77 / 313
第一章 なぜ私であるのか
妾の前では二人に差などない
しおりを挟む
「聞きましたが、命拾いをしてから勉学に勤しんでいるようで何よりですね。あなたは少々常識が無いようでしたので、これを機にほんの少しでも知性が向上してもらえればこちらとしては大助かりですね」
龍の館に復帰後の初日はシオンの小言から始まっていたが、下手に心配されるよりかはマシである上に、怪我のことをこねくり回されるのは無駄に苦痛なためにジーナは有りがたく受け止めた。
「私としましてはそれほど無学で非常識な振る舞いはしてはいないのですけれどシオン様」
「非常識な人間は自分の非常識さを認識できませんので非常識なのですよジーナ」
容赦のない畳み込み方にジーナは閉口するも屈しはしなかった。
「礼儀作法的な事には問題はないと自負しておりますが」
「そこはそうですね。動作や言葉遣いは別に文句はありませんが、やはり話の内容や行動の意味がです。慇懃無礼であるように心の奥底ではこちら側に対する普通とは違う何かがありますよね」
それは敵意? とまず思い浮かべジーナの背筋に寒気が走りこちらを睨み付けるシオンの薄色の瞳が光る。
「ずばり俺は強い男であるという自信と腕力によるでしょう。こんなお姫様たちなんぞに従えるかといったそういう意思をお持ちで」
素晴らしいポンコツ推理であり背中には温かいものが流れ、都合が良いのでジーナはあえてそちらの方面に誘導することとした。
「私はまぁまぁそこそこに強いのは事実ですけど」
心にもないことをぼそぼそと言うとシオンは嬉しそうな声をあげる。
「ほらやっぱりそうでしたね。そういう態度はいけませんよ。強さが傲慢に変わるというのはよくあることです。常に自制をし謙虚にしなければなりません。ここにいるのは二人の実にいたいけな女です。自らの蛮性を良く良く理解し理性ある行動を望みます」
この明らかに気が強そうな女のどこが幼気だというのか? 痛々けなのでは? という疑問が心の中で生じると隣から声となって飛んできた。
「そなたのどこがイタイケな女であるのだ。馬鹿も休み休み言え。将来の国家支配者がよう言うわい」
書きものの仕事がやっと終わったヘイムが沈黙を破りようやく口を挟んで来たが、いささかテンションが高かった。
「マイラ卿の婚約者として約束された宰相夫人となり国政を執ろうとするものがイタイケであって堪るものか。さては昨日は逢引をしたことによって調子に乗っておるな」
まぁ、とわざとらしく口を大きく開き手を当てなんだか声色を変えてシオンは抗議しだした。
「とんでもございません。宰相夫人となるのは私にとって偶然のことでして、たまたまマイラ様がそうなっただけに過ぎません。もっとも適任中の適任ですから何処からも異存なんて出るはずもありませんけど。それと調子に乗っているだなんて滅相もありません。ただ昨日はこれを」
と隠していた左手の薬指にはいつのまにか指輪が嵌められておりその上には見覚えのない透明な石が強い光を放っていた。
「たいしたものではないとのことです」
大したものであるからこそ言える台詞をシオンは自信を込めて言った。
「マイラ様は鉱物の発掘が御趣味でして様々な石をお持ちですが、中でも一番珍しかったのがこの豪剛石というものらしく、これを宝石職人に加工させましたのがこれでして、ですからそうですね価値は……不明とのことです。ちょっと派手すぎですよね」
シオンが手の角度を変えると閃光がジーナの眼を貫き顔を背けさせた。新手の武器なのか?
「あらごめんなさい。悪気はなかったのですが、やっぱり大きすぎですよね。まるで暴力的な輝きで、重くて指も疲れてしまいそう」
言葉とは完全に裏腹にちっとも重くも疲れてもなさそうにシオンは指輪に夢中となっている。
今日様子がおかしいのもなるほどこれかとジーナは安心するも、ヘイムがシオンに近寄り硬い表情でその指輪をまじまじと見だすとどうしてか心がざわつき出した。なんだというのか?
