龍を討つもの、龍となるもの

かみやなおあき

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第3部 私達でなければならない

逃がさないように、逃げられないように

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 怒りの声と共にジーナはハイネの右肩を引き寄せる。笑い声は止むも、その顔は険しく涙が流れていた。

「信頼するとか嘘でも言えないのですね。そうですねジーナ……あなたっていつも本当のことしか言わないし本当のことを言わない……」

「なにを意味不明なことを言っているんだ?」

「意味不明なのはあなたの方ですよ」

「確かにそうだが……それを言うならハイネだってそうだ。なんで泣いてるんだ? どこか痛いのか」

 涙を伝えるとハイネの顔は驚きから戸惑いに移り跳び、それから怒りへと到着した。

「そんなの知りませんよ。私がやっているわけじゃないんですから、勝手にやっている私の瞳にそれを言ってください」

 また意味不明なことを言って……を思う前にジーナは言った。

「……じゃあハイネの瞳。涙を流すんじゃない」

 瞳に対して伝えるとハイネの眼は笑った。

「フフッ本気で受け取るんですね、あなたって人は。そうやってすぐに人の言葉を真に受けるのはお馬鹿さんといいますよ。その。お馬鹿ついでに良ければ拭ってくれません?」

「そこは良いとか悪いとこじゃないと思うが分かった分かった」

 ジーナは左手の指先をその瞳と目尻に向けるとハイネの瞼は閉じた。

 息を止めているように身動き一つせずにいるその姿をジーナは人形みたいだなと思うと、その涙に宿っていた熱が急に冷めていくようにも感じられた。

「ハイネ……さっきはああ言ったが、この先の案内はその頼む、だから信頼している。私にはそれしかないんだしな」

 涙を拭いながらジーナがそう言うとハイネは頬尻が上げるも、瞼を上げないまま言った。

「余計な一言はありますが、まっ信頼すると、はじめからそう言えばいいのですよそう言えば。ねぇジーナ。あなたは私を信用するしかないのです。いくら嫌い疑い不安になっても、あなたは私を信頼すればいい」

 涙を拭い終わる手を止めながらジーナはいま聞いた言葉を呟く。

「嫌い疑い不安に……」

「あなたの私に対する感情の要約ですよね?」

「違う」

 すぐにジーナが答えるも、言葉は即座に打ち消される。

「いいえ、違わない」

 ハイネの瞼が上がり瞳が現れ、そこには乾いた夕陽があった。

 男は呆然としながらハイネの瞳を見つめた。背けることなく見た。

 あの夕陽がそこにある。『君は僕を認めない』とあの時の夕陽は私にそう言った。

 では、この夕陽は私になにを? あなたは私を嫌い疑い不安だと思っている。

 そうだ、ちがう、ちがう、そうだ……私はあの夕陽に背を向けて遠くへ行った。

 あの問いから逃れるために……だが私は帰りそして……そして

「……ジーナ。なに遠い目で私を見ているのです?」

 えっ! ジーナは驚きながら改めてハイネを見るとそこには真っ赤な夕陽は無く、淡い赤の瞳がそこにあった。

「……私以外のものでもみていたのですか?」

 問われ反射的に目を背けるとハイネは笑った。

「まぁいいです。あなたですし。それでその手なんですが、いつまで握るおつもりです? そんなにこうしているのがお好きなのでしょうか?」

「ああ離す、が……」

 ジーナはハイネの手を離すが、予想通りに痛みが掌から指先に広がりながらやがて離れた。

 皮膚がくっついていたように、剥がされながら離れたように、掌と指に血の熱が広がっていく。

 痛いな、とジーナは自分の顔がしかめ面に若干なったことを皮膚の動きで感じた、しかしハイネの顔も瞬間的にそうなった。ハイネもまた、痛がった。

 お前には痛みなんてあるはずがないのに。自分のこの不思議な感覚の予感はいままでになく、今だけだというのに。

 そしてそれが現実に起こったことは、いまだけなのに。どうしてお前もまたそうなるのだ?

 意識の混乱の中でジーナは自分の掌を確認することはしなかった。してはならなかった。

 それは確実に起きていること、疑う必要もなくハイネの掌はそうなっている。

 この自分に起きているということはハイネにも起きている。

 掌には引き剥がされ破れた皮膚の下にあった血と肉と……私がつけた傷が。

 それは駄目だ……そんなに血を流しては、いけない……だから……ジーナは離した手を再びハイネの手に近づける。

 その手は丁度いいところにあったのかすぐに掴めた。

 そう、ハイネの手は引かれずその場にあり、全く動いてはいなかった。

 自分は一瞬で考え行動したのか? とはジーナは考えない。

 それが短い時間であったのか長い時間であったのか、関係なくジーナはハイネの掌と自分の掌を重ね、指と指を絡ませる。

 すると血の熱と裂けた皮膚の痛みは、消えた。どこにもなくなった。そうであるからハイネの顔もいつも通りになった。

 何も隠していない、痛みも苦しみも内に籠らせていないその顔があった。

「せっかく離れたと思ったのにまた掴むって、どういうことですか?」

 ハイネは尋ねた。ジーナは少し考える。手が裂けているとか血が出ているとか……それは言っていいのだろうかと。

 全部自分の妄想や思い過ぎという可能性も……そもそもハイネ自身がこうするのが嫌だとしたら?

