についてうまく引き出せないだろうか。

「…………チッ」

 青年は一つ舌打ちをして、視線を空に向けてそれから、俺の方を睨んで、席を立ちながら言う。

「どうせお前もすぐに、あいつに逃げられる!勝手に恋人ごっこでも楽しんでろってんだっ!」

 言いながら、財布から金を出そうとするその手を、力加減もせずに掴んだ。 

 机が大きく揺れて、ガタッと音を立てる。周りにいる客がわずかに視線をこちらに向けた。

「っ゛!!」
「逃げられる?それはどうしてそう言い切れるんだ」

 今の状況で、ユキが何かを不満に思っている事はないはずだ。単に、自分が逃げられたが故の負け惜しみと取れなくもなかったが、ユキは俺のことを信用してもいないし、懐いてもいない。

 ノーマルだと言っていたのに、いつの間にバーになんか行ったのか、俺が嫌で、別の都合よく部屋に置いてくれる人間を探しているのかもしれない。

 絵描きだということも、一切教えてくれなかった。それどころか、俺には絵を見せないようにしていたようにも思う。本名だっていまだに教えてはくれない。

 そんな俺の焦りが、存外細い青年の腕を折らんばかりにきつく握ってしまい、彼は痛みから声にならない声を上げてすぐさま振り払う。

「しっらねぇよ!!ただ、あの野郎は実家すら家出して、いく当てなくなって、そんでお前みたいに拾ってやった人んとこも、勝手に飛び出してったんだぞ?!俺んとこからいなくなって三度目だ!!お前も同じ目に合う」

 それは、俺の中の不安を煽る煽るにはピッタリな言葉だった。

 よほど、取り繕えていなかったのだろう。俺の顔を見て、青年の表情が喜びにゆがむ。

「そういや、乎雪のやつお前以外のやつと仲良さげな写真あったな?お前なんて脅さなくても、案外、お前に見切り付けて逃げ出す日も近いかもなっ!!」

 言いながら、彼は俺がつかんだ手首を摩りながら適当に金を置いて、去っていく。俺は何も言い返すことなく、椅子に座り直して、ただただ不安な気持ちで、空を見つめた。

 今の俺の知らないところに行っている乎雪は、俺のそばからいなくなるために別の誰かを探しているのかもしれない。いや、もしかしたら、もう。

 そう考えると、気が気ではなかった。とにかく、ユキが帰ってくるのを待つしかない。そして、戻ってきたら、その時は……。





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