するとヘイムが微かに振り返り目が合うと口を端をあげ、眼も笑ったように見えた。
「これは見事なものであるな。豪剛石という稀少石をこうも大胆かつ贅沢に加工するとは、その価値は図りしれぬものであるぞ」
いえいえとシオンが小さな笑い声と共に満足気に鼻息を出した。
「それにしても大きいな。シオンにはこういう派手なものが似合うからいいが、妾がこれをつけたら不似合いもいいところであろうに」
「あなたは手が小さいですしね」
「それに稀少石なら儀式用に使いたい欲が出て来てしまうな」
「ですからこの前のあの真珠の宝石ならヘイム様にぴったしでしたね。大きさもこれ以上に無いというものでしたし」
そうか? とヘイムは気のない返事をするのを見るととジーナの首は微かに縦に動きゾッとして前を見ると、二人と目が合い声をあげそうになった。
「おっとジーナにはまるで興味のない話でしたね。そういうことです。つまり指輪をつけてそこそこにいい気分なのですよ」
またシオンは手の角度を変えて光の屈折を利用した閃光を浴びせてきた。再びの攻撃、間違いなくそれは武器。
「ホホホッごめんあそばせ。くれぐれもジーナはこのことを口外してはなりませんよ。他言厳禁です。これは誰よりも先にヘイム様にご報告しなければならないことですので、はしたなく見せびらかすということでは決してありません。この指輪はこうして小箱にしまうことにしたしましょう。ですので、くれぐれもキルシュやハイネに知らせてはなりませんよ」
元よりそんな話をする気のないジーナは「はい」とはっきり言うとシオンは、繰り返した。
「特にキルシュやハイネに教えてはいけませんからね」
「はい。かしこまりました」
変な間ができると横のヘイムが忍び笑いをし正面のシオンは神妙な表情で頷いている。何が言いたいのか?
「あーあれだなジーナ。聞かれでもしたら逢引の話はしていいと妾は許可するぞ。っでもしかしたら指輪のことをポロリとこぼすかもしれんが、その時はその時だ」
「ちょっとヘイム様。困りますよそのようなことを許可されては、もう」
ちっとも困ってなどいないように言っているのがジーナにはよく分からなかった。
「ええいうるさい。そなたは調子に乗り過ぎた。逢引に指輪だとはちゃらちゃらし過ぎである故に、この際少し馬鹿にされたほうがいい薬となる。おいジーナ。妾の前ではシオンに様づけは禁止だ、いいな」
えっ! とジーナとシオンが驚くと視線が合い、それからヘイムに向くがヘイムは微動だにしなかった。
「だいたい妾を前にしてシオンが様づけというのが不敬に思えてならん。いいか妾の前では二人に差などない。ジーナはジーナでありシオンはシオン。そういうことでよいな」
「その、シオン様、このことは」
「おい」
ジーナの戸惑いに叱責の声が上がるもシオンはあっさりと旗をあげた。
「まぁいいですよ。ヘイムがそれをお望みなら付き合ってあげましょう。ではよろしくジーナ」
意地の悪そうな笑みでシオンがそう答えるとヘイムも姉妹のように似たような笑みで眺めその視線の中でジーナは居心地の悪さを全身に感じながら返事をする。
「よろしくお願いします……シオン」
ヘイムが三度机を叩き笑いを堪えていた。
龍の館に復帰後の初日はシオンの小言から始まっていたが、下手に心配されるよりかはマシである上に、怪我のことをこねくり回されるのは無駄に苦痛なためにジーナは有りがたく受け止めた。
「私としましてはそれほど無学で非常識な振る舞いはしてはいないのですけれどシオン様」
「非常識な人間は自分の非常識さを認識できませんので非常識なのですよジーナ」
容赦のない畳み込み方にジーナは閉口するも屈しはしなかった。
「礼儀作法的な事には問題はないと自負しておりますが」
「そこはそうですね。動作や言葉遣いは別に文句はありませんが、やはり話の内容や行動の意味がです。慇懃無礼であるように心の奥底ではこちら側に対する普通とは違う何かがありますよね」
それは敵意? とまず思い浮かべジーナの背筋に寒気が走りこちらを睨み付けるシオンの薄色の瞳が光る。
「ずばり俺は強い男であるという自信と腕力によるでしょう。こんなお姫様たちなんぞに従えるかといったそういう意思をお持ちで」
素晴らしいポンコツ推理であり背中には温かいものが流れ、都合が良いのでジーナはあえてそちらの方面に誘導することとした。
「私はまぁまぁそこそこに強いのは事実ですけど」
心にもないことをぼそぼそと言うとシオンは嬉しそうな声をあげる。
「ほらやっぱりそうでしたね。そういう態度はいけませんよ。強さが傲慢に変わるというのはよくあることです。常に自制をし謙虚にしなければなりません。ここにいるのは二人の実にいたいけな女です。自らの蛮性を良く良く理解し理性ある行動を望みます」
この明らかに気が強そうな女のどこが幼気だというのか? 痛々けなのでは? という疑問が心の中で生じると隣から声となって飛んできた。
「そなたのどこがイタイケな女であるのだ。馬鹿も休み休み言え。将来の国家支配者がよう言うわい」
書きものの仕事がやっと終わったヘイムが沈黙を破りようやく口を挟んで来たが、いささかテンションが高かった。
「マイラ卿の婚約者として約束された宰相夫人となり国政を執ろうとするものがイタイケであって堪るものか。さては昨日は逢引をしたことによって調子に乗っておるな」
まぁ、とわざとらしく口を大きく開き手を当てなんだか声色を変えてシオンは抗議しだした。
「とんでもございません。宰相夫人となるのは私にとって偶然のことでして、たまたまマイラ様がそうなっただけに過ぎません。もっとも適任中の適任ですから何処からも異存なんて出るはずもありませんけど。それと調子に乗っているだなんて滅相もありません。ただ昨日はこれを」
と隠していた左手の薬指にはいつのまにか指輪が嵌められておりその上には見覚えのない透明な石が強い光を放っていた。
「たいしたものではないとのことです」
大したものであるからこそ言える台詞をシオンは自信を込めて言った。
「マイラ様は鉱物の発掘が御趣味でして様々な石をお持ちですが、中でも一番珍しかったのがこの豪剛石というものらしく、これを宝石職人に加工させましたのがこれでして、ですからそうですね価値は……不明とのことです。ちょっと派手すぎですよね」
シオンが手の角度を変えると閃光がジーナの眼を貫き顔を背けさせた。新手の武器なのか?