 掴むハイネの手は脱力している。無防備な程力が抜けており、存在しないようにも感じられた。

「私がこうしたいから、する」

 ジーナの言葉にハイネは疑い探るような眼つきでそれを眺めつつ受け入れたものの、尋ねる。

「こうする、その意味とは何でしょう?」

「それは、離れられないために……というか逃げられないために、かな」

「なんです、それ? それだと私を信頼していないじゃないですか」

「信頼なら、ハイネだって私のことを」

「いいえ私はあなたのことを信頼していますよ。そこが分かりませんか? 突然あなたが私を襲いかかりこの腰に下げている剣を奪う……その可能性は大いにありますよね? だってこの剣はあなたにはとても大切なものですし、ずっと取り戻
したいと思っていた、そうですよね?」

 そうだ、とジーナはハイネの腰を見た。初めて見る他人の腰に下げられたあの剣。

 いや、初めてではない。私は以前それを見たことがある……失われつつある記憶の中で、一体化してしまう記憶の中で。

 先代が……いや先々代が……その祖が……女が篝火に照らされながら剣を取り腰に……先代が剣を抜き跳び、龍へと向かった時に……

 違う……! 思い出すな……! それはお前なのだ……お前があれの名前を思い出せないのは、記憶が薄れているのは、全てひとつになっているからであり……その必要がないからだ。意識よ、ズレるな。

 お前は私は……ジーナなのだ。他の誰でも、無い。

「剣は返してもらいたいが、私はハイネにそんなことをしない」

 言うもハイネは鼻で笑い表情を歪めた。

「フッ誰が信じますそんな言葉? あなたは叛逆者ですよ。そして私は龍の側近。水と油であり決してひとつにはなれない者同士、違いますか?」

「それは違うと思う。理屈を求められても説明はできないが」

「理詰めには求めませんが、それってあなたがそう思いたいだけなのでは?」

「そうかもしれない……そうだろうな。私はいつも自分のやりたいことばかりやるのだから」

「そこは賛同します。あなたってそんな人というのは私はよくよく分かっていますからね。だいたい私を逃がさないためって、案内している人に対して言う言葉ではありませんよね」

 そうだな、とジーナは思う。これはハイネを縛り付けるためのものではないとも感じられた。

 では何だろう? 何を縛っているのか? ハイネでないとしたら、自分を?

 あの幻覚みたいな幻痛もまたその為の何かであったとしたら……掌にはいま安らぎがあった。それが痛みの無い状況に過ぎないことであるとしても、ジーナには安らぎとしか感じられない。

「言葉が足りなかったか、かもしれない。ハイネ、この手はお前が私から逃げられないように、それと私がお前から逃げられないようにするためだとしたらどうだ?」

「どうだって……」

 ハイネの表情は戸惑いに笑みが混じった掴みどころのないものであるとジーナは感じた。

「何を言っているのか、私には分かりません」

 ハイネは分かっているようにも感じられた。

「こっちだって分からない。でもこうするより他に私達は歩けないと思うんだ。こうやって無理にでも手を繋いでおかないとな」

 ハイネは俯き繋がった手をジッと見ていた。そこに反発する抵抗の力はなくむしろ取り込もうとする意思が伝わってくる中ハイネは口を開いた。

「片や龍の側近であり片は龍への反逆者。以前は側近と護衛によるいわば同僚関係であり、そのような繋がりという関係はありましたが、今はまるで違いますね。しかもその側近は龍から叛逆者の逮捕を直々に命ぜられています。この剣を預けられたのはそれが理由でして、必要に応じて抜刀しあなたを処罰することも許可されております。それは龍の祭壇所であろうが龍の御前であろうが、です」

 繋がっている手を持ち上げハイネはもう右手をその二つの拳の上に添え、撫で見上げる。赤い夕陽がそこにあった。

「この策は、とても優れていますねジーナ。私はあなたを逃がしたくはない。龍の側近と私自身の考えからしてあなたを掴んでおきたい。そしてあなたも私を逃がしたくない。龍への叛逆者として剣の奪還と道案内を私に求めるが故に……そうであるのならこうやって手を取るのは極めて合理的でしょう」

 納得できるようにハイネがまとめるが、ジーナはやはりそうではないとしか思えなかった。

 その言葉は正しいが、そうではない、それだけではない……だがそこを言葉にすることはできず、いつものところでジーナは辿り着けず一周する。

「それだけではないんだ」

「ないというのなら、なんです? いえ、もういいです。あなたはそれを口にできないようですからね」

 そう、ハイネはこれが何であるのかを知っている。私の知らないこれを知っている。これについての名すら知っているだろう。

 だがハイネはそれを教えない。私も聞きたがらない、いや、聞いてはならない。これは何から来ているのか?

 ハイネの反応から、それは人が元々持っているようなもののようにも思える。なら私もそれを元は持っていたと考えるのが普通であり、今はそれが失われた状態であると言えるのだろう。なら、それは、なんだろう? この前まで持っていた……いつから失われた?

 それならそれは……あの時……印を……痛い! ジーナは我に返り手元を見るとハイネの両手がきつくジーナの手を握り潰すようにして握られていた。

「何を考えていたのですか?」
「ハイネのことを」
「嘘ばっかり。きっと違うこと考えていましたよ」
「そうかもしれない。でもそうであってもこの手はどこにも行かないから、そんなに握らなくていい」

 伝えるとハイネの手の力は緩まるも顔は険しく厳しく硬く頑なささえ滲ませながらジーナに言った。

「なら、離さないでくださいね」
「ああ離さない。どこにも行かせない」
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