「あらごめんなさい。悪気はなかったのですが、やっぱり大きすぎですよね。まるで暴力的な輝きで、重くて指も疲れてしまいそう」
言葉とは完全に裏腹にちっとも重くも疲れてもなさそうにシオンは指輪に夢中となっている。
今日様子がおかしいのもなるほどこれかとジーナは安心するも、ヘイムがシオンに近寄り硬い表情でその指輪をまじまじと見だすとどうしてか心がざわつき出した。なんだというのか?
するとヘイムが微かに振り返り目が合うと口を端をあげ、眼も笑ったように見えた。
「これは見事なものであるな。豪剛石という稀少石をこうも大胆かつ贅沢に加工するとは、その価値は図りしれぬものであるぞ」
いえいえとシオンが小さな笑い声と共に満足気に鼻息を出した。
「それにしても大きいな。シオンにはこういう派手なものが似合うからいいが、妾がこれをつけたら不似合いもいいところであろうに」
「あなたは手が小さいですしね」
「それに稀少石なら儀式用に使いたい欲が出て来てしまうな」
「ですからこの前のあの真珠の宝石ならヘイム様にぴったしでしたね。大きさもこれ以上に無いというものでしたし」
そうか? とヘイムは気のない返事をするのを見るととジーナの首は微かに縦に動きゾッとして前を見ると、二人と目が合い声をあげそうになった。
「おっとジーナにはまるで興味のない話でしたね。そういうことです。つまり指輪をつけてそこそこにいい気分なのですよ」
またシオンは手の角度を変えて光の屈折を利用した閃光を浴びせてきた。再びの攻撃、間違いなくそれは武器。
「ホホホッごめんあそばせ。くれぐれもジーナはこのことを口外してはなりませんよ。他言厳禁です。これは誰よりも先にヘイム様にご報告しなければならないことですので、はしたなく見せびらかすということでは決してありません。この指輪はこうして小箱にしまうことにしたしましょう。ですので、くれぐれもキルシュやハイネに知らせてはなりませんよ」
元よりそんな話をする気のないジーナは「はい」とはっきり言うとシオンは、繰り返した。
「特にキルシュやハイネに教えてはいけませんからね」
「はい。かしこまりました」
変な間ができると横のヘイムが忍び笑いをし正面のシオンは神妙な表情で頷いている。何が言いたいのか?
「あーあれだなジーナ。聞かれでもしたら逢引の話はしていいと妾は許可するぞ。っでもしかしたら指輪のことをポロリとこぼすかもしれんが、その時はその時だ」
「ちょっとヘイム様。困りますよそのようなことを許可されては、もう」
ちっとも困ってなどいないように言っているのがジーナにはよく分からなかった。
「ええいうるさい。そなたは調子に乗り過ぎた。逢引に指輪だとはちゃらちゃらし過ぎである故に、この際少し馬鹿にされたほうがいい薬となる。おいジーナ。妾の前ではシオンに様づけは禁止だ、いいな」
えっ! とジーナとシオンが驚くと視線が合い、それからヘイムに向くがヘイムは微動だにしなかった。
「だいたい妾を前にしてシオンが様づけというのが不敬に思えてならん。いいか妾の前では二人に差などない。ジーナはジーナでありシオンはシオン。そういうことでよいな」
「その、シオン様、このことは」
「おい」
ジーナの戸惑いに叱責の声が上がるもシオンはあっさりと旗をあげた。
「まぁいいですよ。ヘイムがそれをお望みなら付き合ってあげましょう。ではよろしくジーナ」
意地の悪そうな笑みでシオンがそう答えるとヘイムも姉妹のように似たような笑みで眺めその視線の中でジーナは居心地の悪さを全身に感じながら返事をする。
「よろしくお願いします……シオン」
ヘイムが三度机を叩き笑いを堪えていた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる